「トップチームの実力!」14
「と、いうワケで――来て!!」
いつの間にか手にしていた携帯端末。
彼女の鶴の一声に呼応するように、空間内に異変が訪れる。
「会長、紅野君! 急いでそこから離れるんだ! 何かが――」
やはり真っ先に気付くのは大和。手にしたパソコンに表示されているのは【警告】の文字。明滅し、警告音も出す。
「――何かが、ここに侵入を……!」
監視していた隔離空間に異常が生じた。大和が叫ぶのが先か、二人が回避行動に出るのが先か。それらとほぼ同時。とんでもない破砕音と共に空間に一部亀裂が走る。
そこからはまるで一瞬のよう。
「な、なんだ……!? 車? 普通の車だぞ? どうやって……」
砂煙を巻き上げながらグラウンドを疾走するのは黒塗りのワゴン車だった。まるで犯罪に使われるかのようなその不穏な車。それが真っ直ぐに目指すのは。
「え、えっ……?」
護だ。一切の減速をせず一直線。途中で後部座席のドアが開かれたのが見えた、気がする。そこから腕らしき物が伸びたかと思えば。
「うわっ……!? な――」
気付けば座席に座らされているではないか。シートベルトをしっかり締められ、ドアも閉じられている。横には黒服の女性。それから、リサ。
「紅野くん!?」
あまりの衝撃に聖羅も能力の使用が間に合わない。事態が意味不明なのである。どうやってただの車が、などはどうでも良い。そんな事よりも。
「こんなcheapな送迎者でごめんネ? この車は……運ぶにはちょうど良い大きさなの」
「あの、何が起きてるんですか……? わっ!」
「揺れるから舌、噛まないでネ」
「あ、すみません……じゃなくてですね……」
爆走する車中。そんな事を言われる護。
状態を簡単に理解しようとすると、攫われた、という事だろうか。それは字面がよろしくないのではないだろうか。しかし、抵抗しても良いものなのか、何か思惑があるのだろうと考えてしまうのが護である。
「ああそれ、説明する前にちょっと待ってて? まずは、ここを抜けてから。準備は……OK?」
この問いは、自分に掛けられたものではないのだろう。時折混じる明るく流暢な単語のイントネーションではなく、低く真面目なトーンを感じた。恐らくは運転手か、自分の座席を取り囲むようにしている複数の黒服。どうも、全員女性らしい。後方までは確認出来ていないが。
「Yes」
「っとあなたたちもこの国に居る間はここの国のコトバで話すように~。この子が居るからネ」
「了解しました」
各々が彼女の指令に従う。彼女たちもリサのように多くの国の言葉を習得しているのかもしれない。護には知る由も無かったが。
「さ、走ってる間にもう一つ終わらせなきゃ……まだ繋がってるかしら?」
「はい。お嬢様の指示があるまでは繋いであります」
「わかったわ。それじゃあ……」
耳元に端末を寄せると、不敵に笑む。
「残骸の処理もワタシの方で準備してありまーす。なのであとはその人たちに任せてネ! あと、この子は一週間くらい借ります! 以上、リサでした! バイバーイっ」
彼女の声が途切れると同時、車が再び空間を破壊。凄まじい揺れと音を立てながら学校を離れていく。その様を護はただ呆然と見ているしか出来なかった。
「これから、どうなるんだろう……?」
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