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「アルカディア魔法学園の歩き方」~七人の問題児が聖杯戦争に挑むようです。~  作者: 鬼屋敷 夜雲
序章 アルカディア魔法学園入学編
17/19

第15話 新しい学園生活のはじまり。

 朝食を済ませ、軽く朝のシャワーを浴び……着替える。

制服に袖を通すと分かる、いつだって制服というのは日常から切り離し………組織の一員としての役割を果たす為に必要なものとして存在する。

襟を正し、私は鏡を見つめながら自分の格好を確認する。

シルキーさんが、私の為に弁当……もといランチボックスを用意してくれたようで、箱を差し出してくる。

ピンポーン、とインターフォンが鳴る音がする。

私は少し急ぎめに鞄の中にランチボックスを押し込み、早足で玄関へと向かう。

鞄を手に、扉を開けるとそこには見慣れた六人のメンバー達が寮前で待っていた。

「別に迎えに来なくても良いのに、わざわざ来たんだな。」

「流石に貴方一人にしたら迷子になるか、寄り道していくだろう。」

「俺そこまでフリーダムなやつに見えんのか。」

思わず素の一人称が漏れる、各々が顔を見合せる。

やっぱり私の素行についてはあまり信用されてないようで、少しだけ心外だと私は心の中で毒づく。

ふと時間が気になり、スマホを見てみると……時間もそこまでないことに気づく。

「やべ、早く行かないとちょっと遅れるぞ。」

「だから迎えに来たんじゃないですか、早く行きますよ。」

「はいはい。」

「お前ら走るぞ、いいか?」

「時間も間に合わせるためなら仕方ないな。」

まさか朝から走るとは思わなかった、脇腹が痛くならないと良いが………今はそんなことも言ってられない。

私達はそのままストレイナイツ寮を後に、ばたばたと学園に向かって走り出す。

 先を行く犬鷲とバルト、その半ばでさりげなく菫をエスコートする優義、体力を使いたくないのか……浮遊しながら追い抜いていくリンリィ、優義にエスコートされながら必死について行く菫、気づいたら先に行った2人に追いつくレギーナ。

私はその皆の背中を見ながら、思い切り足を踏み込んでそれについて行くように走り出す。


 私達七人が走りながら自分達の学年の廊下へと辿り着く。

廊下の大きめの掲示板に、自分達と同じ新入生達が集っており……貼りだされているクラス分けの表を確認しているようだった。

あまりにも人だかりが多く、よく見るにしては少しだけ難しいとも言えよう。

「私は1-Cですね。」

「オレもエクルと同じクラスだな。」

「あ、私1-Bですね!」

「まさかリンリィと一緒か。」

ふむ、やはり大抵誰かと一緒のクラスになる事は多いのだろうな………

私も自分の名前を確認する、結構並んでるせいで……パッと見じゃ分かりづらいな。

少しだけ前に出て確認しようかなと、私は踏み出そうとしたら思い切り誰かがぶつかってきた。

ちょっと強めの衝撃に、思わずよろけそうになる。

誰がぶつかってきたんだろうと思い、相手を見ると…どうやら昨日の晩餐会で険悪ムードになった相手、レイ=エルウッドだった。

彼は私にぶつかったことに気づくと、キッと睨み付けてそのまま立ち去っていく。

確かに昨日の今日で、仲良くなれるとは思わなかったが………睨まれるとなると少し寂しくなる。

彼が行った先を目で追うと、どうやら手前の1-Aの方へと向かっていった。

舌打ちされないだけまだマシだろうか、なんて思いながら私は再び掲示板の貼り紙を見てみる。

よく見ると、1-Aの項目にアシュレイ=グッドフェローズという名前とスミレ=クロギリと言う名前が書かれているのが見えた。

さっきから懸命に掲示板の張り紙を見ようと、ぴょこぴょこ跳ねている妹の為に教えてやろう。

「菫、私と同じクラスみたいだぞ。」

「あ……そうなの?ありがとう。」

「折角なら一緒に行くか?」

「うん。」

「後………トラブル避ける為に、兄妹である事を隠しておいてくれ。」

こそ、と妹である菫に耳打ちすると静かに頷く。

ふとそういえば、さっきぶつかってきたエルウッドも1-Aだった事を少しだけ思い出して若干憂鬱になる。


 リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン………

気づけば予鈴の鐘が鳴り始めた、下手に考え事をしていると時間というものはあっという間にすぎるもので……

もはや私くらいしか廊下に残っている者はいなかった。

流石に初日で遅刻するのは色んな意味でリスクがあるため、私もそそくさと1-Aの教室へと入る。

席順については………何故かこの学園では特に決まってないのか各々が好きな席へと着いている様だ。

どっちかと言うと大学の教室みたいに長い机が連なっているようだ。

私は少し奥にある席へと大人しく着く。

 ざっと見る限り、ひとクラス約40人近く収容されているようにも見える。

間もなくして、教室の教壇付近に近づいてくる若い男性の先生の姿が見える。

パッと見、あれがハンサムだと言えるような整った顔立ちで………俳優を思わせるような甘い笑顔を作って手を振る。

担任の先生と思われる男性教師は、軽くひとつ咳払いをして教壇に立つ。

「えー皆様、おはようございます。」

「今日から1-Aの担任になりました、錬金術担当のバーソロミュー=アッカーソンと言います。」

後ろの大きな黒板が、カカッといいながらひとりでに動いて先生の名前を書き記す。

「僕は君達のプロフィールについては、昨日一応全て目を通したが……お互いのことを知らない人は多いと思う。」

「まず手前の席の子から、名前、所属寮、それとそうだな……これから専攻する予定、または興味のある学科や目標、あとは軽い自己紹介をしてください。」

「一通り終わったら、今日の連絡と学園のスケジュールや行事の説明をさせてもらいます。」

「では、君からどうぞ。」

「はい。」

 ハキハキとした通るような声、これはきっと女子学生の人気も高そうだなと思いながら………私は周囲の観察を始める。

学校や学園など、クラス分けをするに当たっての基準というものは……いつだって優秀な生徒とそう出ない生徒をそれぞれバランスよく配分出来るように振り分けされると聞く。

実際、この学園についてはどうなのかは分からないが………私のようにストレイナイツ寮に選ばれた生徒や、他にも何かしらに秀でた才能を持つ生徒も多くこのクラスに在籍しているようにも思える。


 勿論、ルミナスマギア寮のレイ=エルウッドもきっと例外では無いのだろう。

「それでは次の方。」

「はい、俺の名前はレイ=エルウッドです。

所属寮はルミナスマギア、専攻予定の学科は天体と伝承学科どちらも取れたらと思っています。」

一瞬だけ振り返ったエルウッドは私を一瞥し、もう一度前を向き直す。

「一応ステラ=ルミナスマギアの子孫ではありますが……出来る限り皆さんの期待に応えられるように奮闘させてもらいます。五大英雄の子孫だからといって特別扱いはしないでもらいたいです。」

それだけをはっきり伝えると、彼は早々に席に着く。

私は何故見られたんだろう、などと思いながら先生の方を見ると口をあんぐりさせながら突っ立っていた。

先生、なんか惚けてません?大丈夫ですか?

 若干呆れながら見てる私を他所に、エルウッドはそんなアッカーソン先生に向かって咳払い。

ハッとした様な顔になり、アッカーソン先生は自己紹介の続きを促す。

「わ、私はスミレ=クロギリです。その、フェイバーウッド寮の……所属です。」

「専攻学科まだその、どれがいいか決まってません……でも、植物科あたりを考えています。」

「その……………よろしくお願いします。」

やや俯きがちに、徐々に声が小さくなりながらも頑張って自己紹介をする妹の菫。

最終的にモジモジしながら席に着く………やはり不安で仕方ないが、あまり干渉する必要も無いだろうと黙るしか無かった。


 気づけば、自己紹介の時間も佳境に入ったのか……私の番になったようだ。

最近、いや昨日もそうだが、私は最後に回る傾向にあるようで………クラス内のほとんどが私に注目を向けられていた。

「では………私はアシュレイ=グッドフェローズです。どうぞ気軽にアッシュとお呼びください。

私の所属寮は…ご存知の通りストレイナイツです。

専攻学科については未定ですが、1番興味があるのは伝承科と植物科のつもりです。」

「あと、私がこうして選ばれたのは偶然です。ストレイナイツ寮の人だからといって特別扱いをされるのは得意ではありませんので………出来るだけ対等に接していただければ幸いです。」

軽く一礼をし、私は静かに席に着く。

何故か、私が終わった時にクラス中に拍手が湧き上がる。

「大変素晴らしい自己紹介、ありがとうございます!では今から資料を配るので──────。」

アッカーソン先生による、資料の配布とこの学園についての情報……もとい学園における行事やこれからの授業についてのスケジュール、そして学園内の規則についての説明があった。

今日は特段、授業をする訳でもなくオリエンテーションをするだけのようだった。

 ある程度自己紹介も連絡も終わり、ひと段落が着いた頃………気づけば私の周りには人だかりができていた。

「初めまして、アッシュ。 大講堂であの瞬間に選ばれたのは凄かったぞ!」

「はじめましてアッシュ、ねぇ貴方のこと色々聞かせてくれない?」

「やぁアッシュ、その腕って本物の機械なのか?!なぁどうなってるか教えてくれよ。」

あれやこれやと質問責めにまたされる、助けて欲しいが今私を助けてくれる人は居なさそうだ。

妹はそんな周囲を恐れて既に姿を消しているし………エルウッドはさっきから私の事を殺さんばかりに睨みつけている。

 どうにもこうにも、私はどうしても彼と仲良くしたかったが、それは今冷戦状態なので出来そうにないなと諦め加減に空を仰ぐ。

私の慌ただしい学園生活が、こんな形で幕を上げることになるとは思いもよらなかったのであった。

─────あぁ、今日も空が青いな。

などと軽く現実逃避しながら、私は一つ一つの質問に答えていくしか無かったのであった。

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