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Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第3話
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「炎の記憶」02

 そうこうしている内に護の目の前で銃撃が始まった。無防備な男に向けて、無数の銃弾が容赦なく発射される。弾き出される空になった薬莢。盛大に響く銃声。銃弾は男だけでなく地面ごと抉っているのか先程よりも広い範囲で土埃が舞い更に視界を悪化させる。しかし、それだけではなかった。


(冷たい……?)


 瓦礫の隙間から顔を覗かせて感じているのはひんやりとした感触。肌を撫でる風に冷たさを感じるのだ。春の風に残る冷たさとはまた違い、痛みさえあるような。それはまるで男を取り巻いていた熱風を抑え込むかのように。


「対炎系統能力者抑制弾――実戦使用は初だが、効果はあったようだな」


 銃弾の雨が止みリーダー格と思しき警備隊の男がそう呟く。落ちている薬莢の一つをそのスーツで包まれた大きな手で拾い、光に照らす。護には勿論見えていないが、そこには英数字“CC01”の刻印。


「へぇ……こいつがここの新兵器って奴かい?」


「な……!?」


「単純に冷気で能力者の動きを、銃弾の衝撃で命そのものをってな感じがコンセプトか。悪いが、その程度の玩具で止められる程、柔な炎じゃねえんだよ――」


 酷く冷めた空気を切り裂き、一筋の眩い閃光が走る。それは男の横を通り抜け、並んで銃撃していた隊員の一人に直撃。悲鳴も上げずに後方へ大きく弾き飛ばされ、壁面に衝突し崩れ落ちる。

 純白のローブから伸びている右腕。そこに宿った真っ赤に滾る炎。


「まあ精一杯考えてのこれだろうから評価はしてやる。次はもっとマシな物を作れよ!じゃあな!」


 その右腕がより一層熱量を増す。周囲の気温が急激に上昇し、視界が歪む。

 仲間の一人がやられた事に、いや銃弾が効かなかった事に驚いているのか警備隊は硬直したままだ。


「くっ……撃て、怯むな!」


「お、おおぉぉ!」


 雄叫びを上げながら銃を乱射。精神的に不安定になってしまったからか、そのどれもが男に届いている気配が無い。取り巻く熱気が銃弾その物を溶解させているようにも見える。まるで歯が立たない、これが能力者なのか。対抗する術は存在しないのだろうか。

 護が息を呑んで戦いの行く末を呆然と見詰めていた時、異変は起こった。新たな乱入者だ。

 炎が右腕から伸びると同時、今度は壁面が大きく罅割れそこから何者かが突入。警備隊を飛び越え、その前へ。伸びてきた炎を受け止める。


「その力……やはりジャベリンだったか」


「……その名前は捨てたぞランス。いつものバイクはどうした?」


「所内では使えなくてな。だが、無くても戦える」


 現れたのは警備隊と同じようにスーツを身に纏った青年だ。青年と分かるのは警備隊と違いヘルメットをしていない故。そして突き出した両手にはこれまた一際輝きを放つ炎。 救世主の男――ジャベリンというらしい――とはまた少し違った色合いの炎だ。彼もまた、能力者なのだろう。


「援護をお願い出来ますか。俺の能力は接近仕様なので」


「あ、ああ……あれは、知り合いか?」


「……行きます」


 ランスと呼ばれた能力者は大きく両腕を伸ばす。そこに現れるのは槍のような形をした赤い炎。故に、“ランス”か。

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