「トップチームの実力!」02
『研究所』所属チームだけが閲覧出来るページ。そこに今月の成績が載せられているのだ。
殺風景な白と黒のページにはただチーム名と順位だけを示した表が。たとえ全チームが一気に結果を閲覧しに来たとしてもサーバーが落ちないように必要な物だけで構成された非常に軽いページなのだ。良く言えば無駄が無い、悪く言うのなら面白みの無い、といったところ。
「ふむ、まあ一位は相変わらず、と……」
マウスのホイールを流れるように回転させる。当然のように上位には目を通さない。さすがに自分達が上位に来る事は無い、と分かっているのだ。学生という身分が一番のネックであろう。
「あの、質問なんですけど……」
「どうかした?」
「順位を付けて競わせる事にどんな意味があるのかと……お給料になるのはわかったんですけど、それ以外にメリットが思い付かなくて」
護がふと思った事だ。確かに順位で給料が変化するのは良い事なのかもしれないが、その他だ。他にどういった待遇があるのか。『研究所』絡みであるのは間違いない。
「んー……強いて言えば」
腕を組みながら考える聖羅。どうやら一つだけ思い出したようで、しなやかな指を一本立ててみせる。
「上に居れば他のチームからの干渉を受け辛くなるわね」
「干渉、ですか?」
「蝕の討伐に対する報酬は命のやり取りになるから、それなりだ。多く倒せば倒した程報酬が上がる。故に能力者はいかに速く領地を確保するか……簡単に説明してしまうと、狩場の奪い合いが減る」
「そういう事。前は良く乱入してくるのが居たんだけど……元気のとことかシロのとことか……最近じゃめっきり減ったわ」
蝕を倒す事は早い者勝ち、という事なのだろうか。先に自分が発見したとしてもトドメを刺したのが他チームであれば、他チームが報酬を得る。割り振りはどうなのかまでは知る由も無いが。
しかし、そうであっても順位を付ける事には意味を見出せない。
「……たぶん競わせてる、って訳じゃないのよ」
そんな護の意思を汲み取ったのか、先程とはトーンを低くして言葉を投げた。目を閉じ、少々呆れたかのような、そんな声。
「仮にもやっぱりここって『研究所』なの。紅野くんも感じてるかもしれないけど、あの人たちって頭がおかしいのよね……特に研究員」
「何故俺を見る。いたってまともだろう?」
「……だから恐らくは能力の研究対象として見ているんだって私は思うわ。ただ順位が上に居るって気分は悪くないじゃない? だから深く考えるのはやめたの」
「無言もやめてくれ」
その声色には諦めが感じられた。『研究所』に所属していながら、信頼している訳ではない、という事か。確かに護自身も様々な注射やら試験やらを受けさせられている。思い返してみれば、あの研究員という人間の目は狂気すら含んでいるようだった。
だがそのように悪い事ばかりを考えていても仕方が無い。
「おかしいな……見当たらない」
「どうしたの? いつもならさっと見つけるのに。上の方のキーを押せば良いんじゃないの? これ?」
大和に駆け寄り適当にキーボードを叩こうとするが大和に阻止される。どうやらパソコンはそこまで詳しい訳ではないようだ。少々意外である。
「それは更新。検索はこっちだ……と、あったな。……あったけどもなんだコレは……!?」
いつも冷静な大和の声が不自然に揺れ、眼鏡までずり落ちた。それ程までの衝撃。いったい何が――