「異能の世界」24
モニターからは光が消え、今は真っ暗である。そして三人は大和お手製のオムライスを完食。空になった食器を片付けながら聖羅は言う。
「これで一応、紅野くんも正式に私たちの仲間になったわね。本当は全部明日やる予定だったんだけど……」
そう言われてみればそうなのだ。昼にそのような会話をしたはず。それでは何故、今日この場に二人が居るのか。答えは簡単だ。仕事を放り投げてまで護を助けに来た。
「えっと、それ……僕のせいですか……?」
さすがは護だ。言い淀んだ聖羅の視線を見逃さず、それから理由を簡単に推測。そうする事で罪悪感が芽生えてしまうのだが。思考の回転が速いのも悪い側面がある。
「んー……そうとは言い難いけど……とりあえず生徒会の仕事なら大丈夫!そうよね大和?」
「別に急ぎの案件は無かった。それにあの場で間に合わないなんていうのも嫌だからな」
二人の言葉はどうやら真実のようだ。しかし、そこで護には気になる事を発見した。それは、どうやって学校からあの公園までやって来たのかである。時間にして約三十分程度は掛かる距離だろうか。その距離を、蝕の存在を確認してから仕事を止め、移動してきた計算になるはず。どう考えようが間に合うはずが無いのだ。
「あの、どうやってあの場所まで?」
純粋な疑問。空間でも移動してきたのかというタイミングだっただろう。護の体に触角が触れるか触れないかの距離。まさに危機一髪の状況を打破した雷撃。
「……会長お得意の移動法だ。正直付き合わされる側は気が気じゃないんだがな」
「え?だってあれ便利じゃない。上手く使えば誰にも見付からないで移動出来るのよ?むしろ男の子ならカッコイイと思わないの?」
「もしかして、あれですか……?」
「そうか、君はもう体験したのか……」
護の頭に過ったのは昨晩の出来事。恐ろしい速度で空を駆け回る自身の体。今までに体験した事のない独特の浮遊感と重力。“招雷”を使った移動の事だ。確かにあれならば、とは思うがそれでも相当速い。もしや、そもそもの前提が間違っているのだろうか。
「でも、蝕が現れてからそんなに時間経ってなかったような気が……」
「それはね?大和のパソコンが能力者の能力発動を知らせてくれるからなの……こんな風にね」
そう言いながら自身の掌に紫電を発生させる。しかし大和はそれを行おうとする前に聖羅からパソコンを遠ざけた。どうやら電気への耐性は通常のパソコンと同等なのだろう。壊れる事への懸念だ。
「いきなりはやめてくれ……」
「ごめんごめん」
ムッとした表情の大和。彼の手に収められたパソコンのモニター中央には小さなポップアップ。
「これは……こういう風に分かるんですね」
表示されているのは一言。能力者の反応ありのみだ。更に目を動かし右下にはおおよその地図。これが見えたところですぐに出て来たのか。ホワイトの能力が発動した時点で動き出せば、確かに間に合うのかもしれない。これで護の疑問も晴れたようだ。
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