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Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第2話
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「異能の世界」04

 生徒会室は校舎の三階にある。三年生の教室があるのもここ三階であるが、棟がほんの少し違うだけで喧騒とは無縁の場所に変化。学校の備品倉庫やらが置かれているだけなのでそもそも近づくのは生徒会役員くらいだからなのだが。昼休みで騒がしい空気は生徒会室に近付くに連れて静まっていく。護はこの空気はとても好きなのだが、今はそうとも言っていられない。何故なら女の子と二人きりというシチュエーションに慣れていないからである。昨晩は話す事があった故にそんな気持ちは前面に出て来なかったが、こうして改めて同じ現場に置かれるとどうして良いのか分からなくなってしまうのである。しかも相手は美人で人気のある生徒会長。


「そんなに緊張しなくても……別に取って食ったりしないわよ?」


「い、いえ、そういうつもりじゃなくて……」


 階段を歩きながらのため護は目を伏せがちにしていたという事もあったのか、聖羅は気遣いを見せる。護も縦に並んでいる訳でもないの律儀であった。


「会長が言うと実際には裏がありそうなのが怖いな」


 更に階段の上。手摺りに持たれかかる様にしている男子生徒。皮肉っぽく上から声を投げる人物は彼しか居ないだろう。


「そこで何してるの大和?」


「そうバチバチ言わせないで……鍵が開いてないから入れないんだ。そのせいで待たされている」


「あら、そう。それじゃこれね」


 制服のポケットに入れていた鍵をほぼ真上へ投擲。彼女の身体能力は昨日見た。だからそれが全力でない事など一目瞭然。しかし、そんな適当な動作でもしっかりと目的の場所に投げるのはさすがと言うべきか。


「開けといてー」


「はいはい」


「返事は一回、でしょ?」


「……」


 しっかりと鍵を受け取った大和は、そのまま生徒会室に向かって姿を消す。消すとは言うが護と聖羅もすぐに追い着くだろうし、生徒会室も階段を上がってすぐだ。そして階段横の生徒会室。ここに来るのは二度目だが、何故か緊張してしまう。


「適当に座って良いからね」


「はい」


 中に入ると、長机と椅子を引っ張り出してきて言う聖羅。適当とは言われたが三つしか出ていないので護は一番端にある椅子に腰掛けた。大和はその内の椅子を一つ持って窓際へ。この前もそうであったが、彼はどうやらあそこが定位置らしい。


「昼は調達してあるから好きなのを持っていってくれ」


 机に無造作に置かれたビニール袋にはコンビニのパンやおにぎりなどが入っている。見たとおり買ってきた物のようなので。


「お代は後で払ってくれれば問題ない。本当なら弁当か何か作った方が安上がりなのだが……」


 そう言って大和はチラリと聖羅を見る。視線を投げられた当人はその言葉に嫌そうに口を曲げていた。


「誰があなたにお弁当なんか作ってあげるの?」


「自分の分くらい自分で出来る。それに作ってくれなんて言ってないぞ?会長が料理出来ないのは知っているからな」


「……別に料理くらい出来なくても生きていけますよー」


「え、会長料理出来ないんですか?」


 意外な事実。なんでもそつなくこなしそうな彼女はどうやら料理が苦手なようだ。 もちろん聖羅はそれを気にしているようで、護から声が上がったのには少し落ち込んだ様子で答えた。


「女の子だから出来なきゃいけないって訳でもないでしょ?今の時代、この世界には作らなくても生きていける環境があってね?」


「は、はあ……」


「そもそもそんなに手料理が良いって言うならそういうのが出来る女の子を見つけて――」


 必死で捲くし立てる聖羅に護は若干引きつつ、窓際では大和が口元を隠しながら肩を揺らしているではないか。笑いを必死で堪えているのが見え見えである。


「ねえ大和、今からその椅子に電気流して上げようかしら?」


「残念ながらそういう趣味は無いので遠慮しておきます。そんな事より本題に入ろうじゃないか。時間は減ってるんだからな」


 自身への被害が来る前にどうにか話題を変えなければならないと本能的に察知した大和は、護をここへ呼び出した理由を話して貰おうと立ち上がる。これで椅子に電気が流れても大丈夫だろう。


「そうね。こんな事ばっかりしてたら昼休みも終わっちゃうしね」


 体の周りに発生させていた微量な紫電を収め、ビニール袋の中を物色しながら聖羅は呟く。


「到って簡単よ。昨日の反省会というか会議というか……放課後でも良いんだけど、今日は“普通の”生徒会役員会議があるから」


「普通の……」


「そう。私達以外は一般生徒だから……大和は生徒会役員でもないけど」


「勝手に入り浸っているから役員と間違われるがな」


 つまり、この集まりは全く以って非公式な活動であるという事。それもそのはず、異世界との繋がりを知っている者たちがここに集まっているのだから。

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