表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第2話
59/160

「異能の世界」30

*****



 時は流れ土曜日。あれからの二日間は特に何も無い穏やかな日常を過ごせた護。聖羅が言うには、あのように蝕が連続して同じような場所に出現する事自体珍しく、普段は滅多に行動する事はないらしい。極稀に蝕の存在が発覚しても近くに居る団体がそれを討伐し、処理していくとの事。つまり休日は休日として休む事が可能なのだ。特別仕事が無ければ、の話だが。

 故に護と真美は今現在、電車に揺られている。目的地までは残り一駅と言ったところだ。いつものように味気の無い白いパーカーを羽織り、荷物持ち宜しく大きめの鞄を持たされている護。そしてその隣では楽しそうに話し掛けている真美。


「あと少しだけど……あれ?ここら辺って確かさ、何かおっきい会社の土地じゃなかったっけ?」


 窓の奥、流れていく景色は白や灰色。微かに見えるのは人工的な建造物だろう。それも複数。


「そうなの?」


「そんな気がしたけどなぁ……あ、着いたみたいだよ」


「ところで……これ、何入ってるの?」


「え?特に何も。あった方が良いじゃん?」


「そう……かな?」 


 何故無駄に大きい鞄を持ってきているのか、護には理解出来なかった。そう言えば女子は鞄を持ち歩く事が多いのではないだろうか、と適当にこじ付け席を立つ。持たされている事には何も感じないらしい。

 ホームに降り立つと、視界に飛び込んできたのは遠くに見える巨大な建造物。電車内で見たよりも大きく感じる。巨大と言っても、縦に長いのではなく、横に広いようだ。白一色で統一された大きなドームのような建物。


「あれ何だろうねー」


「さあ?あ、地図見てから行こう」


「え、めんどい……」


「迷うよりすぐに行けた方が良いと思うけど……」


 両者の性格の違いがまたしても現れてしまうが、ここは護に従って案内図を確認する。しかし、ここで問題が発生した。


「ほら、やっぱり……!」


「これは驚きだね……どうしようか……」


 目の前の案内図いっぱいに描かれているのは勿論地図だ。出口は二つ。正面口と西口。そこまでは普通の駅周辺情報だ。そこからは違う。書かれている単語は、研究棟第○号など。


「研究……まさか……」


 その単語に護は引っ掛かりを覚える。そう、もしかしたらと思い注意深く文字を探っていく。目的の文字はものの数秒で発見。長い前髪の奥で目を閉じ、もう一度開く。文字が変わっていれば、もしかしたら見間違いかもしれないと思いながら。


「アナザースター社……」


「ああ!あの会社だね!ロボットとか作ってるんだよね!」


「う、うん」


「でもこれだと中は入れないのかな?」


 地図を見る限り、出口以降はほぼアナザースター社の敷地のようだ。何の関係も無い一般人が入れるのだろうか。だが、ここまで来て引き返すのも後味が悪い。ここは行けるところまで行くのが筋ではないか。やると決めた事は貫きたい。その為には今ここで立ち止まっていてはいけない。まずは行動を起こさなければならないだろう。


「とりあえず駅員さんに聞いてみようか?」


「そぉだねー……ここで帰ったら時間勿体無いし」


 きっと上手くいく、そう信じて護は動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ