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帰還勇者のための第二の人生の過ごし方  作者: 一条由吏
超感覚探偵のダンス
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第11話 ヒップホップの部 その1

お読み頂きましてありがとうこざいます。


もちろん連続殺人事件に発展します。

「はぁっ。もう一度言ってください。」


 世田谷芸術劇場で開催される荻ダンススクール20周年記念発表会の前日にせまっていたその週の土曜日、何故か人気投票で選ばれオールスターゲームに出場した僕は、その余韻に浸っていた。


 3打数2安打、数字的には好成績だったが力の入りすぎた僕は3回ともドーム球場の天井にぶつけるという前代未聞の成績を残した。初めは天井に挟まり認定二塁打、2回目は落ちてきて単打、最後は打球から計算されて捕球されてアウトだった。


 しかも投手も2回3回7回と前の回に投げたセントラルリーグの投手のコピー投球フォームを打者1人ずつに対して披露した。打者と同リーグの投手だった所為か結果は3打席1安打1四球と散々だったが受けたから、まあ良しとしよう。


「だから、番頭の谷田が殺されたんですよ。関係者は残してあるので至急世田谷芸術劇場に来ていただけませんか?」


 また荻ダンススクールの関係者が殺されたと聞いたとき、真っ先に思い浮かべたのはあの美しい雪絵さんだった。他にも殺されるような恨みを買っている人間は沢山居る。僕自身もそうだ。いきなり後継者という位置に持ち上げられて雪絵さんや多絵子さんからアプローチされている。


 荻ダンススクールの関係者から襲われていても不思議じゃない。


 だが番頭さんなのか。あの人畜無害そうな。利害関係なんて全く無さそうな。あの番頭さんが殺されるなんて思いもしなかったのだ。


 今日は朝から晩までリハーサルが行なわれていたのは知っていた。延べ出演者が2000名とも言われる舞台なのだ。ゲスト扱いの人間は当日の朝にリハーサルが行われると聞いていた。


 だがオールスターに選ばれた僕は参加していなかった。特別に当日の朝に立ち位置の確認だけ行われると聞いていたのだ。どうやら刑事さんはオールスターの試合終了を待っていたらしい。僕は球場前に止まっていた覆面パトカーに乗り込んだった。


     ☆


 パトカーの中で新田巡査部長から説明を受けた。


 今回も凶器は庖丁だった。番頭さんはお腹を刺されていたそうだ。


 遺体が発見したのは雪絵さんで午後6時30分過ぎだったという。出演者全てのリハーサルが終わり、後は外部から呼んだ司会役の人間との最後の打ち合わせのため、番頭さんの居る第15控え室に集まるところだったという。


 発見当時は絶命した直後だったらしく身体はまだ暖かったという。もしリハーサルが時間通り午後6時に終わっていたらまだ生きていたかもしれないということだった。


「その控え室はどんなところにあるんですか?」


「楽屋口の真横にある。被害者はそこで備品の整理と集金をしていたそうだ。」


「出演料ですか?」


 それならば、総額数千万円に登るというから強盗の可能性もある。


「違う。出演料はインストラクター経由で既に徴収済みだ。フィナーレTシャツ3000円だそうだ。出演者500名トータル150万円だが昼間に一度預けているから手提げ金庫には釣り銭を入れても20万円ほどしか残って無かったそうだ。」


「それは偶然そうなっただけで、荻ダンススクールの生徒や元生徒などかなりの広範囲の人間がここに多額の現金があると思い込んでいる可能性はありませんか?」


「それは無い。5年ごとの記念発表会以外に各カルチャースクールの発表会でも同じようにフィナーレTシャツを作っていてリハーサルのときに集金しているらしいがそのときも途中で一度銀行へ預けているそうだ。」


 どこで知り合いに会うかわからないところで強盗しようなんて無理があるか。


「とにかく、誰かが第15控え室に入り込み番頭さんを殺害して楽屋口から逃走したということでいいのですよね。」


 なにか歯切れの悪い新田巡査部長に突っ込みを入れてみる。


「それが密室のようになっていて、しかも被害者はダイイングメッセージらしきものを残しているんだ。」


「密室とダイイングメッセージですか。まるで推理小説のようですね。密室はともかくダイイングメッセージなんて殺人事件のときには結構あるものなんですか?」


「無いな。それこそ、犯人の名前を書き残したくらいならあるらしいんだが、大抵近くに居た犯人に持ち去られてしまうのが落ちだ。今回のようにわけのわからんものを残そうとするなんて。」


「でもあの番頭さんは推理というより、いろいろ妄想を働かせるのが得意だったからかもしれませんね。ところで番頭さんは何を残したんですか?」


「ポンポンだよ。ポンポンを抱きかかえるようにしていたそうだ。」


「ポンポンって、あのチアガールが手に持っているものですよね。・・・うーん・・・ポンポンに名前が書いてあったとか?」


「君っていいところを突くな。名前は書いてあったんだが、予備用に置いてあるポンポンには寄付した人間の名前が書かれていたんだ。だがそこに書いてあった名前に該当する人物はリハーサルには来ていなかったんだ。」


「そうですか。じゃあ、密室のほうはどうなんです。楽屋口に近いということは他に窓とかもあるんじゃないですか?」


「あるにはある。だがそこも鍵が閉まっていたんだ。ほかには通路にあるドアしか無いんだが、その前では20分ほど前から雪絵さんが化粧を直していて誰も控え室に入ったものは居ないと言っているんだ。」


「その雪絵さんがその場所に居たという証明はできているんですか?」


「何、雪絵さんを疑っているのか?」


 相変わらず新田巡査部長は雪絵さん擁護派らしい。


「まあ一応、念のため。」


 そうは言っても僕も本気で疑っているわけでは無いのだが・・・。


「ユキエさんは楽屋口の扉を開けて外の街灯で明るいところで化粧をしていて。何人かの生徒さんが帰りがけに気付いて挨拶をしたらしい。今、相手の確認を取っているところなんだが、その間が5分と空いていなかったみたいなんだ。」


 5分間か。5分じゃ刺し殺すだけで精一杯だな。それも番頭さんが絶命したのを見届けないといつ扉から出てこられるかわかったもんじゃない。


 しかも正面から刺し殺して返り血を全く浴びていないというのも不可解だ。もし上手く返り血を浴びなかったくらい一撃で殺せたとしたら、今度は番頭さんがダイイングメッセージを残す余裕なんて無さそうに思える。


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【続編】帰還勇者のための休日の過ごし方もよろしくお願いします。
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