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「アルカディア魔法学園の歩き方」~七人の問題児が聖杯戦争に挑むようです。~  作者: 鬼屋敷 夜雲
序章 アルカディア魔法学園入学編
9/19

第7話 第1次作戦会議。

 部屋にやってきた一同を一瞥し、私は静かに紅茶を一口だけ口にし、テーブルにカップを置く。

そして茫然としながら私を見ている彼らに対して一言返してやろうと言葉を発する。

「ようこそ我が寮、ストレイナイツへ。」

「あ、シルキーさん案内ありがとうね。戻って大丈夫だよ。」

シルキーと呼んだ女性は、それを聞いたのか私を含めた一同を一瞥した後に一礼した、そして静かに部屋を後にした。

「思ったよりも綺麗に掃除してましたね……。」

犬鷲がようやく口を開く、それに対して私はそれは当然だろ?と呟きながら本を傍らに置き直し、立ち上がる。

「まぁ皆来てくれたから丁度良い、取り敢えずその掃除用具でも置いて情報共有でもしようや。」

「それもそうですね、ところで私達は何処に座れば?」

「まさか自分だけ椅子で地べたに座れとか言わんよな?」

「まさか、そんなことする必要はない。」

パチンッと指を鳴らすとガタガタと音を立てながらクローゼットから複数の椅子や大きめなテーブルが宙を舞いながら指定された場所へと移動し始める。

先程私が使っていたであろうテーブルも椅子も皆移動をし始める。

「さぁ、みんな席に着いてくれ。」

「完全に使いこなしてるじゃないですか。」

「まぁ、魔法使えるなら有用するに越したことがない。」

「はえぇ……」

「ところで、四夜さん質問いいですかね。」

「ん?いいぞ優義。」

その前に、用意した席に彼らを座らせるようにと促す。

 私を含めた全員が静かに席に着き、ようやく本題へと入ろうとする。

「さっき私達を出迎えたあの女性、影狐さんが遣わした人なんですか?」

「いや?別に、さっき私が少し交渉して雇った妖精。シルキーだよ」

しれっと放たれた発言に思わず全員が面食らう。

それはそのはず、私達は当然ながらこの異世界へ来たばかりである。

それなのに寮は既に綺麗になっており、更には妖精を既に手懐けてハウスキーパーのようにしている。

それだけでも"()()()()()()"というものが直接的に伝わるものである。

「本当四夜さんのその体質ヤバすぎやないですかねぇ。」

「時にこういった"祝福(呪い)"というのは、実に役に立つんだなと言うことが分かるわな………」

「本当そういうところはチートじみてんな。」

「それを除いても、私はその力に対して胡座をかいて座するつもりもない。寧ろそれ以上に、もっとやれることを増やしたいから色々と勉強したいからな。」

「いや、それ以前にだ。」

危うく話が逸れる所だった、実際今最も必要なのは別の話である。


 私は、軽く咳払いをして紅茶を一同に振る舞いながら静かに集めた情報を話する。

「一応、掃除をしながら私の部屋に届いている荷物も軽く整理してみたんだ。」

「そしたら、お誂え向きに革張りのトランクに制服、魔法の杖、教科書一式、自分の使う武器一式、そして何よりも当分の資金とメッセージカードがあった。」

読んだやつはいるか?と聞いてみるが、ざっくり見た程度だと返答が多かった。

そりゃそうか、寮案内があった上で急いでこちらに来たようなものか。

「じゃあ念の為読み上げしてみるか、検討はつくけどな。」

 私は懐からメッセージカードを取りだし、その記載された文章をしっかりと確かめつつ読み上げる。

「『親愛なる四夜へ、アルカディア魔法学園への入学おめでとう。 私のちょっとした君達へのサプライズのつもりで、入学させてみたんだがどうだろうか? 折角だから、この魔法学園で4年間過ごしてみたらいかがだろうか。 なに、折角の機会なんだから沢山異世界の文化に触れ、そして沢山の見識を広げてみてくれ。 愛しているよ、影狐』と………」

「本当何考えてんだあの爺!!!!」

思わず読み上げた直後にテーブルに叩きつける。


 ───念の為、このメッセージカードを添えてまで我々を送った張本人……影狐と呼ばれる人物について語っておこう。

私を含めたこの七人と、それに関わりのある人達にとって周知の事実。

現世と呼ばれる現実世界と同じような現代日本、それと隔絶するように特殊な結界で作られた異界。

幻桜京(げんようきょう)と呼ばれる妖怪や怪異が棲まうその都市。

その都市を支配している妖怪のマフィアが存在していた。

 クロノス・ファミリー、またはクロノス・カンパニーという名の、その世界における誰もが知る大企業でありマフィアのボスである霧咲 影狐(きりさき かげぎつね)という1000年もの時を生きる古い玄狐(げんこ)、それこそが彼のことである。

毎度のことだが、そんな私の養父(ちち)でもあるこの影狐という男………大事な用件に限って独断で行動を移すことが多く、それに巻き込まれてこうして何も知らない私達が何かしらのトラブルに巻き込まれることが多いのだ。

「お、落ち着いてにいさま。」

「急にメッセージカード叩きつけんなよ、びっくりした。」

「私だって文句の一つや二つも言いたくなるわ!!!」

バァンッと力いっぱいテーブルを叩く、あまりにも興奮し過ぎて少しだけ疲れが出てきた。

「はぁ、もうこうなった以上はどうしようもないな………」

一人呟きながら、メッセージカードを懐に仕舞いつつまた再び席に着く。

ふと、我に返ってメンバー達を見ると…あまりにも私の剣幕に驚いたのか皆凍ったように固まっていた。


 「すまん、そのつもりはなかったが……如何せんあの爺さんのやることに毎回辟易してしまってな。」

「ともあれ、いちいちキレていたら話が進まんぞ。」

「それもそうだな。」

「そういえばなんですけど、ここってスマホとか使えるんですかね?」

「確かに、もしここが使えないようならちょっと不便じゃないか?」

「いや、それに関しては問題ない。」

私はそう言いながら、今度はポケットから自分のスマートフォンを取り出した。

意外にも見た目も中身の殆どもいつもと変わらないようで安心したのだが、実の所このスマートフォンにも謎に手が加えられていることが判明したのだ。

「しれっと自分の荷物の確認ついでに、用意された制服の中にスマホが入ってるのを確認した。」

「どうやらこの世界に適したデータに作り替えているようだ。」

「しかも………その中に入れられているアプリの中には"クロノスタグラム"というどっかで聞き覚えのあるものが入っている。中身も確認したが確実に〇ンスタと一緒だしアカウントもあるわ。」

 それを言われたメンバー達も、それに気づいたのか各々のスマホを確認し出した。

画面を確認しつつ、私は学園長室で言われた"試練"についても情報共有しようと話を切り出した。

「それと、皆聞いてくれ。学園長から聞いたとある話なんだが─────………」



 私は学園長から聞いた話である、五大英雄と星の祝福についての話をメンバー達に話をした。

当然ながら、一同の反応と言えば………

「皆、言いたいことは分かる。 私も同じことを思ったさ。」

「いやどう考えても聖杯戦争の話じゃないですか。」

「しかもその試練?というものがこの八つの国で開放されたという事なんですよね?」

「これどうするんですか、流石に私達だけで解決出来る問題じゃないですよ!」

「分かってる、でも流石にこの手の話ならきっと学園対抗のものがあるらしいし………私も出来る限り情報は集める。」

「───── それに、元々競技として行われてたんだ。私がこうして選ばれた以上、それが競技ではなく本物の試練ということになるのは確実だろうよ。」

 分かっていたというか、誰かしらそういうことになるのは誰もが予感していた。

いつもながらの話だが、我々7名がこうして揃う時と言うのはいつだってこんな世界規模のものに巻き込まれるということには、変わりがないのだ。

「まぁ、それに関しては後々の情報収集もある。

出来るならば全員手分けしてでも分かれば一番だが………今の目的は、とにかくこの学園生活をどう過ごすかだな。」

「1番はそれだよな、影狐さんがそう言ってた以上私達はこの学園生活を送るのが一番の目的だろうし。」

「しかも、一年では基礎魔法の履修、二年からは専攻が入るからそこでもまた変わるだろうな。」

「色々学ぶ機会は多いってことですかね!私結構楽しみなんですよね〜!」

「それもそうだな、まぁ今回集まった情報はこれくらいか。」

 互いが納得し、頷きながら話はまとまりかけていた。

そんな時に不意になべ…もといレギーナから唐突にある事を私へ投げ掛けられる。

「話が纏まったところで悪いんですが、そういや四夜さん………あの時御者さんから何か渡されてなかった?」


 おっと───………その事をすっかり忘れていた。

「ちょっと待て、確かここに……」

ゴソゴソと懐の中から小さな皮袋を取り出して中身を出してみる。

袋を逆さにしてその中身を手の中に出してみる。

そこには金色の懐中時計がごろりと手の中に落ちていく。

危うく落としかけたが、どうにかしっかりと手に収める。

金色の鎖に繋がれた、少し重厚な雰囲気のある懐中時計。

できるだけ皆に見えるようにと光に晒すと、きらきらと角度によって輝くのが見える。

その時計の蓋には、一輪の薔薇と黒のキングと思われる細工が施されていた。

「これは、薔薇と黒のキング? ─────どうしてそんなものが。」

「ちょっと蓋開けて見てくださいよ、中がどうなってるか知りたいですし。」

「ん、分かった。」

懐中時計の1番上の(ボタン)を押すと、パカッと思いのほか軽い形で開く。

時計は規則正しく時を刻んでいるのか、カチカチと針が動いているのが見える。

 数字の方はどうやら、ローマ数字のようなものが刻まれており、今の時間を針が示していた。

「あれ?四夜なんか蓋の裏に何か刻んであるぞ?」

「あ、本当だ。」

よく見ると、確かに人の手で小さく刻んだような文字が書かれていた。

とはいえ、それは異世界の言葉ではなく英語で書かれていることが分かった。

"May the god of time bless you."

「時の神の祝福があらんことを─────。 一体なんの意味があるんだろう…………」

私は頭に疑問符が浮かぶ、時の神と言えばギリシャ神話におけるクロノスという神がいると聞く。

もしこれが、養父(ちち)である影狐と何か関係があるのか?

そう考えても、何故これが御者から渡されたのかが皆目見当もつかない。

「「「う─────ん。」」」

全員が、その意味を解こうと考え出す。

その時、不意にピンポーンとインターフォンが鳴る音が聞こえる。

「あ、誰か来たみたいだ。 ちょっと見てくる。」

「それ大丈夫ですか?死亡フラグにならないでくださいよ」

「勝手にとんでもないもん立てんな!すぐ戻る!」

不吉なことを言われ、何か嫌な予感も感じながら私は足早に階段を下りていく。

玄関では、既にシルキーが来客を出迎えていたようで静かに相手の方を見つめていた。

私はシルキーの元まで歩いていくと、ここに来てからだいぶ見慣れたその姿─────学園長の姿があった。

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