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黒の殺戮者たち  作者: 蒼猫
11/13

10 スキルの存在

陽悠ら4人の中で一番最初に動いたのは永遠だった。

永遠は陽悠の前に立ち周囲を警戒している。

その手には苦無が握られており、少しでも情報を得ようと神経を研ぎ澄ましている。


「…来る」


永遠がそうつぶやいた次の瞬間、黒い物体が永遠の目の前に飛び込んできた。

突然の事だったにもかかわらず、永遠は陽悠に危害が及ばないよう黒い物体を横に流す。

黒い物体の大きさは3メートルほど。

獣に近い形をしてはいるが、地球にはいない生物の形だ。

一番最初に出会った馬車を襲っていた生物がまとっていたオーラと酷似している。

陽悠たちも戦闘態勢に入る。

陽悠は銃を構え、レイザ達は拳を構え次の攻撃に備える。

しかし、永遠は陽悠の前に戻り、苦無を下ろす。

陽悠は疑問に思ったが、次の瞬間にはなるほどというように少し口角をあげ、銃を下ろす。

理由は簡単だ。

見たからである。


――黒い物体の後ろに刀をもって立つ、兄弟(とわ)の姿を。


「ちょっと~俺のいない間になにしようとしてくれちゃってんの~」


口調は軽く、口角は上がっていて笑っているようにみえるが目はまったく笑っていない。

次の瞬間、黒い物体はその場で倒れた。

この場にいる者で、翔愛の斬撃が見えたのは永遠だけだろう。

ルージュとレイザが驚きで目を見開いている。


「翔愛、速いですね?もう終わったんですか?」


驚いている2人を余所に、陽悠は翔愛に質問する。

まるで、さっきの物体はいなかったかのように。

翔愛は兄弟の中で一番感情に左右される人間だと言っていい。

数多ある感情の中で、2番目に厄介なのが『怒り』だ。

翔愛の怒りのゲージは5段階に分かれていると兄弟の中で認識されている。

今回はそれの3段階目に分類されるだろう。

1段階目は、ちょっと怒ってる時。主に、兄弟の中で起こりやすいものだ。

2段階目は、まあまあ怒っている時。半殺し程度で終わる。

3段階目は、だいぶ怒っている時。相手が殺されれば収まる。

4段階目は、マジで怒っている時。自分か、兄弟かが殺せば収まる。

5段階目は、ヤバいくらい怒っている時。相手を自分の手で殺し、その相手の周りにも手を下す。一種の暴走状態と言っていい。自分で止まることはできないのだ。過去に1度だけ、この状況に陥った。

3段階目以上は、事後しばらくイライラしているので、あまりその周辺の話題に触れず、触れそうになった場合は話を逸らすことが兄弟の中で行われている。

 ちなみに、冒険者ギルドで起こった問題は4段階目であった。

あの時は、兄弟が周りにいたのと、陽悠が問題を片づけたことがあり、たいして暴れなかったが、怒りゲージは4段階までいっていたと言える。


「それがさあ~俺たちほんとに要らなかったんだよね~ちょっと木を倒すだけで終わっちゃった」


そうして、翔愛の後ろから、作ったであろう荷車を引いたカイと月冴が出てくる。


「聞いてよ!カイはさ!スキル持ってるんだって!」


翔愛は話したくて仕方ないと目をキラキラさせ、陽悠に駆け寄る。

スキル?と陽悠が繰り返すと、自慢げに話しだした。

曰く、スキルを持っている者は少なく、貴重なんだとか。カイの場合、生まれた家が物を作る仕事をしていたため、親のやることを見たり、真似をしたりしているうちに、スキルを手に入れたのだとか。

しかし、それだけでスキルを手にできる者はあまりおらず、人それぞれなのだという。スキルを手にしている者は数十年間物を作るなどしてようやく手に入れるのだとか。しかし、長年やってきたがスキルを手にできずに一生を終える者もいるという。というより、そういった者の方が多いという。


その話を聞いた永遠が不思議そうに首をかしげる。陽悠がどうしたのかと尋ねると、そんなに貴重なスキルを持っているなら、カイはもう少し高かったのではないか、という話だった。

陽悠は、恐らくですが、と自分の考えを述べた。


「スキルを手にするものは貴重であり、手に入れるには数十年かかるというのが一般の常識なのだとしたら、そういった者が奴隷になることはほとんどないでしょう。スキルの有無を確認する人もしくは道具はほとんど出回ってないのでは?もしくは、カイは奴隷になりたてほやほやでしたし、けがもしていました。早く売ってしまいたいという気持ちがあり、スキルの確認はしなかったのかもしれませんね。何にしろ、あそこは少し変でしたのでもう二度と買い物はしないでしょう」


最後の言葉に引っかかったのか、月冴はあの店変だったのか?と陽悠に尋ねる。

陽悠は、変でしたよ、と言い、レイザに視線を向け、ですよね?とレイザに返答をもとめる。

レイザは、言いにくそうに頷き、話し始めた。


「あのお店は所謂、闇奴隷店です。色々なところからさらってくるなどして経営しています。もちろん違法です。借金や犯罪などで奴隷になること以外禁止されていますから。奴隷を売るお店はその奴隷が何者で、奴隷になるようなことをしているかや、スキルを持っているかなどをしっかり調べなければいけませんし、怪我をしている場合は、治療行為をする義務があります。スキルの件も、しっかりとした奴隷店では、調べる人や道具があります。しかし、そういった法が守られることは少なくいのです。特にこの辺は地方なので…」


それを聞いた翔愛が、紹介されていったお店なのにね、と呟く。

それに対してルージュは、そういう商法なのだと説明し始めた。


「しっかりと法を守った奴隷店はあのお店の先にありましたの。奴隷店は紹介されていくことが多いですわ、特に地方では。あの場所は特にやりやすかったでしょうね。曲がり角を曲がった先としか紹介されようがありませんし、しっかりとした奴隷店はカーブで見えづらかったようですから。まあ、営業妨害で訴えられてはたまりませんから、ある程度稼ぐとすぐに別の場所へ移動しますわ」


「え、まじかあ。騙されたわ~」


説明を聞いた翔愛は笑いながらそう言った。次会ったら殴る、そう心に決めて。


「しかし、スキルですか。一度見てみたいですね」


陽悠が完成した荷車を見て言うと、翔愛はぜひ見るべきだと期待の眼差しでカイをみつめる。

カイは戸惑いながら、荷車を作る際に余ったであろう木の欠片を出した。

カイは全員の視線を受けながら、スキルを発動する。


「『創造』」


カイがそう呟くと、手に持っていた木の欠片があっという間に馬の形に変化した。

それを見た陽悠は、すごいですね、と口にしようとした。

しかし、それは叶わなかった。


突如、ひどい頭痛に襲われたのだ。

異変に気付いた月冴が駆け寄り、どうした?と尋ねるが、陽悠は顔を顰めて首を横に振る。

すると、陽悠の頭に声が響いた。


――スキルの存在を確認しました

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