お決まりのテンプレ展開らしい
「え、えっとー……
はじめまして、リーシャと言います、よろしくお願いします」
「わっちはリコルという、よろしく頼むのじゃ」
「なんだ、これ」
あれからしばらく団欒していたら、ふいに扉を叩くノック音と、どこかで聞いたことのある声がしたので玄関に出てみると、ずぶ濡れのリーシャが突っ立っていた。
「あの、コージさん」
「ん?」
「さすがに子ども相手は、その、犯罪というか、その……」
「なんでやねん」
まぁ、お約束というかなんというか。
そもそもなんでリーシャがここに?ビビア村からはそこそこ遠いんだがな。
「これ!わっちを子ども扱いするでないわ!
まったく、人間はみな、ほんとに失礼なやつじゃ!」
はい、ここまでテンプレ。
「はー、それは大変だったな。というかそれが今日の雨と被るって、運が悪いな」
「そうなんですよ、薬草のことは私も詳しく知らないし、どこの山に生えてるかも知らないし、頼みのコージさんとは連絡手段がないし」
「じゃが、その状況でここにたどり着いたのは、ある意味凄い強運じゃの」
どうも、ビビア村の食事処でよく使われている、料理に添える香りつけの薬草が切れて、それの採取を依頼されたらしい。
普段は例の商人のおじさんが来たときに買い足してたんだけど、それを忘れてたと。
で、村の近くやスード丘の辺りには生えてなく、少しばかり遠出になると。
当然ながらビビア村には、そんな依頼を受ける者は……というかそもそもギルド登録者がいないために仕方なく、遠路はるばるどこに生えているかも分からないものを探しさ迷っていたと。
よく無事だったな。
ってか俺が最後に村に行ったのって、つい最近だったんだけど。
急展開すぎんだろ。
「私、体力には自信があるので。走り回ることには慣れてますんで」
いや、そんなどや顔をされても。
「はぁ。で、その薬草は見つかったの?」
「いえ……この天気もあって中断しました……」
「それで、雨宿り先を探していたら、ここに来たと。本当に運が良かったのじゃ」
そうだなぁ、もし悪い人の家とかだったら、連れ込まれて薄い本展開になってたかもな。
……いや、半端なやつ相手なら叩きのめしそうだ。
「まぁ、雨がやむまでゆっくりしていけよ」
「助かります……さすがに雨晒しはちょっと……」
「寒そうじゃのう。コージ、お風呂に入れてあげたらどうじゃ」
そうだなぁ、このまま風邪引かすのは可哀相だしな。
「あ、いえいえお構いなく」
「そういうわけにもいかんだろ。湯はってくるから、その間タオルで拭きながらこれでも飲んでおきなよ」
立ちあがり風呂場に向かう前に、タオルと薬草茶(勝手に命名)を渡しておく。
リーシャのことはリコルに任せて、お風呂溜めてくるか。んー、浸ける薬草は……いつものでいいかな、うん。
「ほんとすみません、お世話になります」
「ちょっと可哀相なぐらいにびしょびしょじゃのう」
「あはは、正直言うと寒いですね」
でしょうね。
うーん、しょうがない。
「風呂入ってる間に服乾かしておくから、入る時に脱いだ服は分かるところにまとめておいてくれな」
「えっ!?いや、でも……はい、お願いします」
あ、良かった通報されなかった。
ぶっちゃけ言うと、ドン引きされないかガチで不安だった。
前世なら間違いなくタイーホ案件だな、うん。事案だ事案。
「ついでにわっちも一緒に入っていいかの?たまにはこの姿で入りたいのじゃ」
「おー、いいぞー。
そんじゃ溜めてくるから、ちょっと待ってて」
これは、久しぶりに一人で風呂ることになりそうだ。
こういうときに、本があればなぁ……




