「CODE:紅蓮」13
「話、っていうのはなんですか……?」
生唾を飲み、襲ってくるかもしれないと警戒しながらも、隣で寝たままでいる聖羅に気を遣いながら護は言う。
「簡単に、直球に言うと、仲間にならないか、と言いに来た。わざわざ『機関』の装置を拝借してまでな。お陰で目を付けられたようだ」
「装置……」
恐らくは、否、それ以外はないだろうがこの空間を作り出すための装置だろう。それをどうやってか――穏便にではなさそうだったが――持って来て、使った。護と会話をするために。
「それで、どうする?」
「どうする、と言われても……」
「答えは二つ。はい、か、いいえだ。勿論イエスかノーでも構わないが」
言い方はフランクに、とても軽く雑談を交わしているような。しかしその言葉には勿論の事ながら目に見える威圧の棘がこれでもかと乗せられている。それでも護はすぐには首を縦に振ろうとはしない。怖くてもだ。
「まあ……急いでる訳ではない。それに俺だって敵対したい訳でもない」
「そう、なんですか……?」
仮面の奥、少々苦しそうに息を吐く男。どうやら本心でそう言っているらしい。先程よりかは棘が少なく感じられたのだ。
「当たり前だ。能力者が本気で戦えば誰かが犠牲になる。俺たちだって人間だ。痛みもある。……当然戦う事が大好きな人種も沢山居るがあれは例外、だと思いたいもんだがどうだかな……」
途中、言葉を詰まらせたのは思い浮かべたからだろう。自分の周りの能力者について。自分は戦う事はあまり好ましくないが、他の能力者はどうだったか、と。するとどうだろう、好戦的な連中ばかりではないか。
「……それでも」
「ん?」
「それでも、あなたたちは戦うんですか?そもそも、何と戦っているんですか……?会長や他の……『研究所』の能力者は蝕から世界を守るために戦っていると言っていました。ならあなたたちは――」
臆せず聞く。情報を聞き出す為ではなく、自分の疑問だ。当然相手も警戒はするだろうが、戦う意思が無いのなら聞いてみるのも手。
対面する男は腕を組み替えながら見えない瞳を閉じた。どう答えてやるべきか。隣の能力者は起きていないか。交渉は決裂しないか。
「――何から救おうと、『救世主』と名乗っているのでしょうか?」
「そう、だな……良いだろう。俺たちの事をほんの少しだけ教えてやろう」
懐から煙草を取り出すが、ここが電車内である事を思い出して諦めたようだ。隔離された世界ではあるが、電車は電車。公共マナーは守る。
「まずは敵。お前たちの言う『研究所』だ。理由は聞くな。聞かれても今は答えない」
矢継ぎ早に。どうやらそこだけは聞かれたくないらしい。仲間になったら話す、という事だろうか。
「……はい」
「次に何から救おうっていう話だが――」
ここで男の言葉が途切れた。それには勿論理由がある。何故ならば。