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第1話「私って行き遅れ?」

 「どうしたの?こんなもの?」

 私はドラゴン、生まれてもう300年。

久しぶりのチャレンジャーに興奮してしまう。

だって立派な甲冑に身を包んだ小さな人間のチャレンジャーが、

一生懸命に剣を振るっているんだもの。

 でもね、残念ながらそんな攻撃は私のこの綺麗な鱗で全てはじき返せるの。

それどころか、私の麗しい両脚の脚踏みでよろめいちゃうし、

私の艶やかな翼の羽ばたきで吹き飛ばされていくし、

私の佳麗な牙の噛みつきで尻もちをついているし。

つまらなすぎてチャレンジャーの事よりも、自分の鱗の汚れが気になってしまうわね。

 「くそ~。」

 チャレンジャーが捨て台詞を吐いて逃げて行っちゃった。

 「なによ。意気地がないわね。まぁいいわ。」

 別に、追いかける必要はないのよね。だって人間の目的はわかっているんだもの。

 私たちドラゴンは願っている。

自分と一緒に戦うのにふさわしい人間と契約しパートナーになってもらうことを。

そして人間も、ドラゴンにパートナーとして契約してほしいと願ってくれているらしい。

だから、人間はドラゴンに認めてもらおうとチャレンジしてくる。

 「なかなか見つからないのよねぇ。私にふさわしい人間は。」

 ぼやきながら飛び立つ。今日は巨人の所へ遊びに行こうかしら。

山を2つ越えるだけで巨人の庭園に着けるから楽なものね。


 さて、確かこの辺りに着陸にちょうどいい空地があったと、あぁあったあった。

着陸っと。ん?早いわね。もう巨人が歩いて来ているわ。

 「あら?今日はチャレンジャーが来るんじゃなかったの?」

 「あれは駄目ね。逃げちゃった。」

 「あらあら。」

 いつも案内してもらっているけど、本当に立派な庭園よねぇ。

あっ、いつものテラス。よく手入れされていて感心してしまうわ。

さてと、巨人は自分の椅子に座っているけれど、

私はそういうわけにはいかないから地面に座らせてもらってと。

あっ、このティーカップも素敵ね。

注いでもらった紅茶を飲むのに、壊さないように気を付けなくっちゃ。

 「まったく。久しぶりのチャレンジャーだったのに、いつになったらパートナーが見つかるのかしら?」

 「あらあら。そろそろ急いだほうがいいんじゃない?」

 「だって普通の人間がいいのに、出会いがないんだもの。」

 「あら?高望みしているんじゃない?」

 「そ、そんなことないわよ。」

 「あらあら。じゃぁどういう人間が普通か教えて。」

 「そうねぇ。」

 私の思っている普通の人間はねぇ。

まず見た目はブサイクじゃないなら問題ないけど、

国立騎士大学を卒業していて欲しいし、

ステータスは500万を越えていて欲しいわね。

身長は170cm以上ならいいけど出来れば176cmくらいが理想で、

上場騎士として活躍していれば完璧。こんなところかしら。

 「あらあら。思ったとおりね。そんな人間、普通じゃないわ。むしろ優秀ね。」

 「え?」

 「人間の平均ステータスは大体350万くらいね。

国立騎士大学の卒業生は大体15%くらいかしら。

上場騎士で活躍している人間なんて1%にも満たないわ。」

 「え?え?」

 「そんなんじゃぁ一生パートナーなんて見つからないわよ。」

 「・・・。」

 何なのそれ?聞いてないわよ。

 「もう300歳でしょ?人間の年齢だと三十路ね。」

 「どういう意味?」

 「三十路は30歳って意味ね。

でもね、人間の世界だと三十路のパートナーがいないメスがなんて言われているか知ってる?」

 「知らないわ。」

 「行き遅れとか、売れ残りとか、あまりいい意味ではないわね。」

 「・・・。」

 だから、そんなの聞いてないわよ。

売れ残り?この私が?

受け入れられない。あぁ、頭が真っ白に。

 「悪いこと言わないわ。はやくパートナーを見つけた方が良いわよ。」

 「でも、どうしたら?」

 「ふふふ。そう言うと思って、はい、どうぞ。」

 これはなに?小冊子みたいだけど、ずいぶん小さいわね。人間が書いたものかしら。

 「これは?」

 「これはね、結婚相談所のパンフレットよ。」

 「結婚相談所?」

 「そう。人間の世界ではね、パートナーを見つける手伝いをしてくれるサービスがあるのよ。」

 「でもこれは人間用じゃないの?」

 「う〜ん。まぁ大丈夫じゃない?」

 な、なにが大丈夫なの?でもせっかく用意してくれたんだし、受け取るべきね。

紅茶を飲んで、美味しいお茶菓子もいただいて、もう帰る時間ね。

なんだか同じ言葉ばかり頭をよぎるのよね。

三十路、三十路、三十路、三十路、三十路・・・。



挿絵(By みてみん)


 「どうしようかしら。」

 家に帰ったのはいいけれど、もらったパンフレットを眺めてばっかりね。

そういえばドラゴンのみんなはもうパートナーを見つけているのよね。

なんとなく、このままでいいのかとは思っていたけれど。

パンフレットの笑顔の2人の人間。

パートナーを見つけたみんなもこんな笑顔だったわね。

 「とりあえず内容を見てからね。その後考えましょ。」

 え〜っと。開くときは破らないようにと。

ここに書いてあるのは、結婚までの流れということは、

つまり契約が成立するまでの流れということね。

 ①相手探し:自分が結婚に求める条件に合致する相手を探し、

       お見合いの申し込みをしましょう。

 ここで高望みしてはいけないのね。お見合いって何かしら?

 ②お見合い:実際に相手と対面してお見合いします。

       ホテルのラウンジなどが一般的です。

当日は身だしなみに細心の注意を払いましょう。

 対面?つまり相手と戦うということね。ホテルのラウンジで戦うの?ドラゴンが戦える広さはあるかしら?身だしなみは大事よね。いつもより鱗を磨かなくちゃ。

 ③交際  :本当に相手と自分が合いそうかを見極めます。

       交際で問題がなければそのまま結婚する可能性が高いです。

 なるほどね。みんな契約前は一緒に戦って相性を確認するから、そのことね。

 ④成婚  :お互いに相手と結婚したいという意思が固まったら結婚となります。

 へ〜。こんなサービスがあるのね。自分がパートナーと共に戦う姿が想像できるわ。

なになに?1年位で結婚できる例が多いと。

お金はかかるみたいだけれど、宝石ならいくらか持っているから問題はなさそうね。

よし、これはどこにあるのかしら?ちょっと遠いわね。

まっ些細なことね。あぁ楽しみ♪



お読みいただきありがとうございました。

作風の参考にしたいので、

面白ければ「いいね」お願いします。

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