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意外と衣食住はなんとかなるらしい

新しい人生を始めるうえで、衣食住のうち住は確保できた。

衣は、とりあえず今着ている服でなんとかしよう。辺境の独り暮らしなのだから、洗濯している間は粗末な格好でも構わない。

そのうち、薬草なんかを集めて薬を調合して、村に売りに行こう。んで服を揃えていこう。


「あとは、食か」


食に関しても、実はあまり心配していない。

山を散策しているうちに、美味しそうな果実が成っていたのを見かけた。

もうちょっと探してみれば、川なんかも見つけられるだろう、水の流れるような音も聞こえていたし。

川を見つけたら魚を釣って、それを焼けば……


「火が、ないんだよなぁ」


女神様が用意してくれたのだろうか、おそらく寝室であろう部屋に置いてあったベッドに腰掛ける。

そうだ、火がない。


水は川を見つけて汲みにいけばいい。電気は……、うん、お日様が沈んだら寝ることにすればいい。

そうだ、夜遅くに電気を煌々とつけて活動していた前世と違い、時間ならたっぷりとある。

お日様が昇れば目を覚まし活動、お日様が沈めば優しいおふとぅんの中で寝る。ビバ、スローライフ。


ただ、火だけはないと困るんだよな。

釣った魚を捌いて刺身にする技量は持ち合わせていないし。


うーん。




「あれ?この寝室、全身鏡もあるのか。至れり尽くせりだな」


ふと周囲に目をやると、部屋の隅に鏡を見つけた。

こういう世界観の鏡って、現代のと違ってあまり見えないのかなと思っていたが、そんなこともなかった。ばっちり、鏡である。


ここで久しぶりに、自分の姿とご対面だ。

うん、見慣れた顔だ。やはり年齢的にはそう変わってないようだ。

超絶美少女になっちゃった展開も、それはそれで楽しめたと思うが、幾度と見た自分の姿に、少しばかり安堵する。


「あ、そうか。火って自分で出せるんじゃね?」


見慣れた顔身体が身に付けている格好は、所謂魔法使い系のローブに三角帽。

だったら魔法、使えるのでは?

最初からある程度、強いらしいし。


「よっしゃ、いっちょ魔法、出してみるか。

ちょっと憧れてはいたんだよな」


アニメやマンガ、小説の世界のように、自分にも魔法が使えたら。

そんな妄想は誰しもが通る道だと思う。いや、絶対にそうだ。


少年時代に置いてきた、魔法への憧れを胸に、一度外に出てみる。

さすがにこれからしばらく住むであろう家の中で、一度も使ったことのない魔法を試してみる勇気はない。




「……いや、どうやって出すんだよ、魔法って」


よくある、詠唱とかそういうのがいるんだろうか。

それとも魔方陣とかそういうやつだろうか。

魔武器とかそんな感じのパターンだろうか。


まったくもって見当がつかないので、手当たり次第にやってみるのが一番早いか。


「んー、そうだなぁ。とりあえずイメージだけで出せるかやってみるべ」


人差し指を突き出し、その先に小さな火が灯るイメージをしてみる。人間チャッカマンだ。


するとどうだ、経験したことのないような感覚が身体を巡り、指先に火が灯る。


「うおぅっ!?」


まさか本当にこれだけで出るとは思ってなかったので焦る。焦る焦る。

急いで腕を振り払うと、その火が消えた。あーよかった、火傷するかと思った。


ん?火傷?


そういえば、指先から火が灯ったくせに、熱い感覚はなかった。

どういう原理なのだろうか。


「本当に、出せた。

ちょっと色々試してみようかな」


よくあるファンタジーの世界で描かれている魔法には、属性みたいなのがいくつか存在する。

思い付く限りの魔法、試してみる価値はあるな。


社会人になって数年、いつの間にかどこかへと置いてきた少年心を取り戻してきた。


いいじゃん、第二の人生。

わくわくするじゃないか。

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