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アシトランテ領4 贈り物

 そうこうするうちに、順番がまわってきた。


 「ニコラス様、少々行ってまいります」


 サビスが馬車の外へ出て小走りに手続きに向かう。

 贈り物は事前に送っているから招待状だけ持って行った。


 淡い水色のドレスを贈った。

 金の薔薇と蝶が刺繍され、キラキラと輝く美しいドレスだ。



 顔も知らない

 声も知らない

 好みだって知らない女性に初めて贈るプレゼント。


 贈る品物は何がいいのか全くわからなかった。


 婚約者で、誕生日で、初めて逢う女性で、言葉すら交わしたことがない人に喜んでもらうにはどうすればとすごく悩んだ。


 結果として、身近な女性、それも貴族の女性の母に意見を聞くことで結論が出た。


 母はすぐにドレスを提案してくれた。





「贈り物ねぇ。やっぱり、ドレスかしら」


「なぜドレスなのでしょうか。サイズや好みがわかりませんが…」


 なぜ、わざわざ面倒な贈り物をするのかと思ってしまった。


「やーねぇ。サイズなんてあちらに聞けばいいじゃない!好みなんて常識の範囲であなたの好きなものでいいのよ!」


「はぁ」


「アンナ嬢はお優しい方と聞いているわ。よっぽどひどいものじゃなければ喜んでくれるわよ!」


「はぁ」


「それより何より、初めて逢う令嬢でしょう。もし、間違えでもしたら大変じゃない?ドレスを贈ればそれを着てるのがあなたの婚約者だって遠くからでもすぐに見つけられるわ!」


「なるほど」


 母は着飾ることが好きなので、その目は肥えている。間違いのないものを提案してくれた。

 普段ぽやぽやしている母だが、この時ばかりは感謝だった。







 邸門詰め所の方から、サビスと共に一人の男性がこちらへ向かってくる。

 詰め所で指示を飛ばしていた紳士だ。


 トントンっと馬車の扉をノックするので、小窓から顔を出して対応した。


「お初にお目にかかります。当家主人にお仕えしております執事長のセバスと申します。どうぞお見知り置きを」


 恭しく、優雅な挨拶をする。


「フリッツ領、領主のニコラスだ。後で挨拶に伺うが、アシトランテ伯爵に宜しく伝えておいてくれ」


「かしこまりました」

 美しく礼をする。


「フリッツ公爵様。今夜のお誕生日パーティーは当家のアンナ様と公爵様の婚約披露も兼ねております。控え室をご用意しておりますので、後ほど打ち合わせに参ります。それまではそちらで、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」


「わかった」


 横の小窓から離れ、馬車の中にサビスを呼び戻す。

 サビスは御者に、前方の馬に乗った騎士について進むよう伝えた。


 ゆっくりと進み出した。


 セバスは馬車が見えなくなるまで見送っていた。


 


 


 

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