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アシトランテ領11 発見2

 怪しい男を追って入った夕刻の森の中は、薄暗くて少し怖かった。


 この時間に一人で来たの、始めてだな…。


 気づかれないように息を殺し、時折木の幹に体を隠しながら歩く。


 声の届く範囲まで追いついた。


 ドクドクと自分の心臓の音がうるさい。


 近づいてわかった。かなり背の高い細身の男だ。少しフラフラ歩いているように見える。

 体調でも悪いのだろうか。


 しばらくすると少し開けた場所に出た。

 西の森の管理用小屋がある場所だ。

 燃料用木材の貯蔵や、道具を収納管理している。


 かなり陽が落ちてきた。


 ここで捕まえないと逃げられる。


 首から下げ、服の中に隠し持っていた鉄のクロスをグッと握りしめて、深い深い深呼吸で乱れを整える。




 このペンダントは特注品。


 わたしの武器は、この鉄のクロスだ。


 残念なことに、わたしは一般的な火や水や風は上手く操れないポンコツ。

 火はマッチの先くらいしか出せないし、水はコップの水面を揺らすだけ。風はティッシュ1枚も動かせない。


 始めはこの事実に絶望した。


 子供ながらに、お父様やお兄様達と同じようにアシトランテの務めを果たしたいと思っていた。筋力の少ない女のわたしは魔法士がいい!と思っていたのに…。


 多くの人が魔力すら無いことが多い中、あるだけマシかもしれない。


 だけど、戦いには到底参加できないくらい弱い力が悔しくて仕方がなかった。

 

 一度は、大人しく普通の令嬢になることも考えた。


 だけど、ある時、私には特殊な魔法の才能があることに気がついた。


 鉄を媒介に、鉄を集める魔法。


 これは、本当にたまたま発見した。

 

 ある日、天気のいい日にお母様と庭園でアフタヌーンティーを楽しんでいたら、ティーカップをテーブルに戻した時に、うっかり手があたった。危うく地面にフォークを落としそうになってしまった。

 ギリギリで掴んで事なきを得た。

 ぐっと握った瞬間に魔力がフォークに伝わったのだろう。

 サラサラと黒い粒がそのフォークに集まり始めたのだ。


 最初はこれが何なのかわからなかったが、後日、家付き医のマコーレ先生に相談してみたら、特殊な魔法だと判明した。


 それからは、お父様の提案で、この磁力の魔法を活かした魔法剣士として歩むようになった。

 





 このクロスは、媒介にして周囲にある砂鉄を集めることができる。

 わたしの力では砂鉄や小さな鉄くず程度の軽いものしか集められないが特に問題ない。

 この砂鉄をクロスにまとわせて固め、軽くて強度の高いわたし専用の剣を創ることができる。用途に合わせて形を変えられるのが強みだ。

 この力は、鉄の媒介体がないと磁力は生まれないが、それによって相手に武器が奪われても崩れ落ちて脅威にならない安心感がある。


 わたしはこの力で、今から敵に勝たなければいけない。


 興奮と恐怖で血が沸き立つ。


 


 鉄のクロスに力を込めた―――。

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