どうやら転生するらしい
「ただ、今まで暮らしてきた世界とは、少し違う世界になるんです。
平たく言うと、ファンタジー系のRPGのような世界ですね」
およよよ?ますます聞いたことあるぞ?
あれか?何か一つ望むモノを持ち込めますー代わりにこの世界を救ってくださいーお願いしますーとか、そういうやつか。
んでこの女神様を持ち込みますーってやつか。
なるほどなるほど。あれ、面白かったなぁ。
め○みんは俺の嫁。
「今まで暮らしてきた世界に、そのまますぐ転生はちょっと難しく……
なので、その代わりと言ってはなんですが、その世界であなたの望む生活が出来るようにします」
「なるほど。
それで、つまるところその世界で何を達成すればいいんです?」
もう思いきって聞いてみよう、うん。
わーい異世界転生だーなんじゃこの化け物ー!?!?
みたいな展開はごめんです。
「達成……?あっ!
あのー、そういったものではないです。特に滅ぶ危機が迫っているような世界でもないですし」
「え?」
「所謂、あなた方の世界のゲームで言うところのモンスターや魔王?ラスボス?的な存在はいるにはいますが、人類と魔族との戦争真っ只中とかそういうのではないです、はい」
あぁ、そうなの。
まぁそれはそうか、そのパターンだと完全にパクゲフンゲフン、オマージュ作品だもんな。
「それなら、なんつーかこう、のんびりと過ごしたいです。
ちょっと人里離れた所に居を構えて自給自足して。
あぁ、薬草とか?で薬を作って、たまに近くの村に売りにいったりもしてみたいな。
よくある、ギルド?みたいなのに登録してモンスター倒す日々とかってのはちょっと……」
自慢じゃないが、男に生まれながら力には自信がない。
運動なんかは出来なくもないけど、やりたくはないインドア派だったし。
殴り合いの喧嘩とかもしたことなかったなぁ。というか喧嘩自体をしたことがないな。
世の中に一つ言いたい。
男は力仕事、みたいなのは本当に勘弁して欲しい。
なんだろう、女はこうあるべき。男はこうあるべき。っての、もうやめませんか。
男女関係なく、個々で得手不得手がある訳ですよ。
まぁそんなこと言っても、もう誰にも届かないし。仮にそういうのがなくなったとしても、もう俺には関係のないことなんですがね、えぇ、死んでしまったので。
HAHAHA
「なるほど。それでしたら、一般家庭に産まれるというよりも、そのままポンと転生した方がやりやすそうですね。
んー、でしたら不老不死ってことにしましょうか。それと、ある程度能力を持った状態で転生した方がいいでしょう。
今のまま人里離れた自然の中で新たな人生をスタートすると、すぐに魔物にやられそうですし」
「あ、それはありがたいです。さすがに生まれ変わって五秒で死ぬなんてのは勘弁です」
「分かりました。人里から少し離れた小さな山で、ゆっくりと過ごしてください」
「あ、それと。もし出来るのなら、動物とか自然とかに好かれやすいとかに出来ませんかね?」
出来ることなら犬や猫、あと小鳥とかも飼ってみたかったんだ。
観葉植物なんかも育ててみたかったし。
忙しくて枯らしてしまったり、ろくに散歩も行けなかったりな未来しか見えなかったので、実行に移すことが出来なかった訳だけれども。
もし出来るのならば、そういった自然に囲まれて、小動物と一緒に過ごしてみたい。
「分かりました。スローライフをご堪能ください。
では、いきますよ」
女神様がどこからか小さな杖を取り出し、軽く振る。そうすると、杖の先から柔らかな光が溢れ出し、俺の身体を包み込む。
良かった、こういうアニメにありがちなポンコツな女神とかじゃなくて。
「はい、ありがとうございます。
女神様はなんてお呼びすればいいですかね?」
「ふふ、第一の人生、お疲れ様でした。
私はリリィと言います。輪廻を司る神です」
リリィさん、ありがとう……ゆっくりと休みます。
次第に意識が遠退いていくのを感じる。良い気分だ。
ふかふかのベッドに横たわり、眠りにつく瞬間の微睡みのようだ。
「あっ、間違え……」
女神様の声を子守唄に、俺は眠りについた。
蛇足ですが、作者も力仕事が苦手なタイプです。
職場にいる年下の、しかも特に腕っぷしの強い訳でもない痩せ型の女の子に、腕相撲で負ける程度です。