「トップチームの実力!」07
「まあ~そんなコトはポイってして」
流暢な英語は聞き取れなかったので意味が理解出来なかった三人を他所にリサは言葉を続けようと何かを丸めるような仕草と、それを投げるような動作。たわわに実った果実が揺れるのだが、視界の優先度はそこではなく指先だ。もう一度言うが、指先である。
人差し指を天井に向け、にっこりと笑むのだ。
「まずはね? 見せて貰いたいのよね。んー実力、っていうの?」
「実力……?」
「トップと模擬戦……能力者的には面白い提案だとは思いますけど……さすがに、ねぇ?」
「ああ。会長がここまで下手に出るのも珍しいくらいだ。興味はあるけれどやり合うのは非常に怖いな」
普段であれば二つ返事で答えそうな聖羅ですら尻込みしてしまう程。どういった能力なのか定かではないが、彼女は頂点に居る能力者だ。相当な実力を持ち合わせているに違いない。勿論能力に限った話ではなくその他の総合的な戦闘能力を含めてだ。
そのような相手と対峙してどれだけ渡り合えるのかと聞かれれば――判らないと言うしかないだろう。
「ええ、でも……もしやると言うのなら――」
スイッチを切り替える。精神を落ち着かせ、身体の内側からエネルギーを放出するような感覚をイメージ。
「――全力で相手をするわ」
聖羅を中心にして小さな青い雷が迸る。先端は花火のように弾け、周囲へと撒き散らされていく。
それを見て大和はパソコンを抱えて急いで避難。これだけは死守しなければならないらしい。
しかしリサの反応はと言えば――
「えっあのぉそういう意味じゃないんだけど……」
――聖羅の雰囲気の変容振りに困惑を隠せていないようで、わたわたと忙しなく動きながら護に助けを求めるように視線を送っているではないか。いったいどういう事なのか。
「ああもうタイミングずれちゃったよー……せっかくこうするとCoolだってリハで聞いたのに……まっいっか! 続けるわ! Come on!!」
しょんぼりしていた空気はほんの一瞬。即座に気を取り直して高々と上げた指を鳴らした。まるでこれからステージでも始めるかのように。さすがは人気歌手と言ったところか。
「!?」
身体に感じる強い揺れと、鼓膜を叩く轟音。そして見えるは窓の外に巻き上がる砂塵。一瞬で理解する。原因は外にある、と。
「な、なにを……?」
「スペシャルなゲスト! 呼んだの!」
可愛らしくウインクして窓を開け放つリサ。それを待っていたかのように校庭の砂埃は綺麗に割れて去っていく。まさか演出の一つなのだろうか、などと考える隙すら作らせない唐突な登場だ。
「ふふっ……どう? Cuteでしょ?」
自分の持ち物を披露するかの如く両腕を広げて紹介するは――
「これって!? 嘘でしょ? なんでこれがあるの!?」
「た、確かに『研究所』で似たような物を作ってるとは聞いていたが……」
「ええ! 作って貰ったの、今日の為に! さあ、起きて!」
掛け声に呼応して動き出す“それ”。窓に齧りつくようにして眺める三人は言葉を失ったかのように呆然と立ち尽くす。
「あの、時の……鎧の……!」
――ショッキングピンクに染め上げられたロボットのような、何か。