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実はいい子だったらしい

「な、なんか……嫌がってません?」


「うん、そう見えるね。あからさまに。

まぁ出来ることなら俺らも戦いたくはないんだけど」


リーシャもキングゴーレムの様子がおかしいことに気付いたようだ。

まぁこれで気付かなかったらどんだけ鈍いねんって話になるんだけど。


と、キングゴーレムの方を見ると、今度は頷いてる。なんかめっちゃ頷いてる


あれ?もしかして


「あー、もしかして、こっちの言葉分かるの?」


もっかい頷く。ぶんぶんと頷く。

ほう、言葉が通じるんなら平和的解決が出来るかな?


「リーシャ、モンスターが人間の言葉を理解したりってある?」


「そういえば、モンスターの中にも知能や理性をもつ個体がいるって聞いたことがあります」


「ふむ。

えっと、キングゴーレムさん?は言葉を話すことは出来る?」


これで会話が出来れば万事解決、と思ったのだが、今度は少し残念そうに頭を横に振っている。


うーむ、さすがに会話は出来ないか……


筆談とかなら出来ないかな?


「んーっと、文字って書けたりする?」


お?今度は頷いてくれた。

よっし、それならなんとかなるかもしれない。


キングゴーレムが指先を地面に近付け、ゆっくりとなにやら書いている。


「モジ スコシ カケル」


「おおお!」


「す、凄い……私もこんな体験は初めてです……」


よっしゃ、今のところ敵意はなさそうだし、なんとか穏便に済ませられるような気がしてきたぞ。




こちらの言葉にキングゴーレムが文字で、キングゴーレムの文字にこちらが言葉で。

少しの間会話(?)をしていたのだが、普段は滅多にBランクのモンスターなど出ないこの高原に、キングゴーレムが現れた理由が分かった。


元々あまり好戦的ではないキングゴーレムなのだが、住み処の砂原の近くにある小さな山に、最近になってバカ強い人間が住み着いたと。


で、怖いからそれを避けるように逃げていて、この高原に迷いこんできたと。


出来るだけ他のモンスターや、たまーに通りがかる人間に迷惑をかけないようにしていたけれども、図体がデカイせいで上手くいかなかったと。


それで、あの商人のおじさんと運悪くかち合ったと。

牛を傷付けてしまったのはわざとではなかったと。




それ、間違いなく俺のせいやないかーい。


急に正体も分からんチート能力を持った人間が出てくるわ、しかもその人間の家に魔族のリコルがくるわ。

……それは怖かったろうなぁ。


あ、だから俺が商人のおじさんを庇おうとしたときに逃げてったのか。


「あー、それ多分、俺だよなぁ。

えっと、俺は無益な戦いはしたくないし、そもそも荒事が苦手な性格だから。

その、元の住み処に戻っても大丈夫だよ」


「ホント タタタカワナイ」


タが一個多いな。


「うん、戦わない。

まぁ山の自然を破壊しようとしたり、山に住んでる動物たちに怪我させたりしようとするようなモンスターは排除するけど。

君はそんなことしなさそうだしね、大丈夫だよ」


「ワカタ モドル ウシゴメンネ」


いい子やなぁ。

いい子?いいモンスター?やなぁ。


いやーでもこれで、無事戦闘をせずに問題解決だ。

良かった良かった。




あ、待てよ?


「なぁ、普段何を食べてるんだ?」


「タベル シナイ」


へぇ、食事って文化がないのかな?

まぁゴーレムが食べそうなものって、せいぜい砂とかだもんな。


うーむ、それなら。


「なぁ、だったら俺の家の近くにいたら?さすがに家の中には入れないけど。

確か商人のおじさんが雇っていた護衛が逃げ出したんでしょ?

だったら今頃、そいつらが自分の街とかに戻ってギルドに報告してるかもしれないからさ」


もしそうなってしまうと、キングゴーレム討伐隊とかが押し掛けてくるかもしれない。


別にモンスターの仲間になるつもりはないけれど、全く敵意のないモンスターが人間の都合で討伐されるのは、ちょっと可哀相過ぎる。


ってか、俺のせいだしな。


「こっちとしても、特になにか世話をする必要がないなら、別に好きにいてくれて構わないし。

そっちも、とりあえずは身を守れると思う。人間の近くに住んでいて、意志疎通が出来るなら脅威の対象だとは思われないだろうしさ」


「オセワ ナル ゴン イウ」


いや、世話はしねーけど。ってかする必要がないでしょゴンさんとやら。




何はともあれ、一件落着だな。

戦闘を行わずに、今後の商売先であるビビア村を守ったという実績をゲットだぜ。

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