アシトランテ領5 庭園
数分馬車に揺られただろうか。
馬車がすれ違えるほど大きな白石の石畳をゆったりと行く。
若々しく生い茂る木々の道を抜けると、低木が可愛らしく刈り揃えられ、季節の花が咲き誇る美しい庭園が広がっていた。
点在する彫刻に、落ちかかった陽が黄金に照らし、キラキラと輝く。
なんと美しい。
「素晴らしい!素敵なお庭ですね」
エイミーが感嘆の声をあげた。
「エイミーは初めてでしたね。そうですね。本当に素晴らしいお庭です。伯爵婦人が監修をなさって造られたお庭だそうですよ」
サビスは父と共に何度か足ん運んているようで、秋の紅葉や冬の雪化粧の様子などいろいろと教えてくれた。
「また、このお庭を見に来たいな」
エイミーはポツリと呟いた。
「ほら見えてきましたよ!あちらの本邸のお部屋を控え室としていただいております」
サビスは正面の大きな館を指した。
敷地内には何棟か建物があり、一番大きな建物が本邸のようだ。
「パーティーの会場はあちらの建物です」
サビスが向って右にある建物を指した。
半球状の屋根が特徴的で、入口の扉はとても大きく重そうだ。
会場準備で沢山の使用人が忙しなく入出しているのが見える。
御者が引いた手綱で馬がブルルっと鼻を鳴らし、馬車が本邸入口前にとまった。
私達は 庭が一望できる二階の部屋に通された。
談話室の中央には趣味の良いテーブルセットが置かれている。
いつでも休めるように、奥にはベッドルームが配置されていた。
部屋付きの使用人も一人脇に控えている。
サビスとエイミーを連れているので、邸の使用人は下がらせた。
部屋に他人を入れないほうがゆっくりと休める。
「ニコラス様、紅茶をお飲みになりますか?」
「あぁ、いただこう」
エイミーが用意されていたティーセットで紅茶の用意を始めた。
その間に、窓辺で夕陽に照らされた庭園を静かに眺めていた。
入る風が心地よい。
「えっ?」
視界の端に、見覚えのあるモノが映った。




