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「アルカディア魔法学園の歩き方」~七人の問題児が聖杯戦争に挑むようです。~  作者: 鬼屋敷 夜雲
序章 アルカディア魔法学園入学編
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第8話 晩餐会と悪意のはじまり。

 学園長は私の姿を確認すると、にこやかな笑みを浮かべる。

「こんばんは四夜くん、そろそろ歓迎の晩餐会(ばんさんかい)が始まるから君たちを呼びに来たよ。 友達もそこに居るんだろう?」

「あぁはい、そうですね。今呼んできますか?」

「良かったら頼むよ、僕は此処で待っているとも。」

「分かりました。シルキー、彼を少し応接室に案内してくれ。」

私がそう伝えると、シルキーは静かに頷き、学園長を寮の応接間へと案内していく。

私はそれを軽く見届けてから、急ぎめに自室へと向かっていくことにした。

 自室の扉を開けると、賑やかな様子……というか勝手に人の部屋を漁っているのが見えて呆れる私。

「何してんだお前ら。」

「いや私はやめとけっては一応。」

「右に同じく。」

「だって四夜さんの部屋どうなってるか、待ってる間暇じゃないですかー!」

「んで?誰だったの。」

「学園長が来てたよ、晩餐会があるから迎えに来たみたいだ。応接間にいるから行くぞ。」

「「「「はーい。」」」」

私は軽く溜息をつきつつ、メンバー達を引き連れて自室を後にする。

途中、応接間にも寄って学園長の元へと会いに行く。

学園長は私達の姿を確認すると、シルキーにお礼を言いつつ立ち上がる。

いつ見ても、歳を思わせないようなしっかりとした佇まいとその風格は、やはり普通ではないと思わせられる。

 「皆さん揃いましたね、では大食堂まで案内するので着いてきてください。」

「はい、分かりました。」

「シルキー、行ってくるよ。」

シルキーは小さく頷き、私達に手を振りながら見送っていく。

大食堂に向かう間、学園長を先頭にしながら、私達はそれに続くようについて行く。


 その道中、私は先程手にした懐中時計を掌の中で握りしめた。

これがなんの意味を持ち、そして何のためにあるのか……まだ確かめるほどの確信を持てないままで居た。

「それにしても、こんな平和な学園生活って言ってもなぁ………」

「バルトさん、学園内では錬金術師と傭兵八対二の割合でやって行くといいからな。」

「いいか!鉄拳制裁と称して地雷をばらまくなよ!」

何故こいつらは物騒な話をしているんだ、学園長の前だぞ。

「催涙ガスは?」

「学園内では投げるな。」

「いや、一応赤外線センサー式のやつ。」

「そういう問題じゃねぇ、催涙ガスを学園内で使うな。」

「じゃあ、スモークは??」

「立てこもり被害にあった学校に突入する特殊部隊かお前は。」

「学生が物騒なもの使うと思うな。」

レギーナとバルトの会話に、ボソリと低い声で呟く菫。

 やはり学園生活について色々勘違いしているこの世紀末脳に、常識を教えるのは些か大変だと思う。

現に見てみろ、学園長も顔に出しては無いが引いてるぞ。

「でもまぁバルトさんが逃げる時は良いんじゃねぇか?」

「そもそもそんな事態なるのか、芸術品作ってて。」

「アレだよな、あの人裏ルートとか半グレとか居ると思ってるよな。」

「学園じゃあ、テンプレみたいに見下してる貴族とか不良とか居るもんだろ?」

「お前は名門校を何だと思ってんだ。」

「でもフラッシュバン使うよりかはマシだろ。」

「「まず傭兵の思考を捨てろ。」」

「お前は学園制圧する気か、他人のフリしたくなるわ。」

「制圧するなら機関銃使うわ、影狐から送られてきたのはリボルバーしかないから無理だけど。」

さも当たり前のように発するその言葉に耳を疑うしかない、学園長の方を見ると……明らかに苦笑しているのが分かる。

「元気なことはいいけど、トラブルは程々にして欲しいかな。」

ほら見ろ、学園長も私達に気を使ってるぞ。

「これネットショッピング使えてたら道徳の教科書をポチるところだな。」

「多分使えるから、後でポチッとけ。」

「あ、学園長〜!そういえば制服って改造OKなんですか?」

リンリィが唐突に学園長へと話を振る。

どうやら我々魔改造魔達のために制服の改造がOKか確認を取っている、普通ならダメだが……この人ならどういうのだろうか。

「あぁ、制服の改造かい?勿論良いとも。僕の学校の生徒である以前に、将来的には君たち個人が魔道士として見られる立場にあるんだ。この学園の生徒らしく振る舞える以上は、自分の好きなようにしてもいいからね。」

「やった〜!!!スカート三段重ねにしよ〜!!!」

「良いんですか?学園長、普通ならそこ断られても仕方ないんですが。」

私はそっと学園長に、静かに咎めるように聞いてみた。

すると、彼の方はあっけらかんとした表情で笑っていた。

「それエルヴィス先生にもいわれるんだよね、でも僕みたいな大人が子供達のやりたいことを制限したところでそれが良い結果になるとは限らない。

とはいえ、その子供達が宜しくない方向に行こうとするなら止めるだろうけど、基本的には君達のような生徒を尊重したいからね。」

やはり教育者の鑑と言える人物は、得てしてこういうことを言えるのだろうか、と私は心の中で感心していた。

 そんなこんなで物騒極まる話をしていると、気づけばどうやら大食堂へと着いたようだ。

「さてと、これから晩餐会を始めるところなんだが……実は寮ごとに席が分けられているんだ。

入って右からリオーネ寮、フェイバーウッド寮、グランツィレーナ寮、そしてルミナスマギアとストレイナイツ寮は一緒になっている。」

「席順は特に決まっては無いから、空いているところに座るといい。食事は皆が楽しみながらするものだから、是非とも上級生や他の寮の生徒達との交流を楽しんでくれたまえ。」

「わかりました。」

「では、私は先に行くとするよ。」

放たれた大食堂の扉の先、そこでは1~3年の生徒達が一同に集まっており、皆整然とした形で席に着いていた。

「じゃあ、取り敢えず解散だな。私とリンリィは同じところだけど………席はどうする?」

「あ、じゃあ私ちょーっと離れたところに座るので、四夜……アッシュさんはエルウッドさんと向かい合わせになる席にでも座っててください!」

「何でピンポイントでそこを指定するんだ。」

 あの時、確かに寮の選定でも見た一人の男子生徒を思い出す。

私がストレイナイツ寮に選ばれた時の、強烈に浴びたあの視線と強い感情………何か嫌な予感がしたが、それを気のせいだと思いながら逸らして見たが…まさかここでその予感が的中するとは思わなかった。

各々が既に自分達の寮の席に着こうとする中、リンリィはそっと私に耳打ちをする。

「気づいてるかどうか分かりませんが、エルウッドさん………きっと貴方に対して何か行動を起こすかもしれませんよ、気をつけてくださいね。」

「……………………」

私はそれを聞いて、心中穏やかにはいられない。

半ば分かっていたとはいえ、それを理解していた上で楽しんでいるこの女に対してはやや殺意が湧きそうになった。

ひらひらと手を振りながら、笑顔を見せる彼女。

絶対この状況を楽しんでいる─────。

そうと分かりつつも、私は結局それを跳ね除ける程の気持ちは無いため………ほとんど彼女の言われた通りにエルウッドの前に席を着く。

 当然だが、私の事はこの学園の誰もが注目するはずだ。

それもそのはず、ついさっきまで寮の選定が終わったばかりで………そのストレイナイツ寮に選ばれた人が、こうしてストレイナイツに最も近いと言われたレイ=エルウッドの目の前で座したのだ。

彼も私の姿を一瞥するや否や、一瞬だけ敵意を剥き出しにした目をしたが………やはり周囲の人間が多い中、明らかに敵対した様子を見せるのは分が悪いと知っているのだろう。

私にはよく伝わる、冷静を装い………それでいても内に秘めたるその強い激情は、静かに私へ向かって悪意に近いものとして向けられていることに。


 そう、この学園生活の始まりこそが─────…私や彼らにとって大きな出来事のきっかけにしか過ぎないのだった。

きっとそれを知る事が出来るのは、それから大分後になるのだが…それはまた別の話になるだろう。

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