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Promise―桜色の約束―  作者: 吹雪龍
第4話
130/160

「CODE:紅蓮」30

 ――落下。下から叩き上げる風を受けながら、流石に聖羅もスカートを押さえる。七階建て、だっただろうか。その屋上から地上へと引かれているのだ。強烈な風を全身で受け止めながら片目で相手の存在を確認する。相手も同じように落下をしているようではあるのだが、時折浮き上がったりしているではないか。


「能力で相殺しながら……卑怯ね!」


 前方、白いローブが捲れ上がって黒い私服が垣間見える。三秒程度の感覚で落下から一瞬の上昇に変化、それから再び落下を繰り返す動作。それを行う度に落下速度が遅くなっているような。そのついでと言わんばかりに姿勢制御。頭から落下するなど以ての外である。両脚を地面に垂直に。当然それでも人体への衝撃は計り知れない。普通の人間であれば。

 そう。そして自分も普通ではない。対処する方法があるのだ。落ちる最中に体を回転。天を仰ぐように。左手側には外壁。窓のサッシ枠が見える。であれば、だ。自分が地面に落ちる、などという結果にはならないのである。このように、常人には窮地であるはずに違いないのだがそれすらも容易く超えてしまうのが能力者だ。

迸る紫電。さながらロープのようにサッシに纏わり付くと今度はその全体をネットのように包み込んでしまう。撓るそれを巧みに操って建物側へと接近。速度を抑えなければこのまま直撃してしまうだろうが、そちらにまで能力を裂くのは得策ではないと判断。どうするか。答えは簡単だ。


「せぇの……ッ!」


 急接近。痛いほどに打ち付ける風さえもその勢いを殺せない。

 足を揃える。紫電のロープは伸ばしたまま。目測距離にして一メートル。突き立てた。突き破るのか。そしてそのままボロボロの外壁に、突撃――はしなかった。足の裏を当てるとほぼ同時に膝を曲げ、蹴破らないように細心の注意を払いながら、飛び上がったのだ。タイミングを間違えれば建物ごと自分さえも壊しかねない荒業である。それを二回、三回と続けていくと次第に地面が近付き、落下する速度も体感では相当遅くなっている。この程度の距離ならば能力を切って着地をしても良いだろう、と。身体能力にも自身がある聖羅。


「ぅ~……!!」


 やってはみた、のだが。やはり痛い事には変わりない。しかしそれでもしっかりと二本の足で立っている。バランスを崩したりする事も無ければ、そのまま倒れたりもしない。我ながらなかなかの着地であったと心の中で賞賛。痛かったが。


「まったく化け物染みてるよな……ほとんど能力無しで降りるとかさ。七階からだぜ?おかしいだろ」


 こちらは、と言えば。遅れる事数十秒。地面が近付いているにも関わらずホバリングするように能力を噴射しながらじわじわと着地だ。やはり、慎重だ。


「当たり前でしょ?まだやる事が残っているんだもの」


「……そうだな。残念な事に」


「だったらさっさとやられるか、んー……帰ってくれても構わないわ」


「ここで引き下がる訳無いだろ?」


「そうね。なら、最後までやらせて貰うから、覚悟しなさい」


 仕切り直しの第二ラウンド。先程よりも物の多い地上での戦い。

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