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帰還勇者のための第二の人生の過ごし方  作者: 一条由吏
超感覚探偵のダンス
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第23話 ソロの部 その4

お読み頂きましてありがとうございます。

「何故、お母さんなのよ。お姉さんでしょ。」


 僕の母親と同じ年代の癖にどの口で言うんだろう。


「球団社長は僕のこと、なんて言ってました?」


「なによ。貴方、COOと同じなの。道理で私に靡かないはずよね。」


「もうそれはいいですから。」


「ええっ。付き合ってよ。無視されたら泣くわよ。・・・ご両親が亡くなっているのは聞いているわよ。でもそれ以上は何かを知っていても話さないわよ。あの人は。」


 球団社長はそういう人だからなあ。


「これが両親の生前の写真です。」


「何よこれ。何で私が写っているのよ。」


 僕が地元で行われた甲子園の壮行会のときの両親の写真を見せる。これが僕に取っても生前最後の姿になった。


「本人でもそう思いますよね。僕は貴女と初めて会ったとき自分の記憶を疑いました。都合の言いように記憶が書き換わっているのだと思いました。でも、この機会にお願いしてみようかと思ったんです。脅迫しているみたいですが、僕のお母さんになってください。」


「わ、わたし、母親らしいことなんか何も出来ないわよ。料理も作れないし、掃除もできない。」


 甲子園の夏の大会の決勝戦に飛び込んできた訃報に動揺した僕は大乱調を起こし惜敗に屈した。当時は恨んだが、プロ野球選手になれた今は後悔の雨あられだ。


 自己満足なのはわかっているが一生このわだかまりを抱えて生きていきたくはない。心を軽く出来るのならば、どんなことでもやってみたいのだ。


「大丈夫ですよ。僕がみっちり仕込んであげますから、伊達に中学高校とスポーツ推薦で1人暮らしを経験してませんから。」


 そのとき、玄関のほうでチャイムが鳴った。


 主宰と2人で玄関へ出て戸を開ける。


「中井さんに中谷さんに中澤さん。そんなに大荷物を持ってどうしたの?」


 玄関先に主宰直属の弟子の3人がアタッシュケースを抱えて立っていた。


「尚子先生! 那須くんと同棲するって本当ですか?」


「独り占めはズルいじゃないですか。」


「那須くんにツバを付けたのは私たちのほうが先なんですよ。」


 ツバって・・・1回デートしただけなのに。意外にも映画にカラオケに観劇と健全なデートだった。ただ、荻ダンススクールの件で走り回っていた所為でいずれも途中で寝てしまったのだが理由を言うと顔を赤らめて支持してくれたくらいだ。


 そのときに謹慎中の主宰のことをお願いしていたのだが、変な風に伝わっている。


 もしかしてこれは貞操の危機ってヤツではなかろうか。主宰1人なら押し倒してきても笑って誤魔化せるつもりだったが、4人掛かりで押さえつけられたら、ケガをさせずに逃げ出すことなど出来そうにない。


「丁度良かったわ。今、坊やと話していたところなのよ。私に母親になって欲しいんだって、だから4人で母親になりましょうよ。貴女たちもそういうプレイが好きよね。」


 皆さん主宰と同じ趣味のようだ。類は友を呼ぶのだろうか。


















「何を遠い目をしているのよ。」


「良くあれだけの期間、貞操の危機を乗り切ったよな。」


 風呂場に乱入されて鍵を取り付け、部屋に乱入されて裏の番頭さんの家に引っ越した。なにせ基本襖しか無いので入り放題だった。


 身体を触るようなセクハラは始終あったし、ワザと下着姿でウロウロされた。旅行に行ってみれば混浴温泉だったり部屋付き露天だったりセクシーなショーを観れる旅館だったり。


「本当に無事だったと思っているの? 貴方って熟睡すると何をされても気付かないのよ。」


 確かに地震があっても寝ていることの方が多い。


「嘘ですよね。裏の家に引っ越してからは寝込みを襲われたことなんか、数えるほどしか無いはず。」


 数えられるほどあったことの方が驚きだが、ときおり暑くて寝苦しいときに窓を開けたまま寝たことがあったのだ。


「あれねぇ。美名子の家から隣に行ける隠し扉があるの。知らなかったでしょ。」


「それは本当ですかっ。」


 そんな馬鹿な。寝込みを襲われたときに触覚で空気の流れを読んで何処にも出入口が無いことは確かめたはずだ。


「嘘よ。そんなのがあったら家宅捜索のときに見つけられているわよ。」


 ああビックリした。もう少しで自分の能力を疑うところだった。


「そうですよねぇ。」


「でも貴方忘れてたでしょ。あの屋敷の持ち主は私なのよ。あの3人が居ないときに何度マスターキーを使おうと思ったことか。」


 そういえばそうだ。あまりにも根本的過ぎて忘れていた。まあ尚子さん1人なら大丈夫だよな。


「それで使ったんですか?」


「まあね。キスしても、のしかかっても、全く反応しないんですもの。つまらなくて止めたわよ。」


 キスは少し油断すると簡単に盗られてしまうので貞操うんぬんは考えないことにしている。


 反応って寝ている間に何をされたんだろう。考えたく無いな。


 そのときカフェの自動ドアが開く。飼い主を振り切って入って来ようとする犬が時折いるので自動ドアのセンサーは敏感にしてある。


「いらっしゃいませ。中井さん。今日はどうしたんですか?」


 尚子さんの弟子の1人だ。中井さんはあのまま山田ホールディングスに入り、高層マンションに住んでいるのだ。このドッグカフェを贔屓にして頂いていてランチの常連さんの1人になっている。


 でも朝は滅多にお目にかからないのだけど。


「尚子先生も居たのね。丁度良かったわ。優子と恵子が明日こっちに来るので皆で集まろうということになったのよ。ここを夕方から貸し切りに出来ないかなと思って寄ってみたのよ。」


 中谷優子さんと中澤恵子さんは既に引退して悠々自適の生活を送っている。


「インストラクターの皆さんは全員で何人になりますか?」


 確か元社員の2人を含めたインストラクターの合計が25人で中井さんと中谷さんと中澤さんと尚子さんと尚美さんで30人か。余裕で座れそうだ。


 うちのカフェは犬と一緒に食事をする事ができるので2人掛けとカウンター席が基本だ。それぞれの席にはリードを取り付けられるポールも立っているので余裕がある作りになっている。


「それがアシスタントも来たいと言っているのよ。ここのキャパって50人くらいだよね。」


 一部の席は取り外し可能で同じ犬種の集まりにも使われているから立食形式にもできる。でも40人が限界だ。あとはテラス席と3階のジャグジーにそれぞれ10人くらいだ。


「ジャグジーとテラス席を開放して立食形式で良ければ、60人くらいは入りますね。犬が苦手という人は居ないでしょうね。貸し切りにしても犬連れのお客様のほうが優先ですので、融通してくださいね。」


 まあインストラクターは女性しか居ないから、びっしりと女性客がいたら、男性客は怖がって入ってこなさそうだけど。


全ての謎が解き明かされる?最終話は月曜日に更新予定です。

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【続編】帰還勇者のための休日の過ごし方もよろしくお願いします。
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