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Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第2話
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「異能の世界」35

 二人が連れて来られたのはとある一室だ。白一色に碁盤の目のような区切りがある。そして、その中央。黒い布が掛けられた何かが鎮座している。異様な威圧感だ。


「まだ実験段階だけど、せっかく来て貰ったんだから最先端の科学の力に触れてほしいんだ。と言う事で、これを試してくれないなかな?」


 先程の若い男性が勢い良く布を取り払う。そこから現れたのは――


「何だろう……?」


「案山子? 的な?」


 一言では言い表せないその物体。各所から様々な色のケーブルが背後にある機器に繋がれており、エンジンのような駆動音まで鳴り出した。確かに真美の言うように案山子にも似ているが、どちらかと言えば鎧の台座、もしくは何かの骨組みのようにも見える。これが最先端の科学なのだろうか。


「ロボット? 動くのかな?」


「残念だけどこのままじゃ動かないんだ。あれもあるかい?」


「勿論ですよっ、と……」


 続いて男性が台車で押して持ってきたのは見るからにパンパンに詰まった土嚢袋。それが二つ。大きさから見て一つ三十キロ以上はあるだろう。まさに塵も積もれば、を体現したかのような物が目の前に。


「紅野君、これ同時に持てる?」


「うーん……お兄ちゃんには絶対無理ですね」


「そんな酷い……けど、無理です……」


 パンパンに詰められているらしい土嚢を叩いたり持ち上げようとしている真美。それを同時に持ち上げろというのは鍛えていなければ難しいだろう。


「それを実現するのがこの最新筋力サポーター! あくまでも開発段階の仮称だけど……もう少しかっこよくするよ」


「ま、まさか……もしかしてこれを着る?か何か出来るって事ですか!?」


「察しが良いね。簡単に言えばそういう事……やってみる?」


「やりたい!」


「やるの……?」


 率先して手を挙げる真美。好奇心の塊のような雰囲気を醸し出しつつサポーターへと近付く。近寄ってみると更にこれが何なのか分からなくなってくる。ぶら提げられた二本の腕のような部分。そしてそれを繋ぐように数本の黒い棒とケーブル。そこから背後に置かれている箱のような機器に結線され、波形を映し出している。


「じゃあここに立って、そのままね」


「はーい」


 どうやら立てられている棒は長さが調節出来るようで、真美の身長に合わせて高さが変わる。さすがにそこは手動のようだ。これが自動で出来るようになればかなりの進歩だろう。


「あの、危なくないですよね?」


「大丈夫。これは試作品だけど試作の中での完成品だから」


「はぁ……」


 言いながら真美の腕に機械の鎧のような物を装着していく。試作品とは言うが、どうしてもほぼ骨組みのようにしか見えない。入り口に置かれていたレプリカとはまた違う見た目のような箇所も見受けられるが、それでも無骨さが目立つ。


「お兄ちゃん! 見て! めっちゃカッコよくない?」


 装着された機械の両腕を護に見せびらかし、はしゃぐ。指を曲げたりすると中からモーターの回転する音。同じように関節部分からもだ。そして、動く度に波形が変化。波形が二つ、という事は随時入出力を見ているという事なのだろうか。


「班長。入力、出力ともに正常値です。いつでも大丈夫ですよ」


「よし。それじゃあ早速やってみてくれるかな?あ、ゆっくりね」


「ゆっくり?」


 自分の腕を伸ばすような感覚で土嚢の頂点を掴み、力を入れて持ち上げようと――


「遅かった……」


「嘘……!?」


 ――確かに持ち上がった。だが、勢い余って土嚢が空を舞う。数秒後。重量感を感じさせる鈍い音が部屋の中を揺らす。


「……」


 離れて見守っていた護は口を半開きにして言葉も出せずにいる。目の前に落ちた土嚢を見ながら。


「これが……『研究所』の……」


 危うく腰を抜かしてしまいそうになったが、どうにか踏み止まる。同時に感じたのはこれが実用化レベルまで完成したら、どうなってしまうのかという疑問だ。これを迫り来る敵への対抗策として扱うのは勿論だろうが、挙げ句には兵器としても使われる日が来るかもしれない。恐ろしい力だ。

 そんな時。新たにもう一人の研究員と思しき女性が現れた。彼女も同様に分厚い資料を持っての登場だ。

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