1-(1) 心霊写真を撮ろう
あれは小学校四年生の時
僕たちの仲間で「心霊写真」が話題になった時期があった。
中でも一番盛り上がったのは、学校に伝わるこんな話。
学校の裏にある山を越えたところにある小さな池ーーその池のそばに生えている木を撮ると、髪の長い女の人の幽霊が写ることがある。しかし、それを撮った者は呪われる……。
夏休み前のある日、その池に「心霊写真」を友達四人で撮りに行くことになった。
カメラはなお君(直樹)が持って来た使い捨てカメラだった。
池の周りは入れないように柵がしてあったけど、みんなでよじ登って、中に入った。
木は数本あって、どれかは分からなかっから、なお君は片っ端から撮っていった。僕たちはなお君について行って、カシャカシャ撮るのを見た。それだけなんだけど、その頃はワクワクして楽しかった。
五日後の放課後、僕たちはみんなが帰った教室で、なお君が持ってきた池の写真を見た。
僕が見た写真は、どれもただの写真で、心霊写真らしい物は一枚もなかったが……
「あっ!見て見て、これ!」
ヨッちゃん(良雄)が興奮して言うので、その写真に目をやると、木の下にうっすらと煙のような白い影が写っていて、それが髪の長い女の人のように見えていた。
「心霊写真だあ」
僕たちは何かお宝を発見したように興奮した。
「やったね。なお君」
僕が言うと、なお君は嬉しそうにその写真をカバンに入れて帰っていった。