なかなかに便利なスキルを持ってるらしい
どれぐらい寝てたのだろうか。
心地よすぎて、昼寝が本寝になってしまったかもしれない。
自分に合った寝具で八時間しっかりと寝た後のような、得も言われぬ充実感に包まれている。
「んーーーっ」
上半身を起こし、伸びをして目を覚ます。
いまだ夢見心地なまま空を仰いでみるが、意外と眠っていた時間はそう長くもなかったかもしれない。
正確な時刻は分からんが、まだまだお天道様は元気に活動中のようだ。
まじかよ、めちゃめちゃリラックスできんじゃん。
なんちゃらセラピーとして超有効なのでは?
「はああぁぁぁー、めっちゃ気持ち良かった。
これは毎日ここにくるの決定だな、うん」
立ち上がり服をパンパンとはたいて、このお昼寝スポットにくることを日課に加えることを決める。
リスのようなウサギのような動物とも、しっかりと挨拶をしておいた。
また、明日。
さて、まだ日没までは時間がありそうだし、せっかくだから薬草の類いを探しておこうかな。
独り暮らしだし、体調を崩した時に何も備えがないのは困るからな。
頭痛に効きそうな草は見つけてあるし、あとは何が欲しいかなぁ。腹痛とか発熱とかに効くような草、あるかな。
「お、なんかそれっぽいの見っけ。
んー、これは傷の炎症に効きそう」
「こーれーはー、へぇ、面白いなこれ。
そのまま齧り潰せば虫歯に効くし、煎じて飲めば腹痛に効くな」
この山には、薬草も豊富に生えているらしい。
行きの時に見かけた薬草が生えている箇所の近辺を探してみると、なかなかな種類の薬草を見つけられる。
確信したわ。
俺、薬草を見ただけでその効能とかが分かるわ。
これはなかなかに有能なチートスキルだと思う。
いや、スキルなのかどうかも知らんが。
「いやー、大漁大漁。こんだけ種類がありゃしばらくは困らねーな」
パッと思い付く、これがあれば便利だなー系の効能を持った薬草はだいたい揃ったような気がする。
ちょっとした擦り傷から打撲捻挫、鼻風邪喉風邪頭痛腹痛。
ちょっとした小町の医者気分だ。
あとは味かなぁ。
もし街に売りに行くとしたら、小さな子どもなんかも服用するだろうし。
さすがに美味しい薬ってのは難しいだろうが、にがーい薬草そのままごっくんは無理だろう。
これは難しいなぁ……
あ、待てよ?
どんな街にだって、病院かもしくはそれに準ずるものはすでにあるよな?
だとしたら、効能も確かで飲みやすい薬なんて売りに行ったら、その街の医薬品関係の市場が荒れるんじゃなかろうか。
それはちょっとなぁ。
それなら、山の麓に住んでいる正体不明の男が作る、効能は確かだが決して飲みやすいとは言えない苦い薬、ってのがちょうどいいのではなかろうか。
うん、ひとまずその方向性でいこう。
飲める程度には味の調整をして、過度な飲みやすさってのは度外視しよう。
気が付くと、太陽がそろそろ本日の仕事を終えようとしていた。
よし、寝るか。
続きはまた、明日。