多重労働の子がいるらしい
「キ、キングゴーレムがですか!?」
村長さんに会う前に、ギルドへ報告があるからということでついてきた。てっきり逃げ出した護衛のことかと思ってたけど。
あ、そうそう、この村にも若い働き盛りな年代の人がいました。
受付嬢ってやつですな。
カウンターに座って暇をもて余していたみたいだけど、キングゴーレム出現の報告を受けた途端、血相を変えて身を乗り出した。
「それはマズイですね……急いで緊急の依頼を近隣の村へと出さないと……」
どうやらこの村には、キングゴーレムなるものに太刀打ち出来る人がいないらしい。
まぁそりゃそうか、そもそも冒険者らしき人がいないもんな。
ちなみにですがこの子、めっちゃ可愛いですね、うん。
透き通るような白い肌にふっくらとした唇、少し青みのあるぱっちりした瞳に、サラサラな髪質のポニテ。
ほどよく引き締まったスタイルに、その腰には立派な剣が……って武器持ってるやないかい。
この世界のギルドの受付嬢は、護身術でも習っているのだろうか?
まぁ屈強な冒険者からいちゃもんつけられたら、丸腰じゃ対抗する術がないもんな。
ってその剣で対応すんの?冒険者がバッサリいっちゃうよ?
「えーっと、このギルドに登録してる冒険者とかっていないんですか?」
一応聞いてみよう、うん。
キングゴーレムはひとまず置いといて、近くの広原にはモンスターらしきものもいたしな。
さすがに戦闘員が全くいませんってことはないだろう、モンスターに村が襲われたら、戦える人がいないと終わりだもんな。
今はたまたま村にいないだけで、ちょうど何かの依頼で出てるだけかもしれないしな、うんうん。
「いないですね」
おおぅ……
「この村でモンスターと戦えるのは、私ぐらいです。私がこのギルドの、受付嬢兼ギルドマスター兼道具屋兼ガードとしていますので。
ただ、私もこの辺のスライムやブル、キラータイガーまではなんとかなるのですが、キングゴーレムなんて無理です……」
おい。
ちょっといくらなんでも、この子一人に比重がいきすぎてるのでは……?
よくそんな労働環境に身を置いたな。
この子の名前はリーシャ、元々は冒険者として旅をしていたのだが、二年ほど前にこの村に流れ着き、それ以来このギルドで受付嬢兼ギルドマスター兼道具屋兼ガードとして、ビビア村を守っているらしい。
絶賛恋人募集中とのこと。そりゃこの村にゃ若い男がいなさそうだもん、出来る訳ないよなぁ。
ついでにモンスターについても色々と教えてくれた。
大まかに五つのランクに分けられており、A~Dとその上のSがあると。
広原で見た不定形や猪や虎はスライム、ブル、キラータイガーと言うDランクのモンスターだと。
その他にもモンスターはいるが、ビビア村の近辺では基本的にDランクのモンスターしかおらず、リーシャはCランクのモンスターまでなら一人でなんとかなるらしい。
で、問題のキングゴーレムだが、こいつはBランクのモンスターで、リーシャでも一人じゃ無理だと。
そもそも、この辺りでBランクのモンスターが出てくるなんて滅多にない。少なくともリーシャがこの村にきてからの二年では初めてのことらしい。
なんでこのタイミングでそんなもんが出てくるかなぁ……
「お願いしますコージさん!この村を助けてください!」
やっぱりなー、絶対こうなると思ったわ。




