多分だけど、魔法を自在に使えるらしい
結論から言おう。
俺、最強じゃね?
思い付く限りの魔法を試してみたけど、そのどれもが思い付いた通りの魔法としてちゃんと出来た。
火も出せるし水も出せる。つむじ風みたいなのも出せるし、それで自分の腕を軽く……痛いの嫌だったから、本当に軽く引っ掻いて、回復魔法みたいなのも試したら、それも出来た。
もしやと思い、テレポート的なのも試してみたけど、それも出来たっぽい。
家とさっきの山とを魔法一つで軽々移動出来る。
風を操って空を飛ぶことも出来る。
これ、生活するうえで最強じゃね?
所謂、攻撃系統の魔法ってやつは試してないけど、それ使う状況には陥るつもりないし。
あ、そのテレポートを試している過程で、食べられそうな魚が泳いでいる綺麗な川も見つけました。
しかもですね、釣具に頼らずとも魔法で簡単に取れちゃいました。
そりゃそうですよね、えぇ、その魚が泳いでいる川の水も思い通りに操れるし。
「うんめー……
なんも味付けしてないのにクソほど美味いんだが」
さっそく二匹ほど魚を取って、自宅の前でそのまま焼いて食べているところ。腹ごしらえは重要だよな、うん。美味いし、うんうん。
落ちてた木の枝を、風の魔法で削り取って串にし、その辺の手頃な岩で囲った中に、燃えやすそうな草木を敷き詰めて、火をつける。
そしたらもう、あとは焦げないよう気を付けながら、串に通した魚を焼くだけだ。
火力は調整できるし。
もし火事になりそうになったとしても、水を出してすぐさま消火できる。
取れたての魚を焼いて食う。
もうこれだけで、大満足なお食事に早変りだ。
周りは自然に溢れているし。
時々、虫や鳥の鳴き声が聞こえてくるし。
「おっ、これ美味しいな。俺の勘はアタリだったってか?」
デザート代わりに、魚を取ったついでにもいできた果実をかじる。
今まで見たことのない果実だったが、めちゃくちゃ美味い。
なんだろうなこれ、形はレモンのようなんだが、赤いし。味は桃……に近いか?完熟桃の甘さと、後味がリンゴの爽やかさ、みたいな?
むむむ、上手く表現できん。
不思議と、その果実を見たときに「お、これは食べられる」って思ったんだよな。
当然ながらこの世界のありとあらゆるものは、ほぼほぼ初めましてなんだけど。
もしかしたら、薬草を探す時にもそういう勘、みたいなのが働くんだろうか。
「ふぃー、ごちそうさまでしたっとー。
片付けも楽でいいね、こりゃ」
さて、お腹も膨れたところで。
お昼寝でもしようかなぁ、今がお昼寝時かは分からないけど。
時計ないし。
いらないけどね。
どうせお昼寝するなら、ちょうどいいお昼寝スポットを探すのもありかな。
山のてっぺんとかどうだろうか?
うまいこと開けていて、寝心地の良い場所があるかもしれない。
お腹がいっぱいになったすぐあとに寝るのは、ちょっと、忍びないので。
テレポートじゃなく歩いていこうか、そんなに急な斜面でもないし。
あーるーこー、あーるーこー。
「む?これ、薬草なのでは?」
歩いている途中で、同じような草が生えている群生地?みたいなところを発見した。
日本で言うよもぎ……に近い形をしているが、なんだろう、なんとなーく、薬草な気がする。
近付いて、その草をよーく見てみる。
当たり前のように名前も分からん初めて見る草なんだが、なんていうかなぁ、なんか、なんか……
なんつーか、頭痛に効きそう……な、気がする。
「うーん、体に害はなさそうだし、少しだけ取っておいてみるか」
たくさん生えてはいるが、あまり大量に使うこともないしな、取り尽くしてしまうことのほうがよろしくなさそうだ。
その薬草を三本だけ、いただくことにしよう。
あ、しまった。
「あーーー、お昼寝を終えてからにすれば良かったー。どうしよ、これ」
うーん、一度家に置きに帰るのもなぁ。
こういう時にゲームだと、アイテムとして勝手に持っててくれるんだが。
む、アイテム、か。
そういえば昔読んだ小説では、空間を裂いてそこに物を入れてたりしたな。出来るのだろうか。
「ものは試しだ、えいっ」
おお、出来た。
なんか、何もなかった空間に切れ目が入って、巾着袋みたいな中身が出てきた。
なんだこれ、こわっ。
「この中に入れとくか、多分いつでも取り出せるだろ」
なんの根拠もないが、なんか出来そうな気がする。ついでに言うと、この空間の中は時間の概念がないような気がする。
つまるところ、この空間の中なら、食べ物とか入れといても腐ることがないような気がする。
なーーーんの根拠もないが、なんかそんな気がする。