「トップチームの実力!」05
「はぁ……どうも……」
渋々といった様子で鍵を開けてしまう聖羅。どうやら完全に圧倒されてしまっているようで頭の上には大量の疑問符が見て取れる。自分の行動と思考が噛み合っていない事への疑問なのか、それともこの戸の向こうの女性に対する疑問なのか。
「あ、ごめん。もう私無理かも」
珍しく弱気な発言だ。考える事を諦め頭を抱えてしまう。さすがに可哀想であったが自分にはどうする事も出来ないと護は大人しくしているのみであった。
「Hi!!」
鍵が完全に解除されると同時だ。戸は勢い良く開き、半分程力を余して返ってくる。木枠を壊さんばかりの音と、一緒に耳に入る甲高い女性の声。やはりテンションが高いようだ。
「うぅ……なんなの……」
「会長が気押されてる……」
「にしてもこいつは随分とグローバルなお客だな。知り合いじゃないのか」
「違うってば……」
どっと疲れた表情を見せる聖羅だった。
その原因は当然の事ながら彼女達の前に現われた女性である。佇まいはカタコトから想像した外国人だ。見紛うことなきブロンドのロングヘアーにグリーンの瞳。長身で細身でありながらスタイルも良く、身に纏ったタイトなブラックスーツが更にその肉体美を強調しているではないか。特に、中に着ている真っ白なシャツをはちきれんばかりに押し上げる両の胸。大人の魅力である。
「ええっと、ここがあなた達のTeamでいいのよね?」
そのような圧倒的な美女だというのに屈託無く見せる笑顔は無邪気な子供のようであり、そのギャップは凄まじいものであった。
絶句、これに尽きる。
「……大和。紅野くん。良くないわ、ああいうの。なんかダメ」
「八つ当たりはやめてくれ。何も比べようとしてない。会長が話をしてくれないと彼女も困るだろう」
「僕は何も……」
「?」
ニコニコと笑顔を絶やさないリサ・ベネット。こちら側の会話が終わるまで待ってくれているようだ。しかしいつまでも待たせていては話が進まない。
何故か妙にイライラしている聖羅が睨み付けるようにしながら彼女の前へ。見上げるような形で声を掛けた。
「そうです。ここが私たちの集まってる部屋ですけど、なにかご用ですか? わざわざ隔離まで使って……あなたがどのような能力者が存知上げないのですけれど――」
「ん……あれ、あの名前どっかで聞いた、な……ああ!! 会長ストップ! その人に喧嘩売るのは非常にまずい!」
バチバチとした静電気にも似た空気を撒き散らしつつあった聖羅を急いで制止させる大和。わざわざ走り寄って口を押さえるという暴挙にまで及んでだ。そこまでして思い出した事とは。護には想像も付かない。
「んー!」
「これはこれは申し訳ない限りで……うちのリーダーはどうも血の気が多くてですね」
「もう! なにするのよ!」
「会長……彼女はだな」
後ろに引き摺りながら騒ぐ聖羅を宥めるようにゆっくりと真実を。恐らく自分の記憶が正しければ、と。
「彼女は、“シンガー”……歌手リサ・ベネット……万年一位のトンデモチーム『Angel's opera』の能力者だ」