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魔法の会得と臨死体験

『こちらが今回のクエスト報酬になります』

『あれ、表記されてたのより少なくないですか…?』

『はい…その申し上げにくいんですけど、多少なら狩りすぎて頂いても問題ないのですが…今回の場合は1フィールド分狩り尽くされてしまったのでその後の処理などの経費分を負担してもらう…言わば罰金という形で-8,000イルを+αとさせて頂きました』

『なん…だと…そんなの聞いてなぁぁあい!!』



「どはぁぁぁぁ…結局バイトの日給程度しかもらえなかったぁ…」

ユートはギルドをちょうど出た所でどでかいため息を吐いた。

死にものぐるいでバイトと同等の給料。

溜まっていた疲れにストレスでさらに負担がかかる。

全てをあの金髪少女のせいにしたいが、元はと言えば情報収集や下準備などを怠ったユート自身に原因がある。

だが、魔法の入手方法が分かったのはとても大きい。魔法が無ければまた死にかけてしまう。いつまでも杖1本でモンスターを無双という訳にもいかない。

と、いうわけでさっそくユートは魔法屋に向かった。


金髪少女の話では魔法は1つ約3,000イルで買えるとのこと。初心者にとって良心的な値段となっている。


「ここか…」


魔法屋は例の道具~武器屋の並びに属しておらず、住宅地の中のしかも中途半端な裏道の奥にある。

外見も趣味が悪く、ハロウィン限定で飾られた雑貨屋のような残念な外見だ。

嫌な予感しかしない。

ユートが読んだことのあるファンタジーの話の中ではこういった外見の店の中では主人公がたいてい良くないことに巻き込まれている。


自分の事を主人公だとは思わないけど、うん、危険な香りがする。

だけど…行くしかない!


ユートは思い切ってドアを開け、中へと突入した。



真っ暗だ。闇よりも暗いのではないだろうか。

音も何もない。あるのは自身の感情……あれ?魔法屋、だよな?

手探りをイメージはしてるのだがおかしい、感覚がない。

すると、ふっと声が突然聞こえてきた。


「早くね?いや、早すぎっしょ」


若い男の声だった。全く聞き覚えのない声。魔法屋の店主だろうか…


「冒険者ユート 魔道士レベル3。ウォールタウン魔法屋付近にて爆死…っと」


ん…?今なんて…?


「あっ、あれか、真っ暗じゃ何も見えないんだっけな。ちょいまち~…っと、ほい」


灯りがつくとそこには銀髪上半身裸下半身漆黒のデニムを穿いた男が立っていた。

一方ユートは人の形ではなく霊魂となっていた。


つまり…死んだ…のか…?


「おう、死んだんだよ。いやぁ早いねぇ」


神様に連れてこられ1月とちょっと。魔道士として新たな1歩を歩もうとした矢先、この始末。

なんて、ついてないんだろう。

てか、どんな死に方したんだよ。


「確かね、魔法屋の扉開けたっしょ?そん時に謎の爆発が起こってよ、それに巻き込まれ空中でムーンサルトからの地面に激突脳天パッカンで死亡ってわけ」


ふむふむ、なるほど納得いかん。

理不尽過ぎるだろ!!なに!?どうすればいいのよ俺!!?


「まあまあ、話は最後まで聞けよチェリーボーイ。ウォールタウンで死んだ初心者は昇天ゲームオーバーなんて無いから安心しなって」


え、ほんと…?


「所持金の8割頂戴すっけど生き返れるなら安いもんっしょ、うん」


え、高っ!?8割てちょ


「行ってらっしゃい!あ、ちなみに俺は死神のデーモン木下だぜ!またな!!」


ちょ、名前ださっ!じゃなくて何、この展開金取られただけ!?お、おおおい!!!!



「はっ…!」

目を覚ますと、ユートはどこか知らない部屋の知らないベッドに寝かされていた。

なんだかどうでもいい長い夢を観てた気が…

「……」

ふと夢の内容を思い出し財布の中を覗いてみると、これまたビックリ所持金の8割が見事に消えていた。

「なんてこった…」

色々と悲しすぎてもはや叫ぶ気力も無い。

だがギリギリ魔法を1つ購入するお金が残っている。本来3つ買ってその後他の装備を集めるお金もあったのだが…


突然部屋の扉が開けられ人が入ってきた。

「あ、目が覚めたんですね~」

入ってきたのはダサい渦巻きメガネをかけた白衣を着たポニーテールのダサいメガネの女の子だった。

「メガネのことを2回も馬鹿にするとは、もう1度爆死したいんですか?」

「や、辞めてください…って、俺のあの爆死て何だったんですか…?金8割取られたんですけど」

「あー、あれはあれですよ。魔力圧縮の実験をしてたんですけど、あなたが扉を開けるものだから化学反応を起こしてドーンて理由です。立ち入り禁止の貼紙があったはずですけど」

「え?無かったですけど…」

確かにユートが店を最初に見渡したとき、どこにもそのような貼紙は存在しなかった。

「あ、ここにありました。悪かったな」

「口悪っ!」

「え?なんの事ですか」

この娘も随分とキャラが濃い。

ユートは自身に変態を寄せ付ける変な能力があるのではないかと疑った。

「ここに来たってことは魔法をお求めなんですよね?」

「あ、はい」

「じゃあ軽い検査をするのでこちらのベッドに寝転がってください」

と、彼女が案内したのはハートの形をし、全体的にピンク色で彩られたダブルベッドだった。

「えと、これは趣味ですか?」

「そんなわけないじゃないですか。中古で買ったんですよー。前はどこか宿屋で扱ってたらしいですけど、高級宿屋のベッドだったらいいですねー」

「そ、そーっすね…」

「じゃ早速寝てくださいっと」

「うおっ」

女の子はユートをベッドに押し倒した。

「ち…ちかいですっ」

ユートの胸部に顔を埋めさらに腰の後ろに手を回す。

「もうちょっとですからね~」

残念ではあるがその微かにある2つの楯状火山が…は、腹にあた、ああたってますぜ…

「はい、拘束完了です」

「へっ…?」

「体内に検査用の魔力を流し込みます。かなりビリっとしますが命を落とすことは無いので安心してください」

「え、ちょっと…!?」

ユートは全身から汗が滝のように流れ出る。かなりビリッとと言われてどう安心すれば良いのか。必死に逃げようとするが金具はびくともしない。

あ…

「レッツゴーです!」


ポチッ…



「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」





「また来たの…?」

「最近ぶりです木下さん…」

「大変だな…今回は無料でいいぞ」

「あ…ありがとうございます…」





「よし、検査終わりっと。お疲れ様ですユートさん」

女の子はユートを拘束してた金具を外す。

「あれ、俺名前教えましたっけ」

「あ、1逝きしてる間に手帳拝見させてもらいました」

「なんすかそのやな数え方…それで…俺に合う魔法…ありました…?」

ユートは不安げに女の子に聞く。この日だけでも何度も酷い目に合ってきたため、もう全てに警戒をしていた。

「えっとですねー、ユートさんは水系の魔法と相性が良いですよ。この水属性初心者セット今ならななきゅっぱですよ」

「あ…単品とかありますか…?」

「ない」

「え…」

「うちはセットでしか扱ってないのですよ」

せっかく木下さんに2回目サービスをしてもらい3,000イル手元にあるというのに、足りない。

「じゃあちょっとまた日を改めさせ」

「ちょーっと待ってくださーい!」

女の子は帰ろうとしたユートの肩を掴み引き止める。

「なんですか…?」

「ある条件を呑んでくだされば半額!いや、無料にしますよ!」

「え、本当!??」

無料に惹かれ肩の女の子の手を取り勢いよく振り返る。

「その条件とは…!」

「えっとですね…」

すると、女の子は何故か頬を赤らめモジモジし始める。

え、何この娘メガネダサいけど仕草は少しかわ…いい

「ちょくちょく…顔を出し…いや、会いに来てくれませんか…?」

ズッキューンと、ユートの中の何かが貫かれた。なんて単純な男だ。

「ま、任してくださいよ!」

「本当ですか!?良かったです!じゃこれ魔導書です!開いて読んでれば頭に入ります!」

「了解した!説明雑だが了解しました!!」

「じゃ、これからしっかり実験付き合ってくださいね!」

「……へ?」

ユートの中で貫かれたはずの何かが石化する。

実験、その一言でふと我に返る。よく見るとそこには美少女では無くダサいメガネの何か人ではなくもっと概念か何かに興奮している変な女の子がいた。

「あ、じゃあ俺そろそろ行くんで」

「毎度あり~。あ、私はハイロって名前なんでよろしくお願いしますねー」

「あ、はい。よろしくです。じゃ」

心の底から腐ってそう、いや腐ってるハイロから逃げるようにユートは店から出た。


そそくさとギルドへ帰り、さっそく魔導書を読んでみる。文字を1つ1つ読んでいく度に自分の中の魔力自身が水の心得を吸収していくのを感じた。

そして1通り読み終え、ユートはギルドの外へと出た。

ギルドの裏にあるフリースペースだ。そこでは剣術の練習から魔法の実験など、誰でも自分を磨くための特訓が出来るようになっている。


水の魔法を使うにはまず、清らかな水、自然な水が流れるイメージを浮かべる。そして、それを自分が流れを変えあらゆる方向に飛ばしたり、動きを止め形を維持したりなど使用方法を具体的に思い浮かべる。放出、旋回、凝固…


ユートは日本で見てきたあらゆる技のうちの1つをイメージする。そして、解き放つ。

「うおおぉ!!」

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