忙しい王族の、束の間の休息になっているらしい
「くふふっ、ここはやはり最高じゃのう」
「だなー」
翌朝、この日は早めに家を出て、まだ見ぬ山菜を探しに山へと向かった。
のだが、どうやらこの山には山菜は生えてないらしい。
まぁさすがにな?果実もあって茸もあって薬草も豊富に生えていて、それでいて山菜までという贅沢な展開にはならなかった。
気を取り直していつものお昼寝スポットにきたのだが、やはりここはいいものだ。
前の世に点在した、様々な遊びの場なんかよりよっぽど癒される。
「いっそのこと今の身分を捨てて、ここに住むのもいい気がしてきたのじゃ」
「いや、それはどうなんだ?お父様とママが泣くぞ?」
「ママはやめんか!
今はまだ、わっちが若いからいいがの、これからどんどん仕事が増えていくのじゃ……」
そうか、魔王の娘だもんな。
所謂国家の王女様みたいなものだ、我々のような下々の民を統べるための、様々な仕事があるだろう。
「目下勉強中なのじゃ」
「大変だなぁ。
あれ?ここでのんびりしてていいの?」
「本当はダメじゃの」
さらりと言ったぞこいつ。
まぁ、だからと言って突っ返したりはしないけどな。
そういう゛大事なこと゛ってーのが分かってない子の場合は、心を鬼にして追い返すことも必要だけど、リコルはそうじゃなさそうだしな。
偉い人にも、たまには休息が必要だろうしな。
民を統べる者が休息を取る余裕がない、許されない国なんて、いつか滅ぶだろ。
俺とこの場所が少しでも気分転換に繋がるんなら、協力しようではないか。
「だろうな。まぁ、いよいよって時には迎えとかそういうのがくるだろ、それまで休んでおけよ」
「そうするのじゃ。
基本的には自由にさせてくれるからの、ここまでやってきて、うちの娘を返してもらいにきました!とかは来ないと思うがの」
そんなの来られたら俺ちびりそうなんですが。
「前も言ったとは思うが、魔族の世界は実力主義じゃ。どこの誰とも分からん者に負けて、おめおめとゴーヌ家の名を汚すことはしとうない。
じゃから、もう少しだけ邪魔したら、また一度帰ることにするのじゃ」
「おう。そんでまた疲れた時は、いつでもこいよ」
確約は出来ないが、今のところこの無限にある時間は、ここで過ごすつもりだしな。
まぁ仮に住み処は変えたとしても、あの念話で言えばいいし。
片道切符の念話だけどな。
「そんな小さいなりしてるのに、大変だな」
「子ども扱いするでないわ!今は猫の姿をしてないじゃろ!」
どちらにせよ見た目は子どもなんだよなぁ。
思う存分昼寝……という名の談笑を堪能して、帰宅してまいりました。
「む、また調合かの?なかなかに律儀なもんじゃの」
いつもなら薬の調合なんだがな、今日はちょっと違うんだな。
「いや?今日は調合じゃないよ。
……いや、ある種の調合か?次にリコルが帰る前日の夜に見せてあげるよ」
「ほう?なんじゃろ、いってらっしゃいのクラッカーかの?」
惜しい、だけど発想は近いな。
っというかクラッカーって存在してるんだな、じゃあ花火も見たことあるかもしれないな。
「まぁ似たようなもんかな。花火って知ってる?」
「は、はなび……?は聞いたことがないの」
あれ、ないのか。
むしろなんでクラッカーがあるのに花火がないんだ……?
クラッカーの方が使用機会が少なくないか?
「んー、そうだな、クラッカーのちょっと大きいのを想像しといてくれ」
「それは楽しみじゃのう」
前世で言うところの花火なんてものは作れないが、今は魔法が作れるからな、便利な世の中だ。
まぁぶっちゃけて言うと、わざわざ仕込まなくても、その場で魔法を操ればそれなりのものは出せそうだけどな。マジックアートでそういうのは鍛えてるぜ。
さて、何かに魔法を仕込んどいて上空で発光させれば、そこそこのが出来るだろってのは想像出来るんだけど。
何に仕込むかなぁ。
あ、ていうかこれをやってる間、リコルが暇になるな。
いっそ二人で作るか。
「リコルー、暇してるなら一緒に作るかー?」
「おお、せっかくじゃしの、作るのじゃ」
よっし、二人で花火作って、リコルが帰る前夜に打ち上げるか。
その時はゴンも呼ぶか。ゴーレムが花火を見るかどうかは知らんが。
「して、はなびとはなんじゃ?何をすればいいんじゃ?」
あ、そうでした知らないんでした。




