弱いけど、強い子だったらしい
ふぅ。
いやはや、どうしたもんかなぁ。
もはやあのままハーツ森でどうのこうのって状況じゃなくなったので、テレポートで帰ってきました。
今、寝室でリコルが看てくれているんだが、うーん。
どうしたもんかなぁ……
めっちゃ怖がらせちゃったし、ビビア村に行けなくなっちゃったな。
あぁそうだ、結局ハツカ草もなー、見つけらんなかったしなー。
どーうしたもんかなーぁ……
仕方ねぇやな、今回は俺が悪い。
ビビア村の飯は惜しいが、元々はこの家とクーバ山との往復だけで過ごしてたしな。
最初の頃の生活に戻るだけだ。
ま、俺のことはどうだっていい、心配なのはリーシャなんだよな。
なんかしらのトラウマ的な、心の奥深くを傷付けてしまってはいないだろうか。
「コージ、入ってくるのじゃ」
もう大丈夫なのだろうか。
ぬー、足が重いぞこんにゃろ。
「おー、入るぞー。
……リーシャ、大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫です、落ち着きました。
それより、すみませんでした、凄い失礼な態度、取っちゃって……」
私のために、頑張ってくれていたのに……と、しょぼーんとした顔で深々と頭を下げられた。
ええい、やめろやめろ!申し訳なさメーターが振り切れるわ!
「いやー……こっちこそすまん。
探知ってーの?を初めてやってみたからさ、まさかああなるとは思わなかったんだ。
あれはしばらく封印しとくわ……」
探知ってーよりも、威圧になっちゃってたからな。
防犯でなら使えそうだけど。
「あ、待ってください!封印する前に、もっかいやってくれませんか!」
……は?
「は、えっ……?何を言ってるのじゃリーシャよ」
あれ、リコルも同意の上じゃないのか。
すっと立ち上がり、まだいくらか震えながらも真っ直ぐな目をしているリーシャに驚いているようだ。
まぁ、そうか。ハツカ草探しにそこまでするか?って話になるわな、あの怯えようを見た後じゃ。
「えーっと……?」
「あのコージさんの殺気を前にして、私は一歩も動けませんでした。
私は、ギルドマスターなんです。ビビア村にそんな危機が訪れるなんてことは、あまり考えたくもないですが……
でも、もしあの村に危機が迫った時、私は村を、皆を、守らなければいけないんです。守りたいんです」
すげぇ立派な人だよあんた。
少し膝が笑ってっけど、強いなこの子。
「腰を抜かしてあわあわやっているようじゃ、ダメなんです。太刀打ちは出来なくとも、せめて村の皆を避難させられるぐらいには動けないと……」
「ふむ。
今のこの世に、あれほどの殺気を放つ者がそんなぽんぽん出てくるとは考えられんがの。じゃが、いい心がけなのじゃ。
わっちも協力しようかの、また正気を失ったら看てやるのじゃ」
えぇー……
なんか、あまり気が進まんのだが……
正直、自分を恐怖の対象とした人の表情は、少し堪えるものがあった。
前世で読んだことある携帯小説で、よく力を持ちすぎている者が独りになるってのがあるけど。
こういうことなのかな。
幸運にも、俺はそうならずに済みそうだけども。
「コージとしても、殺気を出さずに探知をする練習になると思うのじゃ。
それで殺気が出なくなったら、次は本格的に殺気を出す練習にもなるぞ?殺気で相手を威圧することが出来れば、直接戦わなければならない事態が少なくなると思うのじゃ」
はーなるほど、その発想はなかったな。
そうか、いくらこっちが細々と生活していても、万が一ってことはあるかもしれない。
なにせ前世での常識が通用しないからな。
……その前世でも、こっちにそんな気なくてもやたら突っかかってくる厄介な奴らなんぞ山ほどいたからな。
会得しておいて損はないな。
「ただ、その……
本気で殺気を出す段階にまでいくと、わっちも正気を保っていられるか分からんでの、加減はして欲しいのじゃ」
なんつー難しいことを仰りやがりますかこの小娘は。
うーん……
気は進まないが、他ならぬリーシャの頼みだしなぁ。
ビビア村の平和のためにも繋がるし。
「はぁ……分かった、やってみるけど。でも、無理はするんじゃないぞ?
リコル、リーシャの表情をよく見ておいてくれ、さっきみたいなことになる前に、ストップかけてくれな」
「任されたのじゃ。わっちとしてもいい訓練になりそうじゃの」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
あ゛ーーー…………
本当に、どうしてこうなった。
「やるのはいいけど、もう少し休んでからな?
まだ震えてんぞ、膝」
「あ、あぅ……はい……」
んで、どこでやればいいんだろ。
ここでやったらゴンにも影響出るしなぁ。




