いきなりのピンチ!?
はい、序盤から怪しい展開です。
何というか・・・ピンチ盛り沢山です!
読んでみてください!きっと面白い筈。
「あ~あ・・・面倒くせぇな」
一人呟きながら森の中を堂々と歩いていた。
肩慣らし程度に剣を振り回しながら、森の風景を楽しんでいた。
「おい、兄ちゃん。荷物置いてってもらおうか!」
あ~変な奴が出てきた。山賊とかいう奴ですか?あっ此処は森だった。
でも、いきなり賊が出てくるとか治安がなってないな。
犯罪者だらけの世界で治安を求める方がどうにかしてるのか。
そういう俺も犯罪者だったりするんだけどな。
「お前こそ荷物、置いていく気はないか?」
「何だと?只じゃ置かねぇからな!」
実に短気だ。少し喧嘩売っただけなのに、そこまで怒ることあるのか?
喧嘩なんて日常茶飯事だろうが!
賊が俺に対して斧を振り下ろす。
だが、無駄だ!なんてったって、こっちにも武器があるんだよ!
剣で斧を難なく受け止める。
カキン
耳に心地よい音が響いた、と思ったら俺の剣が見事に折れた。
「えっ?ちょ・・・マジか?」
「武器、無くなったな。荷物置いてけよ小僧」
驚きの脆さ。流石、ゲームの最初は弱い剣でないと・・・って
こんな折れやすい剣、置いとくなや女神様。
この剣より頑丈な剣なんて幾らでもあるだろう。
それとも相手から武器を奪えって?上等だ、掛かって来いよオラ!
心の中に怒りと笑いが込み上げてくる。
「ハハハハッ・・・どうしろというんだ。こん野郎」
俺は怒りに任せて賊を殴る。これでも威力は十分あるんだよ。
細いだの何だの皆、言うけれど俺にだって力位あるわ!
「貴様!よくも殴ってくれたなッ」
哀れにも賊は血を流している。見るからに痛々しい。
でも、そんなこと俺には関係なかった。さぁ止めを刺して・・・
その時だ、木の上から銃声が鳴り響いた。
驚いて一瞬だけ固まる。銃とか何者だよコイツ?
さっきの賊を見ると・・・いうまでも無いな。
「誰だ?言っとくが俺に敵意はないぞ!」
木の上の相手に叫ぶ。姿が見えない以上、声を掛けてみるしかない。
「知っている。お前、初めて来た奴だろ?見れば分かる」
「歓迎どうも。アンタ誰なんだ?」
「私か?スペードだ。運が良かったな、お前」
声だけでは特徴がよく分からない。
とにかく撃たれないように上手く立ち回ろう。
「助けてくれたことに感謝する。お前も犯罪者なのか?」
「嗚呼、腕利きの殺し屋だ。スペードは私のコードネーム」
序盤から強い奴に出会ってしまった。何故だ、巡り合わせが悪い。
しかも、コードネームとか俺も一度は名乗ってみたい!格好良い!
「中々、力はあるようだな。中の下と言ったところか」
「え・・・中の下」
「そうだ。まぁ、生き残るのに大した苦労は必要ない」
ショックだな。分かってたけど他人に言われると悔しい。
中の下って、かなり微妙じゃないか?なぁ、そうだよな?
「お前、私と組まないか?生き残る意思はあるのだろう?」
おお、これは絶好のチャンス!ここで組めば色々と教えてもらえるぞ!
俺は喜んで承諾することにした。仲間がいれば心強い。
「断る筈がないだろ。組もう!」
「即答だな。まぁ良い。私もハンデ位あった方が面白い」
ハンデ・・・俺が。そうですか。俺は足手まといですか。
「そうですよ。俺は足手まといですよ!」
「すまない、そのような意味ではないのだが。私が強すぎるだけだ」
確かにスペードは強い。気配も悟らせなかったし殺気も感じ取れなかった。
スペードはナルシストなんかじゃない。他でもない真実を述べているだけだ。
「まぁ、木から降りて来いよ。仲間なんだからさ」
「そうだな。姿を見せるのが礼儀だろうな」
スペードが木から軽やかに降りてくる。
その姿は異様なものだった。性別不明、顔立ち不明。
とにかく全身が黒い包帯に巻かれていた。口元から足先まで包帯だらけだ。
その上から更に黒いワイシャツと焦げ茶色のズボンを着込んでいる。
そして殺し屋独特の隠し道具の数々。これは黒いベルトに全て装着されていた。
物騒なこと、この上ない格好である。
「スペード、名の通った殺し屋だ。これから頼む」
「そうだな。頑張・・・」
いきなり口を塞がれる。そうだった言っちゃいけないんだったな。
危ないわ!全く・・・危うく言いかけた。
無言で頷く俺を確認するとスペードは手を引っ込めた。
「ありがとな。危うく言うところだった」
「全くだ。しかし、これから頑張ろう!」
いやいや、言っちゃダメなんだって今、確認したよな。
目を閉じて、耳を塞ぐ。きっと雷が落ちてくるに違いない。
トントン、誰かに肩を叩かれる。目を開けばスペードが其処に居た。
「あれ?雷は落ちてこないのか?」
「普通は落ちてくるが少し頭を使えば分かることだろう?」
「えっと・・・どういう事だよ?」
呆れた様子のスペードが俺に良い事を教えてくれた。
「私はそもそも方位磁石を身に付けてない」
「あっ、成る程な。だから大丈夫なのか」
「方位磁石を付けた場合は壊すか、女神の加護を享ければ良い」
「そうか。手はあるんだな」
方位磁石を壊すという方法があった。
確かに頑丈ではあるが、壊せないという訳ではない。
「腕を切り落とすという方法もあるぞ」
「あっさり怖いこと言わないでくれ」
腕、切り落とすとか死んだほうがマシだろ。
スペードは賢く人徳もある。俺を助けてくれたことが、その証しだ。
しかし常識的ではない。殺し屋としての考えが著しく身に付いている。
「壊せば女神の怒りを買う。ここは祝福を期待しよう」
「どうすれば良いんだ?」
「女神に五回以上、話しかける。それだけだ」
「なるべく話したくないな。だって女神様、怖・・・」
ここで何故かスペードが飛び退く。嫌な予感しかしない。
外せないとは分かっていても、つい外そうとしてしまう。
外れろ!頼むから、外れてくれ~!
「愚か者。聞こえていると言ったであろうが!」
女神様の声が方位磁石を通じて聞こえる。ヤバい、ピンチだ。
黒雲は徐々にこちらへ迫ってきている。どうしようか・・・。
「おい、ボッーとするな女神に謝れ!」
「いや、でも・・・」
「・・・分かった。じゃあ私が努力しよう。死んでも、ここで倒れるだけだ」
「頼む、スペード!」
スペードが折れた剣の刃を拾う。何をするのか想像出来る。
ここは任せて祈るしかない。スペードにお願いします、と祈った。
黒雲が俺の頭上に来て動きを止める。
俺、死にそうだな。そう思っても笑いが止まらない。
心の底からそうは思っていないのだから。スペードなら何とかしてくれる。
「その場で座れ!もうじき雷だ」
「分かった。頼んだぞ!」
ゴロゴロ
雷の音が鳴り始める。覚悟を決めるしかない!
天災とは正に今のような状況を言うのだろう。
目を瞑って、耳を塞ぐ。そして言われたように座る。
眩い光は目を瞑って尚、全てを防ぐことは出来ない。
それでも心の安定を保つには十分な働きをした。
「もう、いいぞ」
軽く告げるスペードに俺は生きていることを実感した。
しかし、まだ目が眩んでいる。まともに立つことは出来ないだろう。
「どうやったんだ?」
「何、簡単なことさ。折れた刃を雷が落ちる瞬間に投げた」
「いや、軽く言ってるけど凄い神経だからな」
会話していると視界が元に戻った。
「ありがとな、スペード!」
「嗚呼、別に構わない。信念は尊重しよう」
淡々と告げるスペードをよそに俺は気付いていた。
スペードが俺の為に手を怪我してしまったということを。
しかしスペードは何もなかったかのように言葉を続ける。
「先程のことは恩と感じなくて良い。仕方のない事だ」
「分かった。スペードがそう言うなら」
「今は町を目指そう。すぐ近くに町がある」
「そうか、行こう!」
申し訳ないと心の底から思った。
それでも、スペードは特に気にしていなかった。
何だろう。俺とスペードの戦闘力は比べ物にならなかった。
近くに居るのに遥か遠い存在のように感じた。
スペードの言葉は全て、事実であり真剣なものだ。
俺はスペードのことを心の底から尊敬した。
仲間が居るってこんなに嬉しく、楽しいものなんだな。
「道中、何があるか分からない。私は木の上から見守っておく」
「分かった。危ない時は、また頼んだ」
「任せておけ。お前を援護する!」
そう遠くない道のりを俺達は二人で目指した。
新たに仲間が加わりました!おめでとうございます!
仲間の名はスペード。腕利きの殺し屋で謎の多い人物です。
いきなり主人公を助け、それを自らのハンデだと言い張ります。
強い人物であることは間違いなさそうです。
賢く、強い完璧な人ですが・・・
殺し屋としての考えが強い為に誤解を招きやすいです。
それと相反するように人情も持ち合わせてはいます。
掴みづらい性格であることには間違い無いでしょう。
お疲れ様です!次回も、お楽しみに!!