読書をしたいけど、本がないらしい
うーん、なんか本読みたいな。
ゴンが番堅としてやってきて数日、特にキングゴーレム討伐隊だとかなんとかがやってくることもなく、平和に暮らしていた。
それでふと思い付いたんだけど、この世界に関する何か情報を得られる本を読みたい。
前世ではゆっくり本を読んでる暇もあまりなかったからなぁ。
薬の調合もだいぶ落ち着いてきたし、薬草をこねこねする日と、本を読みふける日とがあってもいいよね。
よし、思い立ったが吉日生活だ。今日は本を買いに行こう。
いや待てよ?ビビア村ってそういう本を売ってるのか?
なんかあまり期待出来なさそうなんだけど……
ま、いいか。とりあえず行ってみよう。うん。
「本を売っている店ですか」
というわけでやってきました、ビビア村のギルド。
リーシャに聞いた方が手っ取り早いだろう。
「そう。世界の歴史とか、魔法書とか、なんかそういうの」
「うーん、私はあまり本を読まないので、分かりませんね……
それに、ビビア村の人達が本を読んでるところも見かけませんし」
なんと……
いや、むしろ納得か。古書読んで落ち着いてる姿なんて想像できないもんな。
むしろ一ページめくって居眠りしてる方が容易に想像ができる。
「売ってる店は知りませんけど、このギルドの地下に本を読める場所ならありますよ?
ギルドが管理しているので、売ることは出来ませんが」
え、マジか。
もうこの際、図書館的な感じでもいいか。本の貸し出しをやっていればなお良し。
「ただ、この村に置いているのは本当に初歩的な本と言いますか……
あまり専門的な本は置いてませんよ?」
「あー、そうなのか。まぁそれでもいいかなぁ、それって貸し出しとか対応してる?」
「えーっと、ギルドに登録していただければ」
「あ、じゃあいいです」
まったく、こないだも散々断っておいたのにまだ言うかね。
「あーっ!違うんです、待ってください待ってください!
これは本当に、登録していただかないとダメなんです!」
なぬ?
「その本が置いてあるのがここの地下一階ですので、身分証明のために、ギルドに冒険者登録をしている方でないと、司書スペースまで入れる訳にはいかないんです。
もちろん、コージさんが悪い人ではないってことは、私が知ってますけれど……」
いつもと違い、少し申し訳なさそうにリーシャが説明してくれたのだが、他の村や街も含めて、各ギルドには司書スペースのある階層があって、そこにはギルド創設の歴史や、モンスターへの対応策や、モンスターに街が襲われた時の避難所などが書かれている本も置いてあると。
で、そういった本を賊などに読まれないよう、ギルドの一階、つまり万人が出入りできる階以外の階層(主に地下の階層)に司書スペースを置き、登録している者以外は読めないように対策を取っていると。
ビビア村のギルドには滅多に人がこないし、唯一の職員である特権を利用して、黙認することは出来なくはない。が、もしタイミングが悪く他の要因で何かが起きた場合、真っ先に俺が疑われることになると。
「……申し訳ありません、こればっかりは、どうしようもないです」
「あ、いや、そんな顔しないでくれよ。そういった理由があるのなら仕方ないのは分かるしさ」
ギルドを守るため、ひいては村の人達を守るためにそういう決まりがあるなら、それは従わないといけない。
うーむ、仕方ない、諦めるか。
「ここから一番近い、イリスという街なら古書店があると思います。そこそこ大きく繁栄した街ですし。
牛車で約四日、馬を走らせても二日はかかりますけど」
遠いな!しかもそこが一番近いのかよ!
飛んでいけば馬より早く着くかなぁ?
いや、道がわかんねぇ……最初は道を知ってる人と行った方がいいだろうな。
うーーーん、仕方ない。
普段と違い、真面目に説明してくれたリーシャには丁寧にお礼を言い、自宅へ帰ってきた。
どうしよっかなー、時間は無限にあるんだから行ってもいいけど。
あ、魔族界って本置いてたりしてないかな。
なんかあったらいつでも言えっつってたし、リコルに頼ってみようかな。
いや、どうやって頼るんだよ、連絡手段がねぇよ。




