表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第1話
25/160

「壊れた歯車」25

 自身の攻撃は一切効いてない。だが、ここで退けば、経費やら依頼が無くなってしまう。それだけは避けたい、とこの状況下でも冷静に分析をする。勿論それだけではなく、この人形がどの程度の脅威を持っているか定かでない以上野放しに出来るはずもない。聖羅も自身の能力には絶対的な信頼を寄せているし、他の能力者にも負けないと思っている。だからこそ、譲れない。

 立ち上がった人形にはほんの僅かな傷が見受けられる程度で、まだまだやる気があるようだ。とは言うものの、目的すらわからないのだが。


「だけどこれは本当に……お手上げ状態なのよね……!」


 聖羅の方も大きなダメージこそ無いものの、自身の能力で飛ばした破片や人形による攻撃の余波で受けた裂傷、“招雷”を長時間に渡り使用した疲労が蓄積し、体力的にも精神的にも限界が近い。その事は勿論承知の上だ。それでも逃げるなどという甘い考えは起きない。だから、重たくなった足を動かし、土砂の隙間を掻い潜りながら、隠れている二人の元へ走る。


「大和!前作ってた試作品、ここに送れる!?」


「……出来なくは無い。だがやはり調整がまだだし、基本設定は会長の能力に合わせたが出力が安定しない――」


 パソコンを叩きながら新たに設計図らしき物を追加し、展開。英語や数字が書き込まれているという事しか護には理解出来なかったが、当事者二人は違う。


「理論なんて、後付けでも問題ないわ。今はあれを止めないと、私達が危ないの!」


 大和の胸倉を掴んでまで言う聖羅の強い瞳には有無を言わせない圧力が宿っていた。考える猶予も与えないその圧に大和も渋々、嫌々ながら首を縦に振る。本当にやむを得ない、といった感じを醸し出していた。


「やるのは構わない……ただ、無理だけはするなよ。明日も学校があるからな」


「そういう心配なら無用よ」


「わかっている。負けるはずがない、と言いたいのだろう?」


「うん、わかってるじゃない」



 言葉を交わすと大和は再びパソコンを操作し始めた。先程から展開させていた設計図のようだ。


「……前に説明した通り、理論上では物理的な耐久性も能力的な耐久性も、会長の“招雷”をトリガーに底上げ出来る」


 それは次第に着色されていき、形が護でもわかる物となっていく。白く細い柄は長く取られ、その先端部はただの金属というよりは機械をイメージさせる。鋭さの中に美しさをも兼ねた純白の槍だ。


「聞くより使った方が早いわ。ここに出せるわね?」


「出来なかったら作った意味が無い……ただ多少時間は掛かるな。悪いがそれまでは頼んだ」


「はい、任されました。でもそんなに時間は掛けないで欲しいかな」


 自信なさげに言っているが、闘志はまだ健在らしい。息を吐くと再び燃え広がるように紫電が舞う。気迫じみたものを周囲に撒き散らしながら未だにこちらを見つけられずに手当たり次第に暴れている人形を睨む。


「今回は紅野くんの出番は完全に無さそうだけど、しっかり見てる事。良い?」


「あ、はい……」


 ただ見ているだけで本当に良いのか、という気持ちもあるが、何も出来ないのだからここで大人しくしておくのが上策だろう。あんな怪物の相手が出来るような特殊な人間でも無いのだから。


「じゃあもう一回、やってくるわね」


 颯爽と駆け出し、効かないとわかっている電撃を背後から撃ち込む。人形がゆっくりと攻撃があった方へ振り向き、その流れで腕を振り回す。遠心力で運ばれる太い腕が遊具を壊し、破片を飛ばす。聖羅は破片を紫電で焼き、攻撃は自身の身体能力に任せて避ける。最初程のキレは無いが、まだ余裕がありそうだ。


「あと少し……あと少し耐えれば……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ