「トップチームの実力!」12
「――Delete!! ――Delete!! ――Delete!! ――Delete!!」
護は葛藤していた。この状況をどうするのか、と。見るからに暴走していると思しき目の前のロボ。何度も何度も自分を叩き潰そうとしてくる。警告音にも似た機械音声を出しながら。
そんな中でもこのように冷静に思考出来ている自分が居る事にも当然驚きがあるし、更に言えばこれだけ叩きのめされているのにも関わらず一切の痛みを感じない事も。これが能力者としての自分なのか。
まるで恐怖心が消えていくような、何でも出来てしまいそうな充足感。不思議な感覚を持ちながら分析を開始。
(片腕だけだから同じ間隔なのかな……上がった頂点で一秒くらい止まって、落ちるのに三秒……?)
すっかり耳から消えてしまったリサの曲の代わりに響くのは自分を叩く鈍い音。それをこの両腕で防いでいる訳だ。その衝撃を全身に受けながら集中すると、どうやらこの攻撃には規則性があるらしい。しかも一定間隔の。単調で、面白みも無い、まさに機械的な。
(でもこれ……壊しても良いのかな? でもこのままって言うのはちょっと嫌だし……抜け出すのは案外楽に出来そうだけど。足元をすり抜けて……それからこの炎で……うん? そこまでする必要も……このままでいけないかな。ああ、嗚呼。出来る――――)
護自身は気付いていないのだろう。彼の思考も冷たくなっている事実に。“人間味”を無くしてしまったかのような、単純な思考。能力がそうさせるのか、はたまた自信から来るのか。
瞳に差し込む影。まるで護の思考に合わせて光彩を呑み込むように。
体の内から湧き上がる熱。解き放つ準備は既に完了した。
(そうだ、次に撃ち付けられた時だ。そこで――終わる)
思考は確定した。能力の使用も。この暴走状態を引き起こしていると思しきロボを破壊する為に。
そんな時だった。護の瞳が光を取り戻したのは。
「あ、会長の……」
この爆音の中、彼女の声が届いた。土煙の合間から見ると、何故かリサに抱かれている聖羅。その口から放たれた。
破壊の許可が。壊して良い、と。
「――――わかりました!」
先程よりも強い力を想像する。内側から溢れ出る力の感覚を制御し、その全てを、一番能力使用をイメージし易い腕に集約。高まる熱量を感じる。後は簡単だ。これを。
「行きます……!!」
相手の動きに合わせて。
全身全霊の能力解放を。
「De――le――」
ロボのカメラ部にはどう映っていただろうか。急激な温度上昇、腕部の熔解、各伝達系統の消失、人工知能の計算を上回る爆発的なエネルギー。もしかしたらそれら全て捉えきれなかったかもしれない。
それ程までに、鮮烈だった。只でさえ強力な護の能力だが、それをほぼ――手加減は一応したらしいが――制限無しで解き放ったのだから。
目の前に立ち上がるのは極太の炎。天高く昇っている炎は隔離空間を突き破り、本来の世界へも飛び出してしまっている。そして、それを放った護。右拳を突き上げるように直立し、肩を大きく動かしているではないか。
「あっやり過ぎた……」
まだ、余裕はあるようだ。いつも以上に盛大に燃やしているのだが、どうやら体力の消費は少ないらしくほんの少し汗が滲んでいる程度。さすがにジャージは形も無くなりそうだが。
轟々と燃え上がる炎の柱は消える気配が無い。これを見た聖羅はと言えばすっかり得意げな顔で、大和は呆気に取られつつも急いで周囲への連絡を開始。
そしてリサ。護のは力を見たい、と言っていたリサは。