「トップチームの実力!」04
「何かした?」
聖羅が真っ先に疑ったのは大和である。どうやらこのパソコンによって隔離空間を発生させられるらしい。故に操作を一番に理解している大和へと声を投げるのだ。
「い、いや……俺は何もしてないはず……というかこういう不意の事故が無いようにパスワードと承認システムを採用してるんだが……うん。やはりこいつから発動はされていないな」
「じゃあ誰よ? わざわざこんな事するなんて」
「さあ……それに蝕の反応すら無いな。ますます訳がわからん」
首を傾げる二人。護も隔離空間に居る、という感覚だけはあるのだがどうも蝕だったり能力者だったりの持つ特有の気配を感じていない様子。普段であれば“嫌な予感”が少なからずあるのだが、今回はそれが一切無い。アレを狙って当てにした事は無いが、なかなかの精度だと自分でも感じている。
「うーん……とりあえず『研究所』に連絡――」
聖羅がスマホを取り出して『研究所』に問い合わせをしようとした時であった。
――コン、コンと。音がした。少しだけざわめきつつあった生徒会室に静寂が走る。それがもう一度。音のした方向。出入り口だ。
磨り硝子の向こう側。人影がある。
「……ど、どうします?」
来客だ。平常時ならば真っ先に開けるべきであるが、今は違う。この隔離空間内には基本的に一般人は入れないはずなのだ。それが何を意味するのか、分からない護ではない。
緊張の面持ちで告げる護に聖羅はと言うと。
「まあどう見ても人間っぽいし……開けてあげないのも良くないわね……」
「ああ。いきなり襲って来なければなんでも良い」
「そればっかりは私もわからないけど、能力者なら変わり者だと思うし。……なに?」
「なんでもないです」
彼女もどこか緊張しているらしく、戦闘時に放つようなピリピリとした雰囲気――これを能力者モードと勝手に呼んでいる大和――を醸し出しながら戸へと近付いていく。
その間、戸の向こうでは人影が近付いたり揺れたり。開くまで待っている、というような状態だ。誰だか分からないが、常識はありそうだ。
ならばこちらも答えるべき。そう思いながら鍵に手を掛け、一言。
「……どちら様ですか」
刺激はしないように。しかし警戒は怠らない。この一瞬を狙って攻撃して来るかもしれないのだ。
「アー……」
「うん……?」
「ココは、生徒会のぉ、ルーム?」
「……ええ、そうですけど」
どうやら女性の声だ。しかしどうも微妙に発音が覚束無い。簡単に言うと、ほんの少しだけカタコトである。聞き取れなかったりする訳ではないし、分からない訳でもない。
「ヨカッター! ねえ、開けてもらえる?」
「えっ……あの、名前だけでも……」
あの聖羅が動揺しているではないか。その姿を見ている大和は助け舟を出そうともせず陰で笑いを堪えている。
「ああ、そう言えば……そんなルールもあるのよねー。ワタシ知ってる! んん……では名乗りマース!」
陽気な声。まるで聖羅の警戒が伝わっていないかのような。
「ワタシはリサ・ベネット! ExtraCapability……ううん、こっちだと能力者、だったね!」