「トップチームの実力!」16
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まさに怒涛の勢いだった。有無を言わさぬ流れ。口も能力すらも挟む事が出来なかった。ただ呆然と、走り去る車を見詰めるのみ。
残されて、状況を把握する。
「え、これなに? 誘拐……?」
「一応追跡はやろうと思えば出来るが、どうする? その前にこの状態をどうにかしないといけないけどな」
残骸と、余熱で焦げたらしい校舎。それから穴だらけのグラウンド。これらの修復作業があるのだ。あっという間に終わるものではあるのだが、如何せん面倒な手続きを踏まねばならない。
特に今回は蝕との戦闘ではなく、完全に個人的な利用目的の空間隔離。リサが使用申請をしているのなら別だが、していなければどうなるのか。
「ウチ持ちなんて事、ないわよね……?」
隔離費用、修繕費、辻褄合わせの情報操作などなど。細かく挙げるとキリがないが、それを負担する事になるのかもしれないと思うとゾッとしてしまう聖羅。
「無い、とも言い切れんな……とりあえず始めるとするか……学校のデータはここにあるし……ん?」
「どうしたの?」
「いや今能力者の反応があったような……気のせいかもしれない。忘れてくれ」
モニターと睨めっこしていた大和が何かに気が付いたらしいが、どうも勘違いだったようだ。この学校内に能力者が聖羅以外に居るはずない、と。きっと能力の余波だろう。
「さて連絡はしたが……なかなか承認下りないな。いつもなら夜中でも即座に来るのに」
「ねえ大和」
「なんだ?」
メーラーソフトの更新ボタンを連打しているのだが一向に『研究所』側からの返信が無い。昼時でも何でも無いのに、と首を傾げていると聖羅から声が飛んで来た。少し、真剣な。
「なんかまた来たんだけど」
「え」
言われてから顔を上げて、聖羅の視線と同じ方向へと両目を動かす。するとそこには、いつもとは違う光景があった。
「誰だ……?」
人だ、見た目は。それがぞろぞろと並んで入ってくるではないか。黒いスーツに黒いサングラス。あからさまに怪しい。しかも見たところ女性が多い、だろうか。
「能力者、ではなさそう」
「……ああこっちにも反応はない」
「けど銃とか持ってるかもしれないから下がって」
あんな露骨に怪しさ満点の人間においそれと近付く訳にもいかず、二人は静観。
全ての黒服が入りきったところで、何人かのグループに分かれて行動を開始するではないか。その内の一人が真っ直ぐ歩いて来る。聖羅と大和を見据えて。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……どちら様ですか……」
身長も高く、細身の女性だった。サングラスのお陰で目線が見えないせいか謂れの無い不安感を煽るが、声色はだいぶ穏やかである。
「私共はお嬢様の部下です。これより修繕作業の準備等を行いたいので通信は妨害させて頂いております」
「繋がらないのはそういう……」
「それから、私からで申し訳ありませんがこれからの予定を。場所を変えた方が良いですね」
「なんだか主導権握られてる……」
どうも逆らえない。物腰が丁寧で、物静かだからだろうか。不思議な感覚だ。先程リサに捕まった時に感じたような。
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