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プロローグ

「もういいだろう」


何度この言葉を吐いただろうか。

PCの画面の前。布団の中から天井を見上げた時。ドアの前に置かれた食事を前にした時。1階から母のすすり泣く声が聞こえてきた時。弟や親父が怒らず何度も優しく声をかけてきた時。

今までは覚悟などなかった。

言葉は吐けれても身体は動かない。動かせなかった。


だけど今は違う。

裕翔は縄を前にし足場に乗っかった時、もう1度自分に言い聞かせるように言った。


裕翔は高校3年間の生活を全て勉強に費やしていた。とはいえ友達とも話すしそれなりに明るい生活を送っていた。彼女もいたし、何不自由は無かったはずなんだ。だけど、大学受験に失敗した。

志望校に落ちた。それだけでもショックで立ち直れなかったのだが、それ以上に裕翔を追い詰めたのは滑り止めにも失敗していたという事だった。

インフルエンザにより志望していた私立大学を受けれなかったのだ。

背水の陣で志望校に挑むも裕翔は散った。

それは勉強面だけではなく、生活面にも影響した。

3年間彼を支えていた彼女が他の男に取られてしまったのだった。


もう耐えきれなかった。


裕翔は卒業式には現れなかった。

そして世界という広い世界で独りで居ることにしたのだった。

それから8ヶ月という時間を1人で過ごしていた。


「もういいだろう」


ゲームをして、寝て、葛藤して。

そんな惨めで無様で退屈な生活、いつまで続ける。もう、いいだろ。

裕翔が縄に手をかけた時、1通のメールが届いた。静寂の中短めのバイブ音が響いたのだった。

今更メールなど見る必要ない。

そう心では思っているはずなのだが。

なぜだか見たくなった。そう、衝動的に。


裕翔は先程まで足場にしていた椅子に腰を下ろしメールを開いた。そこに書いてあった内容は宛先が無名だという事を忘れさせるほど裕翔にとっては衝撃的だった。



【その命、捨てるなら私に貸して下さいな♪♪】


裕翔は息を呑み添付されていたリンクを押した。

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