第3話「僕は勇者様だぞ!!」
活動を開始してから、初めてブックマークをいただきました。
ありがとうございます。
僕は勇者なんだぞ。
見なよこの立派な甲冑、カッコいいマント、そして勇者しか持てない聖剣。
なのに最近のみんなときたら、成果が無いだの、
ちゃんと訓練しろだの、心配してるだの、好き放題言ってくれちゃって。
どいつもこいつも何にもわかっていない。
僕がいないと、魔王が暴れて大変なことになるんだぞ。
あまりにうるさいから、
むかし王国の騎士団長が挑んで敗れたっていう
ドラゴンと戦ってみたけれど、なんだ?あいつは。強すぎだろ。
300歳だっていうから、ただの老いぼれだと思ったのに。
そもそもドラゴンは一緒に戦うパートナーを200歳くらいで見つけるんじゃないのか?
売れ残りがよぉ。
せっかくこの僕がパートナーになってやろうとしてやってるのにさぁ。
そういえば、昨日の話は面白かったな。
ドラゴンが人間の結婚相手を探してるんだってさ。
大人しい奴もいるんじゃないか。
異種族の嫁なんて考えられなかったけど、ドラゴンなら悪くないな。
確か人間態もあったはずだから、綺麗な奴だったら嫁にしてやってもいい。
それにしても、あの経営者はなんだったんだ?
男なのに女の格好をしていたが。
まぁ礼儀正しい奴だったし、持ってきた話も良かったから別にいいけどさ。
とりあえずオカマでいいか。ああいうのが流行っているのか?
さてと。ドラゴンとのお見合いは明後日だったな。
それまでにやることは?え〜っと手帳、手帳。
あ~、訓練メニューばっかりだなぁ。
ま、いっか。何せ僕は勇者だからな。
ちょっとくらいの遅れなら、すぐに取り戻せるさ。
そんなことより、今日の夕食のメニューは?
お〜流石は一流ホテル、とても美味しそうだ。
今夜も楽しみだな。
「こちらでお待ちください。」
ドラゴンとのお見合いの日、例の経営者にホテルの中庭へ案内される。
相変わらず女の恰好だなぁ。
それにしても中庭かぁ、なんでだ?
「なぁ。中でいいんじゃない?天気は良いけどさぁ。」
「その件についてですが、先方からの希望でして。
どうしても鱗の美しさはアピールしたいとのことで。」
「鱗?」
「はい。ドラゴン態でしか見せられないとのことで、場所は外に設定させていただいています。」
「ふ~ん。」
鱗ねぇ。そんなにこだわってるのか?
正直どうでもいいんだよなぁ。ずっと人間態でいて欲しいし。
まっ、いいや。ドラゴン態には興味がないって言っちゃおっと。
「OK。わかった。何か飲み物を持ってきてくれない?」
「はい。承りました。」
運ばれてきたのは柑橘系の飲み物。
一口飲むと八朔の香りがしておいしい。
さて、はやく来ないかなぁっと。
飲み物は残り半分か。おっ、あの人かな?長い黒髪に、スレンダーな体系。
黒いドレスが良く似合っている。
顔も整っていて、赤い瞳が印象的、そして落ち着いている雰囲気。
いいじゃん、いいじゃん。悪くないね。
「お待たせしましたか?」
「いえいえ。そうでもないですよ。どうぞ座ってください。」
「はい。では、失礼します。」
「飲み物を持ってきてもらいましょうか。同じものでいいですか?」
「えぇ。お願いします。」
ボーイを呼んで同じものを持ってこさせる。
飲んでいる姿にもなんとなく気品がある。
ますます僕好みだ。
「ドラゴンでもお見合いなんてするんですね?」
「はい。私もいい歳ですので。」
「へぇ。そんな風には見えないけどね。」
「そうですか?」
「はい。とてもお綺麗ですよ。」
あらら?首をかしげちゃってる。おっかしいなぁ。
「ありがとうございます。でも、この姿にはあまり自信がなくて。」
あぁ、そういうことね。鱗をアピールしたいとか言ってたけど。
でもなぁ。ドラゴン態には興味ないんだよなぁ。
どうしたものか。
「大丈夫ですよ。そのままでも十分に、魅力が伝わってきますよ。」
「そう、なんですか?」
「そうそう。」
「・・・。わかりました。では、このままはじめましょうか。」
ん?はじめるって何を?
んん?なんで立ち上がっているの?
んんん?その構えは何?
「あなたも構えなさい。」
んんんん?
んんんんん?
んんんんんん?
「まぁ良いわ。」
痛っ〜。殴った。殴ってきやがった。
しかも、なんだこの重いパンチは。
「ちょちょちょちょちょ。ちょっと待てって。なんなんだよ!?」
「何って?お見合いでしょ?」
何言ってんだよこいつ。わけわかんねぇよ。
「どうしたの?こんなもの?」
痛い痛い痛い痛い。痛いってば。
流石はドラゴン。って感心してる場合じゃねぇ。
シャレにならねぇぞ。
「お待ち~~~。」
なんか後ろから聞こえてくるぞ。
っておいおい、オカマ。危ないって。
勇者であるこの僕ですら、こんなにダメージを受けるんだぞ。
お前なんて一撃で、
「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイヤー。ダメよ、ドラゴンさん。
どんな失礼なこと言われたか知らないけど。そんなことしたら台無しよ。」
なんだぁ?このオカマはぁ?互角に戦ってやがる。
「あなたはなかなかやるじゃない?でもどいてくれる?
その人間がわたしにふさわしいかどうか確かめなくちゃ。」
「だからって、攻撃する必要はないんじゃないの?」
「何を言っているの?あなたは。」
な〜るほど、わかっちゃったぞ。そういうことね。
ドラゴンにとっては強さが第一印象なんだな。
鱗っていうのも美しさというより、
頑強さみたいな力強さをアピールしたかったんだな。きっと。
よ〜し。
「待ちたまえ。そこまで言うのなら、勇者の力を見せてあげようじゃないか。」
へへ〜ん。ちゃんと装備さえすれば、あのくらいの攻撃、全然たいした事ないもんねぇ。
いっくぞ〜、換装。シャッキ〜ン。
どうだこの立派な甲冑。これであんな攻撃へっちゃらだい。
「さぁ来い。」
パンチも、キックも、全てはじき返す。どんなもんだい。
「ちょっと〜。なによそれ。装備頼りじゃないの。私のように筋肉で語りなさいよ。」
オカマがなんか言っているけど、よくある嫉妬だな。
これは勇者にしか使えない力。だから僕の力だ。
「その鎧。どこかで見たことがあるわね。・・・あっ。あの時にチャレンジャー。」
え?チャレンジャー?何のこと?
「なんだか興覚めね。私は帰るわ。」
おいおい。ドラゴンが帰っちゃうよ。オカマがあわてて追いかけてやんの。
なんだったんだろうね?これは。興覚めはこっちのセリフだよ。
でもまぁ、綺麗な人間態だったし、ちょっとくらいなら交際してやってもいいかなぁ。
今日のことは、そうだなぁ。
ドラゴンだからってことで許してやろう。
大人しくなってくれるといいなぁ。
お読みいただきありがとうございました。
作風の参考にしたいので、
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