番犬ならぬ番堅が出来たらしい
リーシャのめちゃくちゃな勧誘をかわし、料理屋が軒を連ねる一角にやってきた。
リーシャの話によると、さすがに都心部のような凝った料理は出てこないが、使っている食材が美味しいため、どの店に入っても美味しい料理が出てくるらしい。
よほどのことがない限り、無限に近い時間をあの家で過ごすんだから、この村にはしばらくの間、通うことになるだろう。そのうち全店入ることになる。
とりあえず今日は適当でいいや。
「オムライスか……いいな、ここにしよう」
フィーリングに身を任せ、店の外に置いてあるメニューにオムライスが載っていた店に入る。
「らっしゃい!見かけない顔だね、ゆっくりしていきな!」
店主らしきおっちゃんも元気で愛想も良さそうだ。
水を飲みながら、机の上のメニューに目を通す。
あまり種類はねぇな。
オムライスに肉野菜炒めに日替わり定食と、あとはサイドメニューか。
よっし、ここは初志貫徹でオムライスを頼もう。
「おっちゃーん!オムライスひとつー!」
「あいよー!兄ちゃん元気いいね、サービスで豚汁つけてやらぁ!」
「まじで?ありがとうおっちゃーん!」
よっしゃここの店は当たりだな!
「おっちゃんごちそうさまー!」
「おう、またこいよ!」
結論から言おう。
くっそ美味いぞここの店。
そもそも食材が美味いってのは本当だったな、サイドメニューにあった漬け物も頼んでみたけど、それも美味かった。
オムライスの卵もふわとろで、中のケチャップライスも程よい味付け。サービスでついてきた豚汁も、懐かしい実家の味がして最高だった。
都会にある高級な有名店とは違う、安心感のある美味しさがそこにはあった。
いいな、また来よう。ここの店は全メニュー制覇しよう。そうしよう。
ああー!しまった、あのオムライスの作り方とか聞いておけば良かった……
さて、当面の稼ぎ場所は見つかったし。
稼いだお金の使い道も見つかったし。
今日のところは帰るかな。
帰ったら少しだけ薬草を取りに行って、調合してから寝ようかな。
お昼寝セラピーは出来なかったけど、今日は充実した一日だったな。
そういえば、ゴンはちゃんと帰れたのかな?
ただいま我が家。
おかえり我が家。
今日も楽しかったよ我が家。
食後の腹ごしらえがてら歩いて帰ってきました。
食べてばかりで運動しないと、ぶくぶくと太ってしまうからな。
愛しの我が家の隣には、でっかいキングゴーレムが佇んでいた。
お、ゴンいるじゃん。無事で良かった良かった。
「オカエリ」
「ただいま、ゴン」
「セワナル カワリ イエマモル」
「お、おお?うちを守ってくれるのか。ありがとうな、ゴン」
これは、番犬みたいなことをしてくれるのだろうか。
ぶっちゃけ何かに襲われるようなことはないと思うのだが。
まぁ、せっかくの厚意だしな、慎んでお受けいたしまする。
我が家にガードが出来ました。
こりゃ堅いガードだぞー、デカイしな。
頼りにしてるぜゴンよ。
あれ?でもこいつ、戦うの嫌いなんじゃ。
ま、いいか。




