抜群のお昼寝スポットを発見するらしい
さて、文字どおりの道草もこれくらいにして、お昼寝スポットを探しますか。
こう、いい感じでお天道様が見えてて、いい感じで柔らかい寝心地の良さそうな草が生えてて、いい感じで周りに花も咲いてて。
贅沢を言うと小動物なんかも近くに寄ってきたりして。
そんな場所があったりしないかなー。
「む?なんだあれ、パッと見は美味しそうだけど……
なんか毒がありそう」
ついさっき食べた、名前も知らない美味しい果実とよく似た果実が成っているのを見つけた。
見つけたのはいいんだが、なんか嫌な予感がする。
見た目は美味しそうなんだけど、食べたら高熱が出そうな気がする。
薬草だけじゃなく、やっぱりこういった自然系の勘は当たるのだろうか。
あまり手を出したくない感じだ。
「うーん、一種の見極め能力、みたいなのが備わってるのか?」
だとしたら非常にありがたい。
お腹を壊すだけならまだいいが、毒にうなされて苦しみのなか死ぬのは勘弁願いたい。
あ、そういや不老不死とか言ってたな、ってことはうなされるだけうなされて死ぬことも出来ないってか?
「うぇぇ、考えただけで身震いが」
それはちょっと困る、うん。
なんらかの能力っぽいし、こういった勘は大事にしていこう。
しかしなんだ、薬草や果実なんかは目にするものの、魔物?モンスター?とかは全然いないな。
生前のステータスのまま転生したらすぐ襲われちゃってさぁ大変、って流れで能力付きの転生となったはずなんだが。
これなら別に能力とかなくても生きて……
あ、いや無理か、生活レベルが一気に原始人になる。
魔法が使えるから生きていけそうなところがあるもんな。
ありがとうございます神様女神様リリィ様。
「あった……
これだ、これを求めてたんだよ俺は」
必殺手のひら返しを脳内で繰り出しつつ歩いていくと、山の頂上付近でちょうど良いお昼寝スポットを発見した。
元々それほど多くないちょうど良い生え方をしていた木々も、この場所は特に開けていて。
暖かい陽射しをくれるお日様が光輝いていて。
とても寝心地の良さそうな柔らかい草が生えていて。
その周囲には可愛らしい、そして良い香りのする花が咲いていて。
おまけに小動物達が微笑ましくかけっこをしている。
これだ、これこそが求めていた天国だ。
ところで、あの小動物はなんていう名前なんだろうか。
リス、をひとまわりくらい大きくして、耳がロップイヤーのようになっている。
ウサギとリスを足して二で割ったような感じだろうか。
とてつもなく、可愛い……
そういえば動物に好かれやすいようになるよう頼んでいたけど、どうなんだろうか。
あまり刺激しないよう静かに近付いてみる。
あっ、こっちに気が付いた。
警戒……はしてなさそうだな、この人誰だろう?みたいな感じか。
出来るだけ怖がらせないように、視線を低くしてみる。
そっと手のひらを差し出し、近寄ってくるか試してみる。
「こんにちはー、ここでお昼寝しても、いいかな?」
言葉が通じるとは思っていないが、自然と話しかけてしまう。
小動物に話しかける時に、無意識に猫なで声のようになってしまうのは俺だけじゃないはずだ。
ぴょんっと一つ跳んで、差し出した手のひらの近くまで寄ってきてくれた。
匂いを嗅いでいるのだろうか、指の上で鼻先をすんすんしている。臭くないだろうか、大丈夫だろうか。
「ふおおぉぉぉ……」
危険はないと感じてくれたのだろうか、手のひらに体を擦り付けてくる。
なんとも言えぬ感激に、言葉にならない言葉を発してしまった。
お母様、理想郷は、ここに、ありました……!
前世では色々あったけど、これからここで幸せに暮らしていきます。
「ああ、心が洗われるんじゃあ……」
柔らかい草の上に寝転がる。
先ほどの動物の仲間だろうか、さらに数匹がこっちに駆け寄ってきて、俺の周りを跳ね回っている。
そのうちの何匹かは、俺のお腹の上ですやすやと眠っている。
俺、もう死んでもいいや。
あ、死んだからここにきたのか。