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ジェスチャーゲーム

作者: たなからぼたもち

ガラガラガラ


担任の先生が教室の戸をゆっくりと開けて、教壇に立つ。


「気をつけ、礼。」


「お願いします。」


一学期の最後、先生はお楽しみ会と言って、総合の時間を用意してくれた。

何をやるのかはまだ言われてないけど、楽しみ。


「一学期最後の日はジェスチャーゲームをしようと思います!」


待望の答えに、皆が一瞬静まり返り、理解すると同時に、やっとのことで反応する。


「やったー!」


僕も一緒になって喜んだ。


ルールは、先生がお題をだし、そのお題を1人の生徒が言葉を使わずに表現する。

それをほかの生徒が制限時間1分以内に当てるというルールだ。

出席番号が早い人から先にスタートらしい。

僕は結構早く順番が回ってきそうだ。


ルール説明が終わり、1番の子が前に出る。


先生が後ろでお題を出しているんだろう、1番の子は神妙な顔つきになる。


「よーい、スタート!」


先生の合図のあと、1番の子が恥ずかしそうに、ジェスチャーをする。


(ガオー、ガオー)


僕にはそれが、ライオンに見えた。


「はい!」


思い切り腕をあげる。


「はい、岡野君。」


「ライオンですか?」


「うーん、、、正解です!」


やったぁ!

だよね、あんなにわかりやすく体を動かしていたし、分からないはずがない。

面白いなぁ。


それからゲームはすごく軽快に進んで行った。

サッカー、猫、野球、、、

色んなお題が出て、みんなすぐに答えがわかるようなものばかりだった。


そして気がつけば僕の番になっていた。


「岡野くん。」


「はい。」


ガタッと椅子を揺らして立つ。

力強く足踏みをして教壇に立つ。

目の前には色んな生徒がいた。

つまんなそうに窓の外を見る生徒、時計をじっと見つめる生徒、真剣に目を輝かせて僕を見る生徒。

僕が思ったより、みんなは僕に興味が無いみたいだ。


すると、先生が早速お題を見せる。

僕はそのお題に目を見張る。


(なんだ、意外と簡単じゃないか。)


「よーい、スタート!」


僕は、緊張で少し震えている手を抑えて、胸の前に手で小さく円を作る。



教室が静まり返り、時間が経っていく。



段々と不安になる。



段々と苦しくなる。



段々と泣きたくなる。



そうしてみんなざわつき始める。



結局制限時間になった。

誰もわかってくれなかった。

足を引きづるようにして、席に戻る。


やっぱり僕は泣き出しそうになって、もう一度、もう一度胸の前に手でさっきより少し大きく円を作る。

なんだか心が苦しくなった。


出されたお題は『自分』だった。

言いたいことって、言わないと伝わらんもんなんですね。

外見的なことはわかるのに。

眠そうだね、元気だね、嬉しそうだね。

とは言ってくれるのに、

実はやめたいんでしょ?

言いたいことあるんでしょ?

なんて、聞いてくれる人は誰もいない。

もし仮に聞いてくれたとしても、まるで僕の不幸自慢みたいで、誰も耳を貸さない。

生半可な返事ばかりで、自分が傷つくばかり。

かと言って、何も言わなくても傷ついていく。

なんか生きづらいっすね。

僕は死にたくないけど、こんな小さなことにも苦しまれてる人がいると思います。

元気だして。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公のジェスチャーの意味は、『皆の輪の中に入っていきたい』ということだったのかなと思いました。それにしても、「自分」って、中々難しいお題ですね。
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