「トップチームの実力!」18
「ここがあなたの部屋となります。申し訳ありませんがゆっくりしている時間はありませんので、こちらに着替え終わったら突き当たりにある会議室へ」
「は、はい……わかりました」
手渡されたのは彼女たちと同じと思しき黒服である。拒否など出来るはずもなくスーツを持って用意された部屋へ。
まず目に飛び込んでくるのは凄まじいまでのオーシャンビュー。綺麗な青が窓から溢れんばかりに輝きを放っているし、繊細で美しい装飾の数々は配置にも気を遣われているようだった。
そして部屋の中央には大きなベッドが鎮座しているが一切の狭さを感じさせないのは、やはり大きな窓による解放感から来るものなのだろうか。
まるで高級ホテルの一室のような豪華さに目が痛くなる護だったが、まずは着替えである。何をやらされるのかはわからないが、とりあえず言われた通りにしていれば何もされないだろう。あくまでも保身だ。
「……適応してるって言うのかな、これ……」
きっと『研究所』経由で縫製されているはずのスーツは肌触りも良く、軽やかだ。当然のように自分の体にフィットするし、丈もバッチリである。
是非ともこれを一般社会に出回る技術にしてもらいたいところだが、そうもいかないのがこの世の中。関係者が優遇されてしまうのは必然なのだ。
「よし、と……会議室だったよね」
着替え終わるとそろそろと部屋の外に。一応周囲に人影が無いかを確認したのだ。有事の際には慎重に周囲を確認すべし、とは聖羅の教え。勿論現在のように心に余裕がある場合にのみ思い出せるのであるが。
「誰もいないね、うん。あっちの方がドア大きいし、あっちかな?」
しっかり安全を確認すると、吹き抜けとなっている一階を見下ろしながら歩いていく。
コの字形に置かれた真っ白で柔らかそうなソファと、木目調のテーブルの上には色鮮やかなフルーツ。まさしくリゾートに来たような――護が実際に来た事は無い訳だが――、不思議な感覚だ。
「あれ、もしかしてあの格好で料理も……? どうなってるんだろう……」
進んでいくにつれて景色は少しだけ変化。先程は死角となって見えなかったキッチンが目に入ったのだ。そして調理場に立つ人物も。護が今着用しているスーツと同じ黒服の彼女たちだ。さすがにネクタイやサングラスは外しているし、エプロンも装備中だが。
「色んな国の人が居る、のかな?」
髪の色も瞳の色も肌の色もバラバラではあるが、話をしている彼女らは特別仲が悪そうには見えない。時折笑顔も見て取れるし、悪い環境ではなさそうだ。
「こちらですよ」
「!? ……あ、すみません」
「いえ。どうぞ」
つい足を止めて観察を開始していたらしく、目の前からの接近に気付けなかった。声を掛けて来た女性の後を追い、会議室に入室する。ひんやりとした空気がとても心地が良い。
スクリーンの目の前にある机と椅子。まるで何かの講義を始めるかのような。ともかく差し出された椅子に座る護。
「あの、ここでなにを?」
「新規教育です。時間は取りませんので」
「……はぁ」
新規教育、だそうだ。