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ただひたすらに駄弁る一日を送るらしい

「魔法がなく、科学が発展した世界か。なんか、想像がつかんのじゃ」


「だろうな、俺も最初は戸惑ったけど。

あーでも、この世界にはテレビゲームとか、漫画とかってないのか?俺がいた世界では、ゲームや漫画の中でここのように魔法で溢れた世界が描かれていたからな」


「テレビゲーム……?とやらは聞いたことがないのじゃ。漫画はわっちも読んだことがあるが、あまり普及はしてないんじゃないかの。

あ、わっちもおかわり貰えるかの?」


「ほいよ、ついでに茸も追加すっか。

あー、ゲームがない世界か。そうか、科学が発展しないことには、テレビゲームなんて生まれないもんな」


山で採った茸を干して、同じく山で採った果実を火にかけジャムのようにしたものを添えたおやつを食べながら、こちらも山で採った薬草を煮込み果実で味を整えたお茶?のようなものをすすり、なんとも和やかな雨の日を過ごしている。


あのお昼寝スポットに行けないのは残念だが、これはこれでいいものだ。




「なんとも難儀な世界だったのじゃな。

そんな日々を過ごしていたら、心が荒みそうなのじゃ」


「実際、休む暇もなく働いて身体を壊して、命を落とす人もそう少なくはなかったからな」


「なんとも哀れな」


「まだ身体を壊せるほうがマシかもな。

そのうち洗脳されて、休めないのが当たり前で、働き続けることに美を感じるようになる奴も多いんじゃないか?」


「……なんのために命を授かったのか、わからんの。

わっちは、絶対にそんな世にしたくないのじゃ」


リコルなら、大丈夫だよ。

きっとな。


「そんな世界にいて、よくコージは無事じゃったのう」


「いや、原因は違うけど無事じゃなかったから、今ここにいるんだけどな」


「そうじゃなくての、心の話じゃ。

そんな世界にいて、どうしてそこまで優しい心を保てるのじゃ」


「いや、俺もそんな優しい性格はしてないけどな。のんびり過ごしたかっただけでさ」


もしも今の俺が心優しい青年なら、それはきっと、この世界のおかげだな。


この家と、あの山と、そこにいた色んな命と。

それとリコルの存在と。


言ったら絶対に調子に乗るので言いませんけど。




「しかし思うのじゃが、コージがいた世界では現実には魔法が存在しないと言ったがの。

いつか魔法が栄えていた時代があったのではないかの?」


「ん?なんで?」


「魔法が一切存在しないなら、それを想像して漫画やらゲームやらに描くのは難しいと思うのじゃ。

全くのゼロから物事を創り上げるのは、なかなか出来ることではないぞ?」


はー、なるほど。

人間が授かりし大いなる妄想力で創ったんだろうと思ってたけど、そう言われてみれば、そうかもしれない。


「大昔には魔法が存在していて、科学の発展と失われた自然とともに、魔法がなくなってしまった。それを後世に残すために、漫画やゲームなんかで書き残した。

という線も、面白いと思うのじゃ」


「おおお、なんかそっちのほうが人間っぽいな。

大昔には栄えていた魔法が、科学のせいでなくなり、その科学の力で魔法という存在を残した、と」


矛盾だらけの進化をしてきた愚かな人間の、最たる例としてぴったりなんじゃなかろうか。




「まぁ、コージもそんな人間の一人なんじゃがの」


「うむ、全くもってその通りだ」


「じゃが、良いことを聞けたのじゃ。これからの魔族の繁栄に役立てていくのじゃ」


「そうだな、反面教師として学んでおくれ」

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