「トップチームの実力!」15
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街中を、至って普通の法定速度で走るワゴン車。信号無視も無ければ一時不停止も無し。紛うことなき安全優良運転。
その事についてリサへと質問を投げてみた。
「随分、普通に走っていくんですね」
「それはそうよ? ルールはルールだし、ワタシが捕まるのはダメ、でしょ?」
「はぁ、それは、確かに……」
「ロックミュージシャンなら罪の一つや二つ勲章だーみたいに言ってる方も居たけど、うーん……ちょーっと理解出来ないかなー」
とんでもない事をやらかすようなタイプ、でもないのだろうか。それともこちらは表向きで能力者としての顔は別なのか、などと思考してしまう。
「あの、ところでどこに行くんですか……?」
ほとんど街中から出ない護からしてみればこれが一番気掛かりな事であった。この車はどこへ向かって走っているのか。そしてこれはある意味誘拐ではないだろうか、と。
「んーと……Villa?」
「なんでしょうかそれ」
腕を組み、必死に思い出そうとするリサ。しかしどうも出てこないようだ。本人も悔しいのか黒服の女性から端末を渡されても頑なに拒否を続ける。
ならば、と護も下手に手を出そうとはしなかった。律儀である。ここで携帯電話を取り出して救援なりを呼ぶという手段だってあったはず。
「あ!」
「わ、わかりました……?」
「ゴメンねわかんない!」
「そうですか……」
「では、どうぞ」
満を持してスマートフォンの登場だ。リサ個人持ちの端末なのか、先程のロボットのような鮮やかなピンクにハートやら星形やらのステッカー。このようなド派手なアイテムが好みなのだろう。
それを鼻歌混じりに細い指でなぞりながら単語の意味を調査。
「はい!」
「近いです……別荘、ですか」
漢字が読めなかったのか、それともただ護に見せたかったのか定かではないところであるが、そこに表示されているのは【別荘】の文字。彼女のような世界的なシンガーにしてみればこのような物も持っていて当然なのだろう。
「そう! これから空港に行って、ワタシのAirplaneで飛んで行くの!」
「エア……プレーン……飛ぶ。空港」
何だか壮大な話をしている気がするのは気のせいだろうか。言葉の意味を一つずつ紐解いていく護。次第に顔が蒼くなっていくのが良く分かってしまう。
「えっ飛行機……!? ですか……海外……!?」
「あはは。そーじゃないよ? ちょっとそこまで、島? 誰もいないけどネ」
「なんだ島……誰も? 無人島ですか? すみませんちょっと理解が追い付かないんですけど」
不安だらけで脳の機能が低下してしまっている。それをひしひしと感じていた。しかし、護には対抗する術も対応する術も無い。
「GoGoー!」
故に、ただ彼女の動きに従うしかなかった。
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