「トップチームの実力!」08
あの造型は一度目にした事がある。
そうだ、つい先日。この“世界”に足を踏み入れた時だ。機械的な見た目を有する蝕。
「おいおいまだ研究段階だって言ってたのも嘘か……見た目はもう完成形だし、自立もしてる……」
真っ先に言葉を発したのは大和だ。窓枠にしがみ付き、食らいつくようにそれを見て悪態を吐く。しかしそれでも写真を撮ったり、何らかのデータを取ろうとする事は忘れない。
「急ピッチで作ってもらいました!」
「それは……今日のために?」
「YES!! 当然よ? 最高の物を見せて、最高の物を返して貰う。そうしなきゃ損するじゃない、ネ?」
聖羅の質問にはきはきと答えるリサ。楽しそうに、そして誇らしげに。
目的が一切見えて来ないが、それでもやるしかないのだろう。ここまで用意されてしまったのなら。
「……わかりました。そこまで言うのなら。壊しても良いんですよね?」
「会長……やるのか?」
「ええ。せっかく来て貰ったんだもの」
あの時は自身の能力が通らなかった。それは今思い出してみても屈辱的だ。たとえ見せかけだけ似せた偽者だとしても、超えられるのならば。
「お相手しない方が失礼でしょ? それじゃ、準備してきますね」
「え?」
「? せめてジャージの方がって思ったんですけど」
「あ、あのちょっと待って。なんだか話が――」
そうと決まれば話は早い。一応着替えてくるとしようか。何やらリサが話したがっているのが気になるが、善は急げである。
*****
校庭に聳えるはショッキングピンクの眩しい巨大な人型機械であった。都会にはこういうような立像があるらしいのだが、この街には無い。建っていればそれなりに人気のスポットになっていただろうに、と思ってしまった。
見た目だけで言えばかなり格好良い部類に入るだろう。特に小さな男の子には垂涎の品となるはずだ。
「じゃっそろそろ準備はいいかしらね?」
開始の合図、もしくは操作権を握っていると思しきリサが掲げているのはこれまた鮮やかなピンク色の携帯端末。スマートフォンだろうか。その画面に表示されているのは真っ赤なボタン。非常に分かり易い。
「本当にやるんですか……? やっぱり私が出た方が良いんじゃ……」
心配そうな声を挙げたのは護――ではなく聖羅。学校指定のジャージーに着替え終え、髪まで結っている。というのに、彼女の居る場所はリサの隣。人型ロボの前ではなかった。では、誰が対峙しているのか――。
「ああ、俺もそう思うんだけど熱いご指名じゃな……」
そして、当然ながら大和でもなく。
「だ、大丈夫、だと思います……?」
すっかり萎縮してしまっている護だ。こちらもまたジャージーに着替え、戦闘用に用意されたグローブを身に着け、困った顔で聖羅たちと人型ロボを見比べている。
「じゃあいっくよ~? Music……Start!!」
問答無用。彼女の滑らかな指先が端末を叩く――