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帰還勇者のための第二の人生の過ごし方  作者: 一条由吏
超感覚探偵のダンス
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第9話 ジャズダンスの部 その8

お読み頂きましてありがとうございます。

「ああ寝たよ。もっとハッキリ言おうかチズとは肉体関係があった。これでいいか。」


「それは奥さまである雪絵さんも愛人の美名子さんもご存知なのでしょうか?」


 新田巡査部長が果敢にも切り込んでいく。どういった反応が返ってくるのであろう。


「さあな俺が他の女と寝ようが寝まいが嫉妬どころか気にもしてないだろうよ。」


 なんだろう。この捨てばちな態度は悪事が露見したから開き直ったんだろうか。


 それとも浮気などお互いさまとでもいうつもりなのだろうか。


 しかも新田巡査部長が『愛人』の美名子さんと切り込んだのに梨の礫だ。僅かに片方の眉毛が動いたのが見えたから気付いていないわけでは無いらしい。


 だがそれさえもどうでもいいと言わんばかりだ。


「お前も気を付けるんだな。」


「何をですか?」


「雪絵という女にハマるなってことだ。」


「勇大さんはハマったんですか?」


「ああ骨の髄までハマってるよ。どんな仕打ちをされても諦めきれない。あまりの態度に何度も何度も無理矢理言うことを利かせてやったが憎しみさえ向けてきやがらねえ。あの女はお前を通して昔の男を見てやがるんだぜ。わかっているか?」


 頭では理解しているつもりだが、これから先何度も来るであろう彼女との接点を全て耐え切れるかというと心許ない。


「わかってますよ。雪絵さんが貴方の奥さんであることや僕がまだ未成年であることを抜きにしても、まるでアリ地獄を前にしたアリのような気分ですよ。」


「未成年だったのか。だから、あの女の誘惑に打ち勝てたんだな。なるほどな。」


 あのときは、あのときは・・・そう、プロ野球選手と一歩を踏み出したばかりで、そんなことを考える余裕が無いと思ったのだ。それは今このときに対しての戒めでしかない。


 それが解けてしまったら僕はどうなってしまうのだろう。まだプロ野球選手にしがみ付いているときは抗えるかもしれない。では故障したときはどうだ、引退しなくてはいけなくなったときはどうだ。


 まだ完全に溺れて何も見えなくなってしまえば楽だ。だが目の前には荻真也という永遠に追い越せない男性が居ることになるのだろう。それが何年も何年も続いていくなんて僕に耐えられるのだろうか。


 そして勇大さんのように美名子さんに逃げて、他の女性に逃げて、逃げても逃げても諦めきれない。そして気狂いになって捨てられるんだ。


「事件当夜もお盛んだったのですかな。番頭さんの話では随分と長い打ち合わせだったようですが。」


「まあな。俺が癒しを求めたら抱き締めはしてくれたな。結局最後まで愛情無しの関係だったけど。」


 悪びれもせずに稽古場でイチャついていたことを告白する。


「何かあったのですかな? 愛情に発展しないような何かが。」


「ああ、いまさら東京で何かダンサーの仕事を世話してくれと言ってきたんだ。彼女が主宰するダンスチームを拡大するには東京で仕事をしているという格が必要だったらしい。」


「ほう。それで一気に冷めた貴方は断った。だが彼女は過去の関係を盾に脅してきた。立場を失うわけにはいかなかった貴方は彼女の言うことを聞くフリをして再度関係を持とうと控え室に誘い出したんですな。そして、そこでグッサリと・・・・。」


「なるほど、一応理屈は通っていそうだな。だが俺には脅される要因が何も無いんだ。雪絵にバラしても美名子にバラしても痛くも痒くも無いからな。」


「では、主宰はどうです? 荻尚子主宰になら話されて困るんじゃないですか?」


 新田巡査部長はユウダイさんの言い訳に納得したのかしてないのか。違う方向から切り込みに掛かる。確かに自分が主宰するダンススクールで乱行により切り捨てられる可能性はある。


 だか彼には雪絵さんの子供が荻真也さんの子供だという隠し玉が残っている。


「何故だ。何故そこで主宰の名前が出てくる。」


 意外にも主宰の名前に動揺する勇大さん。何か僕の知らない事実が隠されているのか。


「いや違うな。そんなことが言いたいんじゃないんだな。俺が主宰に切られる。ああ確かに後継者としては切られたが・・・真の意味では切り捨てられるはずが無いんだ。」


 またまた謎の言葉が続く。真の意味では切り捨てられない。つまり家元は勇大さんの味方だと勇大さんは思っているということ。


 なるほど、家元の弟である真也さんの子供の戸籍上の父親は勇大さんだからそれを我慢して雪緒くんの父親であるかぎり切り捨てられるはずがないのか。


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【続編】帰還勇者のための休日の過ごし方もよろしくお願いします。
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