「CODE:紅蓮」02
検査とは言ってもやる事はほとんど毎回一緒。電極と色とりどりのケーブルが取り付けられたヘルメットを被せられ、体の至る箇所に同じように電極パッドを貼り付けられる。能力者が同じ検査を行うと何らかの波形が観測出来るらしいのだが、護の場合は無反応。微小な揺れが発生する事はあるのだが、恐らくそれは体を動かしたりした事による歪みで正確な波形ではないだろう。
「ふう……相変わらず、異常なしね」
研究員である女性が電極を剥がしながら言う。異常が無ければ嬉しい事のはずなのだが、『研究所』の面子としては早く護が能力者であるという確定的な証拠と研究材料が欲しいという本音があるのだ。
「血液検査も無反応だった。やっぱり何かの間違いなんじゃないのか?」
扉を開けて入って来た眼鏡で小太りの男も肩を竦めながら紙を叩く。護が能力者である事が信じられないらしい。
二人に異様な視線を向けられながらも護は制服を着込む。こればかりは自分でもどうしようもない。好きであの力が発動された訳ではないのだから。しかしこの状態でも護は自身に悪い点があるのではないか、と思ってしまう。無力さを感じ、会釈のみで無言のまま退室しようとするとノックされる無機質な扉。
「もう終わりました?」
顔を出したのは聖羅だった。普段見せないような素っ気無さである。思い起こしてみると聖羅はこの『研究所』に対してはあまり友好的ではない雰囲気を醸し出していたように思えてきた。護が見たのはほとんど武蔵に対しての態度だったかもしれないが。
「ああ終わったよ。今日も異常なしだってさ」
「そうですか。……何か不満でも?」
思い違いではないようだ。聖羅は研究員を毛嫌いしているらしい。今にでも能力を使用するのではないかと思えてしまう冷徹さと威圧感を振り撒いているではないか。
「いやそんなつもりは……」
「それでは。紅野くん帰りましょ」
「は、はい。失礼しました……」
荷物を回収し、聖羅に続いて退室。優しく扉を閉める。薄暗く、ひんやりとした廊下。まさに隠された実験施設である。地下にこのような施設があるなどと一般の人間が知るはずがなかった。知ってしまった以上、護も一般の人間では無くなってしまったのだ。
「まったくどうしてこうも研究員って人たちは……」
部屋を出て以降聖羅の機嫌は直る気配はなく、ずっとこのような状態である。根本的に研究員という人間が嫌いらしい。
「自分たちの目に適うものじゃないと認められないだなんておかしすぎるわ……!そうは思わない!?」
「えっ、はい……そう、ですね……」
次第に怒りの温度が上がっているような気がしたが護にはやはりどうする事も出来ないので、話に頷くのみだった。下手に刺激するよりはマシなのかもしれない。
「はぁ……ほんとここに来ると疲れるわ」
階段だ。漸く地上に戻る事が出来る。少しは聖羅の心労も和らいでくれると助かるのだが、と思う護であった。