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Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第3話
87/160

「炎の記憶」18

*****



 ――忍び寄る影はすぐそこまで。一般人に紛れ込んでいても、誰にも気付かれる事はなくただ亡霊のようにゆらゆらと漂っていく。しかしその亡霊のようなモノにも意思があった。

 日の当たらない路地裏に入り込み、誰も居ないこの場所に立ち尽くす。空は薄く赤い。そんな中誘われるようにやって来た者が居た。


「何者だ」


 自分とは対照的な純白。夕闇ですら弾いて輝くその姿。標的だ。


「――ヒ、ヒッ」


「狂った能力者……と言う訳でもなさそうだな?」


 時間も時間だ。少々小腹が空いてきた。仕事もしているし少しくらいなら自身の欲求を満たしても良いのではないだろうか。その思考に至った時既に体は動いており。



*****



 ――夕暮れに染まる街。今日は何事もなく学校を終え、護は珍しく遊びに付き合っていた。数人でゲームセンターに立ち寄り、それなりに遊ぶ。それでも今回は隼士が居なかったからかかなり早い段階での解散だった。全員帰って課題に取り組んだりする、との事。


「あれ、何でこっちに来てるんだっけ……」


 護が向かっていたのは家と正反対に位置する駅前。帰宅者が多い時間帯の駅前は相当混雑している。まるで誘い込まれるように来てみたが、何故ここまで来たのかまったく思い出せなかった。買い物があった訳でもなければ誰かに呼ばれた訳でもない。ただ何かに吸い込まれるようにふらふらと歩いてきた。理由が思い出せないなら帰るべきだ。そう思って振り返る。良くない予感がした。


「……?」


 首を傾げたが、護はこの感覚を知っていた。これに似たような状態を何度か体験しているのだ。人影が無くなり、まるで自分が別の世界に迷い込んでしまったかのような違和感。こうなったらまずは逃げて、隠れる事。下手に動き回らないのが重要だ。全てが止まってしまった世界の中、物陰に。つい先日もこのよう状況に陥ってしまった事でデジャヴを感じるが、少しだけ学んだ事がある。一人では確実に対処不可能。ならば人を呼ぶしかない。幸いにも連絡先なら勝手に登録されているのだから。しかし、現実は非常であった。


「圏外……」


 画面に表示されるのはその二文字。通信は不可能だ。ならばこの空間から出るか?入る事が可能ならその逆だって可能なはず。しかしこの空間がどこからどこまで広げられているのか分からない。やはり、動けなかった。

 今は何も起きていないのでこうして隠れていても恐怖する事はなく平然としていられるが、もしまた目の前で戦闘が起こったらと考えると。


「どうすれば良いのかな……」


 考えるよりも行動だ。と言いたいところなのだが、護の場合は考えながらの行動だった。まず今隠れている車の陰。そこから移動して建物の傍へ。しかし中へは入らない。いつガラスが割れて、この建物が崩れ落ちるか分からないからだ。

 慎重に、慎重に周りを確認しながら駅から離れるように進んでいく。もしここが中心だとするのなら運が無い。だがそれでも移動して、安全を確保しなくては。

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